【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第144話【誘惑】

 リベカに案内され、俺たちは脱衣室に来ていた。

 白い大理石のタイルが床一面に張り巡らされており、俺は一瞬ここが大浴場かと疑った。

 しかし壁際の台に並ぶ籠(かご)を見て、ここはやはり脱衣所なのだと分かった。

 

 そこは唖然とするほど広く、四人が並んでもまったく狭さを感じない。

 

「なんかすでに豪勢だな」

 

「ですわね」

 

 俺とローエがあっけにとられていると、カティアやフランベールが装備を脱ぎ出していたのでそれに続いた。

 

 テント生活三日を経て、ろくな水浴びもできてなかったからこれは本当に嬉しい。

 

 俺は近くの籠(かご)に装備やインナーを脱いで置いていくと、チラリと妻たちの脱衣を見てみた。

  

 みんな俺の前だと言うのに恥ずかし気もなく装備を外し、下のインナーも脱いでいく。

 特に裸体を隠す様子はなかった。

 

 俺も慣れてしまっているのか、平然としている。

 

 うん。

 まぁ、夫婦だしね。

 今さら全裸で恥ずかしがり合う関係でもないしね。

 

 と、自分に言い聞かせる。

 

 ……でも、なんかちょっと寂しい。

 可愛い妻たちの「こっち見ないで」とか、そういうリアクションを期待してたんだけど、残念だ。

 

 いやでも、やはりスタイル抜群の妻たちは美しい。

 結んだ髪も、タオル姿も様になっている。

 意識して見ると、やはり持ち前の色気がヤバい。

 

 ローエもカティアもフランベールもボン・キュ・ボンだから、胸の谷間や腰の括れ、脚線美が鼻血を誘う。

 

 ああ……このままココで三人を襲ってメチャクチャにしたい。

 

 そんな男の欲望を抑えつつ、俺はタオルを腰に巻き、いざ大浴場へ続く木製の扉を開いた。

 開けた先から湯気が入り込んできて、脱衣室に逆流し蔓延していく。

 

 前が見えにくいが、その浴場は驚くほど広かった。

 先程の脱衣室よりもさらに広い。

 奥行きがあり、天井まで数階分ある高さだ。

 大理石の床には四人分の桶もある。

 

 肝心の湯船だが、大理石の床を長方形にクリ抜いた形で、浴場の中心に存在した。

 

 立ち込める湯煙の発生源はまさにそこだった。

 

 例の……大浴場?

 

 うん?

 

 大?

 

 俺の眼がおかしいのかな?

 

 いくら片眼しか見えなくても、大浴場が小さく見えるなんてことあるのかな?

 

 俺が見ている長方形の湯船は……どう見ても大人二人分の大きさしかなかった。

 

 何度見ても。

 

 あれあれ?

 

 おかしいぞ?

 

「──なぁ……俺……大浴場って聞いたんだけど?」

 

 自分の眼を疑って、俺はみんなに聞いてみた。

 すると隣に来たローエが。

 

「ええ……わたくしもそう聞きましたわ」

 

 ですよね~。

 良かった。

 俺の眼がおかしくなったわけじゃないらしい。

 

「なにコレ?」っと俺は湯船に指差しながらローエを見た。真顔で。

 

「お風呂ですわね」っとローエは答えた。真顔で。

 

「小さくない?」

 

「小さいですわね」

 

 これ以上にないほど真顔のやりとりをして、俺とローエは小さな大浴場に視線を戻した。

 

 これはつまり、あれだ。

 義母さんに騙され──いや、やめておこう。

【シエルグリス】ではこのサイズで『大浴場』扱いになる。それだけの話なのかもしれない。

 

 となれば、これは早い者勝ち! 

 

「あ、ローエ! 胸がポロリしてるぞ!」

 

「え!?」

 

 かかった!

