【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第143話【混浴OK?】

「……お前か」

 

 まさかレイゼを探していたら、普通に出くわしてしまった。

 運が良いのか悪いのか、弱ったな。

 まだ掛ける言葉も考えてなかったのに。

 

「ぁ、あのさ……女王様は──」

 

「うるせぇ。わかってるよ。頭も冷えた。今から謝りに行くところだ」

 

 謝りに?

 なんだ、そんなに心配することなかったんだな。

 

「なら良かったよ」

 

 俺は安堵して、そして次の言葉も見つからず沈黙してしまった。

 対するレイゼも視線を落として床を見ている。

 互いに言葉を発さず、妙に重く息苦しい静寂が蔓延した。

 

「……なぁ」

 

 数秒の間を要して、ようやくレイゼが重い口を開いてきた。

 

「うん?」

 

「お前は今、どんな気分なんだ? いろいろ聞かされて」

 

 どんな気分、かぁ。

 難しい質問だ。

 

「ん……うん。いきなり過ぎて呑み込めてない部分はあるけど、まぁ……うちの息子たちと同じ状況になったと思えば、そんなに」

 

 つまりは異母姉弟で、カーティスたちが物心つく頃には今の俺と同じの気分になるのだろう。

 

 いや、そうでもないか?

 俺の場合は突然だ。

 カーティスたちはソレが当たり前で育つから、こんな気分にはならないか。

 

「そーいやお前にはガキがいるんだったな。たしか三人も。そいつらも腹違いなんだってな?」

 

「ああ。だから、うん……腹違いの姉弟って、こんな感じなんだなって気分かな」

 

「なるほどねぇ……」

 

「まぁ……しばらくはギコちないだろうけど、よろしく頼むよ。姉さん」

 

 手を差し出して握手を求めたが。

 

「やめろ。姉さんなんて気持ちわりぃ」

 

 っとあっさりソッポ向かれた。

 姉さんって呼ばれるの気持ち悪いのか……でも俺としては姉さんって呼びたいなぁ。

 なんか響きが良いから。

 

 このまま姉を呼び捨てにするのも悪い気がするし。

 そうだ!

 

「そう? じゃあオバちゃんにする?」

 

「なんでだよ!? そんな歳じゃねぇぞコラ!」

 

「待て待て怒るなって! べつに嫌がらせで言ってるんじゃないって。真面目な話、俺の子供たちはレイゼにとって甥っ子・姪っ子ってことになるだろ? ってことはオバちゃんだろ? レイゼ伯母ちゃん」

 

「いや……でも……この歳でオバちゃん呼びはちょっとなぁ……」

 

 レイゼの顔が苦いものになっている。

 どうやら余程イヤらしい。

 

「ガサツな癖にそのへんは気にするんだな……」

 

「あ?」

 

「ぃ、いや! なんでもない! ……でもほら? オバちゃんなんてまだ良いじゃないか。女王様なんてお婆ちゃんだぜ? あの歳で」

 

 確か39歳って言ってた。

 

「いや女王は元からババァだし良いだろ別に」

 

「悪かったな」

 

「どぉっ!?」

「うわっ!?」

 

 女王様がいきなりレイゼの背後に現れた!

 

「居たのかよ! 脅かすなババァこのっ!」

 

「お前を探してたんだレイゼ!」

 

「! な、なんでだよ!?」

 

「……もう一度、お前にちゃんと謝りたかった」

 

 言ってすぐに女王は、レイゼに深く頭を下げた。

 

「ごめんなさいレイゼ。本当に……ごめんなさい!」

 

 泣き声だが本気の声音だった。

 ポタポタと女王の涙が床を濡らす。

 それを見たレイゼは目を見開き、間もなく締まりの悪い顔になった。

 

 何度か頭を掻いたレイゼは女王から視線を剃らした。

 不意打ちをくらった胸が跳ねたのだろう。

 

 よく見れば揺れている、女王となにひとつ変わらないその瞳を見つめ、俺は成り行きを見守った。

 

「もういいよ。オレの方こそ……その、悪かったな。ごめん……」

 

 先刻よりも刺がなく、意外なほどに潔く、レイゼは女王に謝っていた。

 

 なんだろう?

 数分前のレイゼとは別人のようだ。

 なんだか急に大人になったような、不思議な器量を感じる。

 

「レイゼ……」

 

 女王が顔を上げた。

 俺と同じ感覚を覚えたのだろう。

 その顔はレイゼの成長に驚いている。

 

「それに、今はこんなことでギャーギャー言ってる場合じゃねぇからな」

 

 まるで自分に言い聞かせるようにレイゼは俺に向かって言ってきた。

 いきなり話を振られて虚を突かれたが、俺は咄嗟に頷く。

 

「そうだな。今は帰還してない偵察部隊の救助こそ優先だ」

 

 姉に同意した俺は「明日のいつ頃出発なんだ?」と繋げた。

 するとレイゼが怪訝な顔になる。

 

「協力してくれるのか?」

 

「当たり前だろう?」

 

 当然と言わんばかりに俺は返した。

 

「でもドラゴン討伐じゃねぇぞ?」

 

「知ってるよ。でも人命は優先するものだろ? 雪のドラゴンだって出てくるかもしれないし」

 

 言うと、レイゼはすぐに返す言葉を無くし押し黙った。

 代わりに女王様が俺を見て微笑む。 

 

「ありがとうゼクード。お前が居てくれるなら心強い」

 

「いえ」

 

 まっすぐ義母にそう言われ、俺はちょっと胸の奥がくすぐったくなった。

 せっかく出会えた義母と姉なんだ。

 頼れる息子&弟をアピールしておきたいな。

 

