【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

154 / 448
第151話【フランベールVSラミナ】

 洞窟から飛び出して来たのは二匹のドラゴンだった。

 片方はまっすぐゼクードに向かって行く。

 まるで最初から狙いを定めていたかのように。

 

 対してフランベールに向かってきたのは二足歩行の、両手が翼になったドラゴンだった。

 頭から足先まで約五メートルほどで、空を舞っている。

 かなり小型なドラゴンだが、それでもフランベールの二倍以上もある巨体だ。

 

 黒い全身から紫がかった氷を纏っており、明らかに今まで見てきた個体とは違う。

 

 そいつは両翼から冷気を放出し、フランベールに向かって羽ばたいた。

 

「冷気!?」

 

 それが攻撃だと察したフランベールは横へ走り、大弓をしまって【アイスソード】を召喚する。 

 羽ばたかれた冷気は無数の氷柱となり、ツブテのようにフランベールに飛来した。

 

「くっ! このっ!」

 

 氷の弾雨を氷の双剣で弾き、翼のドラゴンに肉薄していく。

 中距離まで来ると、そのドラゴンは両翼を冷気を固めて巨大な氷のブレードへと変化させた。

 

 身を翻した翼のドラゴンはブレードを薙ぎ払う。

 近くにあった木が容易く一閃され、その切れ味を示した。

 

 だが、それを見切っていたフランベールはジャンプして身体を回転させ、ブレードの鎬(しのぎ)を流れるように転がった。

 それは回避も兼ねたブレードへの攻撃。

 

 回転に乗せた斬撃は、ほんの一瞬のすれ違いで数十を刻まれた。

 果たして、フランベールの【双《ダブル》・竜《ドラゴン》斬り】が炸裂し、敵のブレードに亀裂が走って次の瞬間には破砕した。

 

 それに驚いたらしい翼のドラゴンが間合いを空けた。

 その隙を逃さず双剣を消し、大弓を展開して【アイスアロー】を撃ち放つ。

 

「そこっ!」

 

 フランベールが敵の頭部に狙いを定めるまで、一秒の間もなかった。

 それでも【アイスアロー】はドラゴンの頭部に命中した。わずかな誤差もなく。

 

 神業とも言える早撃ちは、竜鱗こそ貫通しなかったが、打撃にも似た衝撃を敵に与えて墜落させた。

【気】を纏った射撃だったのに竜鱗を抜けないとは、恐ろしい硬度である。

 

 すると墜落したドラゴンが一瞬で受け身を取り、青いブレスを吐き出した。

 

「!」

 

 霧状の息吹がフランベールにまっすぐ飛来する。

 それに対し横ステップで避け、またも早撃ちで片眼を狙撃した。

【アイスアロー】の切っ先がドラゴンの瞳を刺し、敵は激痛に悶え咆哮する。

 

 残った片眼でフランベールを捉え、再びブレスを発射!

 

 フランベールは別の木に隠れてそれを遮蔽物とした。

 木にブレスが直撃し、あっという間に凍っていく。

 

 木の裏に隠れたフランベールを探そうと、翼のドラゴンは前に出てきた。

 フランベールはその瞬間を狙って、()()()()()飛び出した!

 

 ドラゴンが気づいた時にはもう遅く、そこはフランベールの間合い。

【アイスジャベリン】を召喚し、全身に力を込める!

 

「【竜突き】!」

 

 ゼクードに教わった【対竜剣技】の【突きの型】。

 落下の勢いと【気】で切れ味が増した【アイスジャベリン】の刺突は翼のドラゴンの脳天をぶち抜いた。

 

 ドラゴンが大口開けて断末魔を叫び、間もなく絶命した。

 

 フランベールは敵に突き刺さった【アイスジャベリン】から手を離し、一息吐く。

 そして敵の亡骸を見ると、ドラゴンの血が雪原に広がっていくのが見えた。

 

 倒したドラゴンを見て、フランベールは胸に手を当てる。

 

 また一人で新種のドラゴンをやれた。

 ゼクードくんに頼らずに。

 やっぱりわたし、凄く成長できてる!

 

 その事実が素直に嬉しい。

 ゼクードに頼りっぱなしだった過去の自分より、かなりマシになっている。

 

「……ゼクードくんは」

 

 勝利の余韻に浸っている場合ではなかった。

 この個体はかなり強かった。

 あのゼクードの元へ走って行ったドラゴンはどうなのだろう?

 ゼクードに限って遅れを取るとは思えないが、少し心配だ。

 

「フラン! 無事か!」

 

 当のゼクードが雪の中を駆けてきた。

 

「あ、ゼクードくん!」

 

 さすが外傷の一つもない。

 

「敵は?」

 

「バラバラにしてきた!」

 

 親指を立てて、当たり前のようにゼクードは笑った。

 

 あの硬度の敵をバラバラとは恐れ入った。

 

 さすがである。彼を心配するなどおこがましいのかもしれない。

 

「けっこう素早い奴だったけど、フランも勝てたんだな。良かった良かった」

 

 どこか満足そうにゼクードが言うので、フランベールは苦笑した。

 

「ゼクードくんほど楽勝じゃなかったけどね」

 

「良いんだよ勝てれば。とりあえず別のドラゴンが出てくる前にここを離れよう。山頂を目指して反対側に下山する」

 

「了解よ」

 

 言って、先行するゼクードにフランベールは足並みを合わせて追う。

 そしてお腹をそっと撫でた。

 

「あなたのお父さん、やっぱり強いや」

 

「え? なんだって?」

 

「ううん。なんでもないよ」

 

 言いながら、そして願う。

 強いお父さんの子だから、どうか無事でありますように……

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。