【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「撃てええええええええ!」
レイゼの合図によって大砲による一斉砲撃が始まった。
雪のドラゴンに砲弾が直撃し、爆音が重なる。
ドラゴンは悲鳴を上げ、顔を天へと反らした。
四方からの砲撃にはさすがのドラゴンも堪えたようだ。
度重なる砲撃は、翼を形成していた氷を破壊した。
翼膜を無くしたドラゴンは、足に砲撃をくらって転倒する。
「休むな! 撃ちまくれええええ!」
レイゼが叫び、リベカや女騎士たちが大砲を次から次へと撃ち込んでいく。
確実にダメージを重ねていくレイゼたちに戦場を任せ、女王ロゼはミオンを民家の物影にソッと寝かせた。
かなり戦場から離れたとこまできた。
ここなら攻撃に巻き込まれないだろう。
「はぁ……はぁ……じょ、女王さま……あたし……」
「喋るな」と告げて、女王ロゼはミオンの頭を優しく撫でた。
「よく頑張ったなミオン。お前が居ればレイゼの世代は安心だ」
「!」
その言葉にミオンはジワッと涙を浮かべた。
悔し涙か嬉し涙かは分からないが、良い涙だ。
ミオンがレイゼのために頑張っているのは知っている。
あの子は本当に良い友達を持った。
ミオンは若い世代の中では一番強い騎士だ。
将来きっとみんなの大きな力となる子だ。
強い次世代を生む可能性だってある。
ここで死なせて良い子ではない。
「あとは私に任せておけ」
戦友としてそれだけ告げて、女王ロゼはロングブレードを抜刀した。
若い芽を摘みさせはしない。
振り返り、遠くなった戦場へと向かって走る。
あのドラゴンはここで仕留める!
※
何十発もの大砲をくらってなお、雪のドラゴンは立ち上がってきた。
「嘘だろ……」
民家の屋根から見ていたレイゼは思わず恐怖する。
あれだけの大砲をくらって、特に弱った様子はない。
それどころか奴の目は殺気でみなぎり、猛りを表すかのように街中で吹雪が起こった。
奴の両腕は巨大な氷のブレードと化し、次の瞬間にはピシッという氷にヒビが入ったような音が鳴った。
奴の両腕からか? と
「はっ!?」
消えたことを知覚した頃には、下の大砲部隊から血飛沫が弾けた。
腹を真っ二つにされた女騎士たちは断末魔を上げる。
「た、大砲部隊! 逃げろおおおお!」
暴れだした雪のドラゴンにレイゼが思わず指示を叫んだ。
逃げようとする四方の大砲部隊は、怒りに火が点いた雪のドラゴンに蹂躙される。
鮮血で凄惨な輝きを放つブレードの攻撃は一瞬で、撤退する女騎士たちを容易く一閃していった。
何より動きが速い!
空中戦も速かったが、地上戦はもっと速かった。
速すぎて今度は反応できない。
本当に僅かしか見えないのだ。
あの巨体でどうしてこんなに速く動ける!?
奴の一閃は女騎士たちを次々に両断し、ついにはリベカにまでその一閃が届いた!
「リベカアアアアアア!」
心臓が張り裂けそうなほどレイゼは叫んだ。
大切な友達が何もできないまま殺される!
助けに行こうと飛び降りても間に合わない。
仮に間に合っても、自分に奴を止められる力はない!
リベカの部隊に無慈悲なブレードの一閃が、放たれる!
「やめろおおおおおおおおおおおお!」
虚しくも声は届かず、リベカの部隊は薙ぎ払われた。
女騎士たちが両断される中、リベカだけ吹っ飛んだ。
「え!?」
見ればリベカは直剣を抜刀していた。
今の一撃をなんとか捌いたらしい。
しかし衝撃を逃がせず吹っ飛んだようだ。
そのまま民家に激突し、壁を破壊したリベカは倒れた。
気絶したらしい。
リベカ以外の女騎士たちは対応できずにみな腹を斬られて絶命している。
リベカが助かっても、素直に喜べない状況だった。
リベカの部隊を薙ぎ倒したドラゴンは轟然と吼えた。
次の獲物はと、青く残酷な瞳をギョロりと動かし、それはドラゴンの目前に立った一人の女を捉える。
漆黒のドレスを着た黒い長髪の女騎士。
ロングブレードを持った女王ロゼ。
「母さん!?」
「女王さま!?」
「ロゼ様!」
広間の中心にて立つ凛とした女王は怒濤の勢いで突っ込んだ。
女王の踏み込みは雪を舞い上げる。
対するドラゴンは肉薄する女王にブレードの一閃を薙ぎ払う。
常人にはほぼ見えない竜の一閃を女王は躱わし、ドラゴンの脇をすり抜けた。
キン……と甲高い刃の走る音が響く。
あまりにも速く、しなやかな斬撃がドラゴンの右腕を切り裂いた。
腕を纏っていた氷のブレードが粉砕し、脇の鱗をはぜらせる。
ドラゴンの背後を取る形になったロゼ。
しかしドラゴンはその隙は与えまいと、振り向き様に残った左のブレードで攻撃を放つ。
それを見切り、残ったブレードへ無数の斬撃を放ち、破壊。
「やっぱ……強ぇ……」
レイゼは母の熟達した剣技に感嘆の声を漏らした。
雪のドラゴンが思わぬ強敵に一歩退いたのだ。
これを凄いと言わずなんと言う?
しかしいつか戦ったゼクードと比べると、やはりどこか遅く感じる。それだけあいつが超人ってことか。
あのローエとなら良い勝負かもしれない。
でもこれなら、行けるんじゃないか?
レイゼの胸に僅かな希望が生まれてきた。
しかし当の女王ロゼは、顔を険しくしていた。