 ローエが余所見をした隙を突き、俺は我先にと湯船へダッシュした。

 

「俺が一番だ!」

 

「ちょっと! 抜け駆けは卑怯ですわ!」

 

 なんとでも言うがいいローエ。

 こんな時は早い者勝ちだと相場が決まっているのだよ。

 少なくとも男の間ではな!

 

 つるん!

 

「あ!?」

 

 ぁ、足が!

 滑っ──

 

 ごん!

 

「うごっ!?」

 

 メチャクチャ堅いタイルの床に頭を激突させてしまった。

 頭が割れそうなほど痛い!

 バカになっちゃう!

 

「お~ほっほっほっ! ざまぁないですわねゼクード! 人を出し抜こうとするからそうなるんですわ!」

 

 高笑いしながらローエが俺を抜いて通り過ぎていく。

 

 こ、このやろう!

 ローエ!

 俺いま頭打ったんだから少しは心配してくれてもいいじゃんか!

 この薄情者!

 

 っていうか後ろのカティアとフランも心配してくんないの!?

 え、なに? もしかして俺だから大丈夫だろう的な感じ!?

 痛いよすっごく!? 誰か心配して!

 

「ではわたくしが優雅に一番乗りでぁああああああああああああああついいいいいいいいいいいいいいいいい!」

 

 湯に片足突っ込んだローエが絶叫して飛び跳ねた!

 

「ローエ!? 大丈夫か!」

「大丈夫ローエさん!?」

 

 え、俺は?

 

「あっっついですわ! 熱湯ですわよコレ!」

 

 熱湯か。

 だからこんなに湯煙が凄いのか。

 なんにせよ俺はニヤニヤして言ってやった。

 

「人の不幸を笑うからだ! ざまぁみろ!」

 

 ボキィッ!

 

「きゃあああああああああああああああああああああああ! やめて! 剣握れなくなるからやめてああああああああああああああああああああ!」

 

 手が破壊される!

 いつかのドアノブのようにぃいいいいい!

 

「そんなに熱いのか。じゃあゼクード・ローエ。先に入って良いぞ。私は身体を洗う」

 

「わたしも~」

 

「お待ちなさいカティア! あなた先に入りなさい! 火属性でしょう!」

 

「関係あるか。私は熱い風呂が嫌いなんだ」

 

 そんな妻たちのやりとりを聞きながら、俺は湯に指を突っ込んでみた。

 

「あっつ! マジで熱い! いやこれ熱い風呂ってレベルじゃないよ。熱湯風呂だよ」

 

 寒いからかな?

 無駄に熱くしてある。

 

「きっと入れたてのお湯なのね。もう少し冷まさないと」

 

 フランベールが残念そうに言うと、ローエが台に置いてあった石鹸を手にして泡立て始める。

 

「仕方ありませんわね……ならカティア。約束どおり背中を流してあげますわ」

 

「約束してないだろ!?」

 

「遠慮なさらないで? ほら、あっち向いて」

 

 カティアをバスチェアに座らせ、ローエは泡まみれにした手で彼女の背中を優しく撫でていく。

 

「ま、待てローエ! 加減してくれよ!? や、優しくしてくれ頼む!」

 

「してるでしょうが! まったく……あなたはわたくしをいったいなんだと……」

 

 そんなカティアとローエを見ていて何故か閃いた俺。

 

「なぁなぁ。この熱湯、フランの氷で冷やせない?」

 

「あ、なるほど」

 

 俺の案をさっそく実行したフランベールは【アイスアロー】召喚しまくって、お湯にポイ捨てしていく。

 

「どうかな? けっこう入れたけど」

 

 フランベールに言われて俺はまた指を突っ込んでみる。

 

「お、良い感じになってきた。今なら入れるぞ」

 

「やった。なら一緒に入ろうゼクードくん」

 

「もちろん」

 

 俺はフランベールの肩を抱いて『小さい大浴場』という矛盾に浸かった。

 

(しまった! フランに!)

(抜け駆けされましたわ!)

