【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第153話【雪崩】

『……ラミナ? マルテロ? どこに行ったの?』

 

『! なに、これ……手?』

 

『こ……れ……うそ……マルテロ……の?』

 

『ラ、ラミナ! ラミナは!?』

 

『あ! あああぁあ……ラミナ……そんな……そんな…………』

 

『いや……いやあぁ……ラミナ……なんで……なんでこんな……私たちが……なにをしたって言うの……』

 

『もういやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!』

 

 

 謎の大咆哮が聴こえたのは、レイゼたちを見送った翌日の朝だった。

 

「なんだ今の!?」

 

 テント内で装備を整えていた俺は慌てて飛び出した。

 するとカティア・ローエ・フランベールと、他の女騎士たちが雪山の方角を見ていた。

 

「カティア! 今のは?」

 

 俺はすぐ近くに居たカティアに聞いた。

 

「分からん。だがドラゴンの咆哮なのは間違いない」

 

「凄い咆哮でしたわ。地面が揺れましたわよ」

 

 ローエが素直な感想を言う。

 確かに凄かった。テントの中にいた俺でも気づいたほどだ。

 ローエの言う大地の震えも感じた。

 

 咆哮の主は雪のドラゴンだろうか?

 昨日、俺とフランベールが倒した仲間の遺体を見つけたのかもしれない。

 

 処理しておくべきだったか?

 だがドラゴンは同族の遺体があると気が立って、その周辺を警戒して動かなくなる習性がある。

 

 釘つけにするなら都合がいい。

 雪のドラゴンもドラゴンなら、おそらく巣穴から遠ざかることはないと思うのだが。

 

「──ん? 何か聞こえないか?」

 

 いきなりカティアがそんなことを囁いた。

 彼女は耳を雪山に向けている。

 俺もローエもフランベールも、カティアに習って耳を澄ました。

 

 ……何かの小さな音が聞こえる。

 言葉にするならゴゴゴゴだろうか?

 まさに轟音だ。

 

 さらにまた大地が揺れだした。

 その音と揺れは、次第に大きくなってくる。

 待てよこれ……まさか!

 

「雪崩だ!」

 

【シエルグリス】の女騎士が叫んだ。

 雪山を見れば、真っ白な雪が粉煙を舞い上げて流れてくる!

 山の斜面に溜まっていた雪が先程の咆哮で崩れた!

 

 それはまさかに激流!

 大きく凄まじい白の波だ!

 

「みんな走れ! 逃げろおおおおおおおお!」

 

 俺は腹の底から声を張り上げ、全力で走り出した。

 カティアたちも続き、女騎士たちも慌てて駆け出した。

 

 雪崩は平地でも止まらず、俺たちに容赦なく

迫りくる。

 自然の蹂躙だ。

 まるで化け物に襲われているような感覚が走る。

 

 もはや聞こえるのは雪崩の轟音だけで、寒いとか暑いとか、走りにくいとか、そんな些細な情報は思考から遮断されていた。

 ただひたすらに走れと、脳が全身に訴えている。

 

 ドラゴンより雪の方がよっぽど人を殺しに来ている。

 止まれば死ぬ。

 人を簡単に飲み込めるほど巨大な雪崩が、すぐ後ろまで来ている。

 振り切れない!

 

「ゼクード!【真・竜斬り】で雪崩を斬るんですわ!」

 

「できるか!」

 

「ゼクードくん!【スカートめくり】は!?」

 

「スカートめくり!? こんな時に何言ってんだよ!」

 

 フランがなんか言ってる!?

【スカートめくり】って何!?

 

「ちがうゼクード! フランが言ってるのは【竜めくり】の事だ! あれで雪崩を吹き飛ばせないか!」

 

 カティアの補足で俺は理解した。

 しかし「無理だ!」と首を振った。

 雪崩の質量が大きすぎる。

 

 でもこのままじゃ、みんな雪崩に追いつかれる。

 こうなったら一か八か、ローエの風魔法に頼ってみるか!

 

「ローエ!【ハリケーン】で俺たちを空へ打ち上げてくれ!」

 

 俺は叫んだ。

【竜めくり】も竜巻を発生させる技だが、あれは斬撃が含まれる。

 この人数を打ち上げられるだけの竜巻を発生させようと思えば、それはどうしても斬撃が含まれた竜巻になってしまう。

 調整が難しすぎるのだ。

 

 だからみんなを無傷で打ち上げるならローエの魔法しかない。

 ローエの負担が半端ではないが、もうこれしかない!

 

「【ハリケーン】ですの!?」

 

「そうだ! 急いでくれ!」

 

 最初は驚いていたローエだが、俺の考えを察したらしく、すぐに片手を緑の光に包ませた。

 そして立ち止まる。

 

「みなさん集まって! いきますわよ! 【ハリケーン】!」

 

 ローエは緑の光を地面に叩きつけた。

 しかしその光は、地面に当たる直前で消えた。

 

「──え?」

 

 ローエが驚愕し、彼女に向かって走って来た俺達も目を見開いた。

 何が起こったか、まるで分からなかった。

 

 魔法が、消えた?

 こんなことが……いや、こんなこと、以前にもあった!

 

 俺は今さら致命的な事を思い出した。

 カティアも、フランベールも、ローエも。

 今、お腹の中に!

 

「何してるローエ! はやく!」

 

 カティアの叫びも虚しく、ローエは顔を青ざめさせた。

 

「ダメ! 魔法が使えませんわ!」

 

 この最悪なタイミングで、ローエの妊娠が確定した!

 

「まさか妊娠のああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 言い欠けたフランベールの言葉は雪崩に飲まれて悲鳴になった。カティアやローエや女騎士たちの悲鳴も混じる。

 

 俺も雪崩に成す術もなく飲まれ、激しい衝撃に全身を打たれ、意識が奪われた。

 

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