【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第142話【恵まれた友人】

「わりぃ、ミオン……」

 

 レイゼはすぐに謝った。

 母親のいないミオンに対して、あまりに無神経すぎた自分を恥じた。

 

「ううん。気にしてないよ? あたしは」

 

「そうか……」

 

 優しく微笑んでくるミオンに救われながら、レイゼは雪が降り続ける曇り空を見上げる。

 

 変わらない未来。

 たとえ母ロゼが自分に対して嘘をついてくれたとしても、結果は変わらないという事実。

 こうもハッキリと言われれば、どこか清々しく納得もできた。

 

 オレは結局……母を好きにはなれなかったんだ。

 

 避けられない運命だったのなら、オレはどうすれば良かったのだろう?

 

『これから好きになればいい』

 

 先のミオンの言葉を思い出す。

 たぶん、これが正解なんだろう。

 過ぎた時間は戻らないのだから。

 

 好きになる努力……してみるか。

 

「……ありがとな。ミオン」

 

「うん! あ、でも!」っとミオンは目を輝かせてレイゼに詰め寄った。

 

「お礼ならあのゼクードってヤツをちょうだい!」

 

「は?」

 

 いきなり何を言い出すんだコイツは?

 

「あいつレイゼちゃんの弟なんだよね? ならレイゼちゃんの奴隷でもあるわけじゃん? だからちょうだい!」

 

 意味が分からん。

 仮に弟でもゼクードはこの国の人間じゃないし、奴隷じゃない。

 

「いや、弟って言ってもあいつは例外だろうし、オレだってまだそのへん呑み込めてないんだから無理言うなよ」

 

「じゃあ呑み込めたらちょうだい!」

 

 なんだ?

 ミオンにしては珍しく執着してるな?

 

「なんでそんなに欲しがるんだ? 好みなのか?」

 

「ううんぜんぜん? あいつ17歳だっけ? あたし年下興味ないから」

 

 ないのか。

 

「じゃあなんで?」

 

「強いから」

 

「え?」

 

「あいつメチャクチャ強かったじゃん? あいつに修行してもらえたら、あたし女王さまより強くなれると思う」

 

「そんなに強くなってどうすんだ?」

 

「騎士にそれ聞く? レイゼちゃんとリベカちゃんを守りたいからに決まってるじゃん。あたしお姉さんだから」

 

 ……意外だった。

 失礼だが正直、ミオンは戦闘大好きな戦闘狂なところがあったから、何も考えてないと思ってた。そのへん。

 

「ばーか。オレだって騎士だ。守られる側じゃねーよ」

 

「でもレイゼちゃんはいつか女王様になるんでしょ?」

 

「!」

 

 想像外の言葉が胸に差し込み、レイゼはミオンに目を向けた。

 

「やることいっぱいで騎士なんかやってられないと思うから、あたしが強くなって【シエルグリス】で一番強い騎士になってあげるね!」

 

「ミオン……」

 

 本当に意外だった。

 まさかミオンが、先のことを考えていたとは。

 

「リベカちゃんだって今物凄く勉強してるんだよ?」

 

「勉強!?」

 

 驚くと、ミオンは頷いて続ける。

 

「レイゼちゃんが女王様になったら、そばで支えてあげたいって言ってた。レイゼちゃんはおバカだから私がそのへんカバーするって」

 

 リベカ……お前までそんな先のことを?

 

 ずきりと胸が疼(うず)いた。

 それはたぶん、同じだと思っていた友達が、みんな思っていたより遥か先を歩いていた感覚。

 

 自分だけ子供のままな、そんな感覚が沸いてきた。

 それが胸を締め付けて痛い。

 

 よりによってミオンもリベカも、オレのために頑張ってくれていたのが余計に堪える。

 

 ……オレと言えば母さんをただ嫌って、いつまでも反抗期で、次期女王の話を母さんから持ち出されればメンドクサイと逃げ回って……

 

「ちなみに今のはリベカちゃんには内緒にしてねって言われてるけどぉ~、あたしの口が滑っちゃいましたぁ~」

 

「ばか。約束くらい守ってやれよ……リベカが可哀想だろ」

 

 言うとニヒヒと小悪魔っぽく笑うミオンが、愛しく感じた。

 小さい頃からオレとリベカの面倒を見てくれてたもんな。

 

 そしてまた、オレの面倒を見ようと努力してくれてるわけか。

 今度はリベカも。

 

 お世辞にも家族に恵まれたとは思えなかったが、友達には恵まれたと、今は心の底から思えた。

 

「……マジでありがとうなミオン。ちょっと母さんとこに行ってくる」

 

「うん。行ってらっしゃい」

 

 

 母に謝ろう。

 いつまでもこんなことでギャーギャー言ってる場合じゃない。

 ミオンとリベカも頑張ってくれてるんだ。

 オレも次期女王の覚悟を持たないとダメだ。

 

 腹を括れよ!

 オレ!

 

「あ、レイゼ」

 

「!」

 

 廊下を曲がった先で、例の男と出会った。

 自分とまったく同じの銀髪と、黒をベースにした鎧。

 三児の父親にしては若すぎるそいつはゼクード。

 オレよりやや身長が高い弟だった。

 

「……お前か」

 

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