「レイゼ。万が一、雪のドラゴンが現れたら俺が相手をする。そこだけは頼むぜ」

 

「それじゃあお前に全部押し付ける形になっちまうぞ?」

 

「それが俺の仕事なんだ。出来る奴がやる。でないと下手に犠牲者が出てしまうだろ?」

 

 雪のドラゴンがどれだけ強いのか分からないが、こんな雪を降らせる化け物だ。

 遭遇したならば、すぐに俺が押さえるべき相手だろう。

 

「……なら、まぁ、アテにしてるぜ。とりあえず出発は明日の朝だ。今から行っても日が沈んで捜索どころじゃねぇ」

 

 レイゼの言葉に俺は(だろうな)と思った。

 それに今日帰還するはずの偵察部隊だ。

 遅れているだけの可能性もある。

 

 日が沈むまでに偵察部隊が戻れば良し。

 そうでなければ明日、救助へ向かう。

 だからまだ、偵察部隊の帰還の可能性はあるのだ。

 ほんの僅かな可能性だが。

 

「わかった。出来れば明日、雪のドラゴンを討伐できたらいいんだけどな」

 

 俺は肩を竦めながら言った。

 対するレイゼは腕を組む。

 

「そんなスマートに行くとは思えねぇけどな」

 

「同感だ。気が合うね。姉さんとは」

 

「だからその呼び方やめろって気持ちわりぃな」

 

「じゃあやっぱりオバちゃん?」

 

「レイゼで良い!」

 

 いや、姉を呼び捨てにするのは、さっきからやってるけど、やっぱりなんか嫌だ。

 姉さんって呼びたい。

 姉ちゃんでもいいか?

 いや、レイゼなら姉貴かな?

 

 ん~いや、やっぱり姉さんがいい。

 響きが好き。

 

「私はお婆ちゃんでいいぞ。落ち着いたら孫たちを抱きに行くつもりだからな」

 

 お婆ちゃん呼びを推奨してきたのは女王様本人だった。

 やっぱりお婆ちゃんレベルになると、むしろ嬉しいのかな?

 

「ぜひ来て下さい。子供たちも喜びます」

 

「お婆ちゃん? ババァで良いだろう?」

 

「バ~バか……悪くないな」

 

 悪くないんだ!?

 しかもババァじゃなくてバ~バになってる!

 

「都合の良い耳しやがって」

 

 言いながらレイゼが笑った。

 同じように女王様も笑った。

 そんな二人を見て安堵し、俺も釣られて笑った。

 

 結局、日が沈んでも偵察部隊は帰って来なかった。

 遭難と認められ、救助部隊が数個ほど編成された。

 俺たち【フォルス隊】もそれにゲストとして参加する。

 

 明日の朝には出発で、今日は城で泊めてもらうことになった。

 暖かい食事もご馳走になり、そのまま今日泊まる部屋へと案内された。

 

「今日はこちらでお休みください」

 

 大きな扉を開いたのはリベカだった。

 俺たちの案内人である。

 

 大きな扉を潜ると、そこには広大と表して過言ではない寝室があった。

 三人くらい平気で寝れそうなほどデカいベッドが四つも並び、純白で質の良さそうな布団も敷かれている。

 

「広いな! いいの!?」

 

 俺が聞くとリベカは頷く。

 ──が、やはり男の俺がまだ怖いのか、妙に一定の距離をとってくる。

 ちょっと傷つくなこれ。

 

「はい。女王様からのご厚意です。おくつろぎ下さい」

 

「何から何までありがとうございます」

 

 フランベールが言って、リベカは首を振る。

 

「いえいえ。それと、女王様が皆様に大浴場の使用を許可しています。そちらも御使いになって、明日に向けて疲れを癒してほしいそうです」

 

「大浴場がありますの!」

 

 真っ先に飛び付いたのはローエだった。

 ローエはお風呂好きだもんな。

 

「はい。本来は女王様やレイゼ様のみが使用を許される特別な浴室でもあります」

 

 王族御用達の大浴場か。

 そんな場所を貸してくれるなんて、ありがたい!

 

 あ、そうだ!

 これだけは聞いておかねば!

 

「すげぇ! そこって男女混浴はできる?」

 

「へ!?」

 

 ボッ! とリベカの顔が真っ赤になった。

 純だな。可愛い。

 

「ほら、俺たちみんな夫婦だからさ。混浴はいいのかなぁ~って」

 

「あ、カティアさんと入浴したいって事ですね?」

 

 ん?

 なんでカティアだけ?

 

 あ、もしかしてリベカはまだレイゼから全部聞いてないのかな?

 レイゼはもう全部知ってるはずだが、まぁいいや。

 

「そうそう。入浴したい」

 

「では女王様に確認を取って参りますので、少々御待ちください」

 

「は~い」

 

 俺は意気揚々とリベカを見送って、三人の妻たちに視線をやった。

 

「許可が出たらみんなで入ろうぜ!」

 

「うん! みんなでお風呂だなんて素敵!」

 

 フランベールが本当に嬉しそうに言った。

 確かに【ヨコアナ】には大浴場なんて無かったもんな。

 一人しか入れない壺みたいな浴槽しかなかったから、実は夫婦だけど俺は妻たちと一緒にお風呂に入ったことはない。

 

 あ、いや、あるわ。

 フランベールとは昔一回だけあったわ。懐かしい。

 

「カティア。せっかくですから背中を流してあげますわ」

 

「いらん。背中を破壊されそうだ」

 

「しませんわよ!」

 

 そんなローエとカティアのやりとりに吹いてると、例のリベカが戻ってきた。

「御待たせしました。混浴は大丈夫です」

 

 キタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 

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