【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
柔らかい。
温かい。
いい匂い。
そんな何かに包まれている、妙に気持ちのいい朝だった。
「……おい起きろバカ者ども。いつまで寝ているつもりだ」
カティアの声だ。口調だけでも分かる。
ぼんやりと目を開くと、青い壁とそこに佇むカティアの姿が見えた。彼女はちょうどリボンで髪を結っているところだった。
もう朝か、と俺は覚醒間もない重い身体をベッドから起こそうとした。
しかしズシッと腕に何かが乗っていてやたら重かった。
何かと見ればそれはフランベールだった。
美女は安心し切った寝顔で、今もスヤスヤと寝息を立てている。気持ち良さそうだ。
なんだフランか。
そういえばあの後寝てしまったんだっけ。
と、寝ぼけた頭でぼんやりと状況を理解した。
「……おはようカティア」
とりあえず俺は起きている妻に朝の挨拶をした。
うーんと背伸びをすると、妙に身体の調子が良いことに気づいた。
なんか身体がイキイキしてるな。
フランベールのおかげかな?
「おはよう。早くそのフランも起こせ。時間だぞ」
「あ、うん。わかった。おーいフラン、起きろ~、朝だぞ~」
言いながら俺は夢の世界にいるフランを揺さぶった。
すると。
「やん……激しいよゼクードくん……そんなに」
眠気が一気に覚醒した。
なんて夢を見てるんだ。羨ましい。
夢の中でお楽しみの『俺』よ。悪いが中断させてもらうぞ。
「起きろってフラン。早く起きないとコワーイお姉さんが君臨するぞ~」
「ふへへ……カティアさんもローエさんもこっちにおいでよぉ~……」
ダ、ダメだコイツ。
早くなんとかしないと。
「どうしようカティア。ぜんぜん起きないんだけど」
「毛布をどかせ。寒くなれば勝手に起きる」
「なるほど」
言われるがまま俺はフランベールの毛布を剥がした。
フランベールの寝間着姿が露になり、露出した胸の谷間をチラリとだけぬかりなく見た俺はベッドを降りた。
フランベールはそのまま放置して、俺は装備を整えていく。
よく見るとローエもまだベッドで寝ている。
しかもちゃっかり毛布を剥ぎ取られている。
カティアがやったみたいだ。
「まったく他所のベッドで……とことん好きだなお前も」
「ははは……今度はカティアも一緒に寝ようぜ」
「考えておく」
やったぜ!
言ってみるもんだ。
※
城の朝は、俺の想像よりも遥かに静かだった。
もっとジタバタしてるのかと思ったが、出撃の準備は昨日の内にすべて済ませてあったのだろう。
肝心の天候はやはり雪。
未だ降り続けているが、救助に向かう分にはまったく問題はない。
「準備は出来てるな?」
【シエルグリス】の関所前にて、装備を整えたレイゼが言った。
その視線は俺たち【フォルス隊】と、リベカ・ミオンに向けられている。
俺たち一同は揃って頷き、先頭に立つレイゼも頷いた。
「オレたちは先発隊だ。後続は昼に出発する」
「なんでわざわざ別けたんだ?」
俺の問いにレイゼは腕を組む。
「万が一のためさ。雪のドラゴンが現れたら雪山こと【ブルーマウンテン】は戦場になる」
レイゼが言って、隣のリベカが続けた。
「【ブルーマウンテン】での戦闘はリスキーなんです。ドラゴンの咆哮で雪崩が起きる可能性があります。下手に強力な魔法も撃てません」
「飲まれて一気に全滅なんて笑えねぇだろ? 後続は万が一のための保険だ」
「なるほどね。だから先発隊はこんな少数精鋭なわけか」
俺たちしか居ないのはそういうことね。
「わりぃがオレたちは頭数に入れないでくれ。お前らの方がよっぽど強い。もともとお前が雪のドラゴンは任せろって言うからこうしたんだんからな?」
「わかってる。ドラゴンが出てきたら姉さんにカッコいいところを見せてやるよ。任せとけ」
「だから姉さんって呼ぶなって何度言やぁ…………あぁもういい。行くぞ」
根負けしたレイゼはそれだけ告げて、踵を返して歩き出した。
ローエやミオンたちが彼女に続く。
俺はわざと出遅れて、見送りに来てくれた女王──義母の元へ寄った。
「それじゃあ行ってくるよ義母《かあ》さん」
「!」
義母さんと呼ばれた女王は一瞬目を丸くしたが、すぐに微笑んで返してくれた。
「ああ。どうか気をつけて。レイゼたちと仲間をよろしく頼む」
俺は頷き【シエルグリス】を後にした。