【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第156話【シエルグリス防衛戦】

「ロープの付いた拘束用のバリスタが近くの武器庫にあるはずだよ。それを取ってきて撃ち込んで!」

 

 一方的に言い放ったミオンはレイゼの返事を待たずに物陰から飛び出した。

 

「おい待てミオン! 無茶だ!」

 

 しかしミオンは止まらない。

 雪のドラゴンの真下に飛び込み、鉄球を撃ち飛ばした。

 それは雪のドラゴンの足裏を直撃。

 

 まるで効いてないが雪のドラゴンはそれでミオンに狙いをつけた。

 即座にブレスを放ってくるが、ミオンは走ってそれを回避。

 そのまま民家の屋根に飛び乗り、さらに高い屋根へ。

 

「釣れた! このまま引きずり回してやる!」

 

 言ってミオンはさらに疾走する。

 頭上を敵に押さえられているこの状況で屋根上を走るのは無謀なのだが、ミオンの役割は囮だ。

 相手の目を引き付けるのが役目なら間違っていない。

 だが……

 

 ドラゴンもミオンを追ってブレスを乱射するが、間一髪で仕留め損ねている。

 ギリギリだ。速度を緩めたら直撃させられる。

 あんな全力の回避を続けていたらミオンも長くは持たない。

 

「くそ! 時間がねぇ! 行くぞリベカ!」

 

「了解!」

 

「生半可じゃダメだ! オレはバリスタを! お前は砲撃部隊を急いで編成しろ!」

 

「はい!」

 

 レイゼはリベカと共に民家の影から飛び出した。

 雪のドラゴンはミオンに釘付けになっている。

 狙われる心配はない。

 

 氷漬けになった仲間たちを脇目に、レイゼとリベカは武器庫に向かった。

 

 

 こちらを狙うドラゴンのブレス精度は凄まじかった。

 ミオンが足を止めれば次の瞬間には仕留められると分かるくらい、正確なブレスだ。

 

 休む間もない連続攻撃に息が上がっていく。

 屋根を飛び移っていくたび、さっきまで乗っていた屋根がブレスで氷漬けになっていくのが見えた。

 

 まだやられる訳にはいかない。

 レイゼが拘束用のバリスタを撃つまでは!

 

 そう意気込んで次の屋根へと跳んだ瞬間。

 雪のドラゴンがその民家へ突撃し、屋根ごと足場が無くなった。

 

 うそっ!?

 

 先読みされた。

 ドラゴンなんかに。

 それだけ単調な動きだったのかと反省し、ミオンは咄嗟に鉄球を投げた。

 

 着地する足場が無くなったから、落下する前にドラゴンの首に鉄球の鎖を巻き付けた。

 すると、そのまま雪のドラゴンが浮上し、ミオンはぶら下がる形になった。

 

 落ちたら即死する高度になり、ミオンは全身の血が凍るような寒気を覚えた。

 命綱の鎖を握り、振り落とされないようにする。

 

 ──その時、ミオンの視界の隅にあるものが写った。

 ここは【下級層】。

 周りの民家には奴隷の男たちが収用されている。

 

 その民家が何件か破壊され、壁から抜け出して逃げている男どもがいた。

 そいつらは城壁の門へと走っている。

 中には一般の女性が捕まって連れ去られようとしている光景も見えた。それも一人や二人ではない。

 

 この混乱に乗じて、女性を連れて【シエルグリス】から逃げる気だ!

 こんな時にあの奴隷ども!

 

「まずい! 誰か!」

 

 叫んだミオンだが、地面にいる女騎士たちには聞こえるはずもなかった。

 

 誰か気づいて!

 奴隷が逃げ出してる!

 

 心の中でも叫ぶ。

 だが味方の女騎士たちはそもそもミオンとドラゴンの激しい追従戦には付いていけてない。

 近くに誰もいないのだ。

 

 さらに次の瞬間、ドラゴンが急降下を始めた。

 瞬きの間にミオンは民家の壁に叩きつけられる。

 

「ごっはっ!?」

 

 民家が破砕し、木製の壁に激突したミオンの全身が軋んだ。

 さらに雪のドラゴンの攻撃は続く。

 上昇し、今度は別の民家に突撃。

 轟音と共に自分ごとミオンを壁に叩きつけた。

 

「っ! ……か、!」

 

 全身の骨が折れそうな衝撃をモロにくらった。

 あまりの激痛に声すら上がらないどころか吐血する。

 頭をぶつけて流血し、衝撃で鼻血も出てきた。

 

 痛みのあまり鎖から手を離しそうになった。

 しかし、消えかける意識をなんとか繋ぎ止め、ミオンは歯を食い縛る。

 

 まだ……もう少し……っ!

 

 ドラゴンはまた浮上して別の民家に突撃しようとしている。

 ミオンは慌てて鎖をのぼり、ドラゴンの首元へとやってきた。

 そして拳を握り、ミオンはありったけの力を込める。

 

「この、いい加減に!【エクスプロード】!」

 

 腹の底から出した怒声と共に、炎魔法をぶちかました。

 首元が大爆発した雪のドラゴンは熱で怯み、しかし鬱陶しそうに首を振るだけで、すぐにミオンを掴んできた。

 

「いぎっ! は、離せ!」

 

 掴まれたミオンはギリギリと握り締められ、今度こそ全身の骨が悲鳴を上げた。

 

「ぎ、いっ! あああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 さらなる激痛に暴れ苦しむミオンだが、手の拘束からは逃げられない。

 そのままドラゴンの顔前まで持っていかれたと思うと、そいつは大口を開けてミオンを屠ろうとした。

 

「っ!」

 

 食われる!

 

 補食される恐怖に全身が強ばった。

 助からないと目を瞑り、泣き叫びたい自分を抑えた。

 

 レイゼちゃんごめん……

 あたし……死んだ……

 

「今だ! 肉質の柔らかいとこを狙え!」

 

 突如としてレイゼの声が弾けた!

 四方からのバリスタ発射音が響き、六つの矢がドラゴンの氷を纏っていない部位に突き刺さる。

 

 するとドラゴンが悲鳴を上げた。

 六つの矢のうち三つは弾かれたが、残りは全てを突き刺さった。

 

 太いロープで繋がれたバリスタ矢は雪のドラゴンを地上へと落とす。

 その落ちた衝撃でミオンが手から解放され、石畳の上を転がる。

 

 ドラゴンは拘束ロープから逃れようと必死に暴れ回っていた。

 解放されたミオンは早く攻撃せねばと全身に力を入れるがダメージが大きすぎて立てない。

 

「ミオン! 早くそこから離れろ! 大砲に巻き込まれるぞ!」

 

 レイゼに言われて気づいた。

 ここは【下級層】の中央に位置する広場。

 そこを中心に北西南東に伸びる街道には、砲撃部隊が待機していた。

 

 みんな自分の撤退を待ってて撃てずにいる。

 でも自分は動けない。

 せっかくの砲撃チャンスを、自分のために無駄にするわけには!

 

「あたしに構わないで! 撃って!」

 

「バカ言ってんじゃねぇ! 待ってろ!」

 

 レイゼが屋根から飛び降りようとしたその時、女王ロゼがドラゴンの脇を駆け抜けミオンを抱えた。

 

「今だレイゼ!」

 

 女王は叫び、即座に砲撃範囲から離脱。

 それを確認したレイゼは降りるのをやめ、砲撃部隊に声を張り上げた。

 

「撃てええええええええ!」

 

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