 

 とある二人の視線は無視して俺はフランベールの柔らかさを堪能……じゃなかった。お風呂を堪能した。

 

「あぁ~……イイ湯だぁ……」

 

 嫁と入る風呂は最高だね。

 お互いタオルを脱いだので、水面下に見えるフランベールの素肌が色っぽい。

 

「うん。でもまだちょっと熱いね。のぼせそう……」

 

「そう? 俺はこれくらいがちょうど良いけど……」

 

「わたしも熱いの苦手で……」

 

 そう言えば昔、いっしょに入ったお風呂はぬるま湯だったな。

 そうか。フランも熱いのダメなのか。

 でもフランは意外じゃないな。

 

「そっかぁ……氷属性だもんなぁ」

 

「ん? いや……うん……それは関係ないよ」

 

 ないかぁ。

 

 

 ゼクードとフランベールが上がり、身体を洗い出した。

 それと交代するようにローエとカティアが小さな湯船に身体を浸からせる。

 

「はぁ、なんでよりによってあなたと……」

「こっちのセリフだ。バカ者」

 

 女同士で身体を密着させながら入っていた。

 身体の芯まで温まるほどイイ湯加減なのだが、相棒が悪い。

 ゼクードが良かったな、とローエは思った。

 

「私だってゼクードと入りたかったんだ」

 

 人の思考を読んだようにカティアが言ってきた。

 やれやれ、変なところで気が合う。

 

「あなたはテントでイチャイチャしてたでしょう? 贅沢ですわ」

 

「ふ……なんだ? 妬いてるのか?」

 

 苦笑しながらカティアが聞いてきた。

 ローエはプイッとそっぽ向いて答える。

 

「べつに? ハーレムでヤキモチ妬くなんてアホらしいですわ」

 

「可愛くない奴……」

 

「悪かったですわね」

 

 言いながら……こんな時を楽しんでいる自分の心の弾みを感じていた。

 カティアとこうして一緒にお風呂に入るのは、これが初めてだから。

 

 そんな現在が、妙に嬉しく、愛しく感じた。

 心のどこかで悪くないと感じている自分がいることに、ローエは自分で驚いた。

 

「……はぁ~、それにしても良い湯加減ですわ。グロリアたちも入れてあげたいですわね」

 

 何かカティアと話したいと思い、他愛ない話を持ち出す。

 

「そうだな。レィナなリーネも連れてきてやりたいな。ずっと迷惑を掛けている」

 

「そうですわね。あの子達には頭が上がりませんわ」

 

「いつか礼はしないとな。あのグリータにも」

 

「そうですわね」

 

 言って、あぁ……話し終わっちゃったとガックリしている自分がいた。

 

「……ふぅ、熱い。私はもう上がるぞ。のぼせそうだ。お前はどうする?」

 

 しかもカティアはもう上がるらしい。

 もう少しお喋りしたかったのだが、残念である。

 

「わたくしはまだ堪能しますわ。久しぶりのお風呂ですもの」

 

「わかった」

 

 相変わらずクールに去って行った。

 カティアの綺麗な背中を見送ってから、今度はゼクードが腰にタオルも巻かずにやってきた。

 見慣れたナニを恥ずかしげもなく晒している。

 

 思わずギョッとなったが……うん、まぁ、見慣れたものである。

 

「あれ? カティアも上がっちゃったの?」

 

「ええ。やっぱり熱かったみたいですわ」

 

 答えてからハッと気づいた。

 フランベールもいない。

 彼女も上がったらしい。

 

 てことはこれ、ゼクードと二人っきりですわ!

 やった!

 

「そっか。じゃあ二人っきりだなローエ」

 

 彼も同じ事を思ったようだ。

 どこかスケベな笑いを浮かべるゼクードに、ローエの胸は高鳴る。

 

「んふふ、そうですわね」

 

 ローエは湯から立ち上がり、フチに座った。

 スゥ~ッと妖艶に眼を細め、結んでいた髪をほどき、濡れた金髪を片手で靡かせる。

 

「どうします? あ・な・た」

  

 湯煙の中、ローエはゼクードの劣情を煽り立てた。

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