【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第161話【正灰式】

【シエルグリス王国】にて、女王の埋葬が行われた。

 

 俺たちのような一般人は火葬をしない。

 ただ土に埋められ、大地に還される。

 

 しかし王族はそうもいかない。

 王族の埋葬は、王位継承も含んでいる。

 先代の灰を被ることによって、初めて王位は継承されたことになる。

 

 つまり女王ロゼを火葬して灰にし、その遺灰をレイゼが被ることによって、彼女は正式な【シエルグリス王国】の新女王となる。

 

 この様式はそもそも【エルガンディ王国】のもので【正灰式(せいはいしき)】と呼ばれている。

 それが採用されているのは、他ならぬ女王ロゼが【エルガンディ王国】出身だからだろう。

 

 その【正灰式】が今、城の大広間にて行われている。

 外はすでに夜で、大広間は蝋燭(ろうそく)の光で照される。

 そこには女騎士たちと一般の女性たちが立ち並んでいた。

 

 その列を割って伸びる一本道を、漆黒のドレスを身に纏ったレイゼが歩いて出てくる。

 

 レイゼは祭壇へ向かい、銀の聖杯を持ったリベカの元に身を屈めた。

 両手を合わせたレイゼはそっと目を閉じる。

 リベカは銀の聖杯からロゼの遺灰を掬い、それを雫のようにレイゼに振りかけた。

 

 静かに舞うロゼの遺灰は、レイゼの全身を包む。

 

 ──俺はこの時、幻を見ていた。

 

 レイゼに遺灰が掛けられた時、義母の──ロゼの後ろ姿が見えたのだ。

 

 王位継承を行うレイゼを見に来てくれたのかもしれない。

 幽霊を見ているようなものなのに、俺はひどく冷静で、むしろまた会えたことに歓喜の情も沸いたほどだった。

 

 でも見えてるのは俺だけのようで……隣に立ち並ぶ妻達ローエ・カティア・フランベールは反応すらしていない。

 リベカも、レイゼも。

 

 ロゼはゆっくりと振り返り、俺に顔を見せてくれた。

 黒い瞳の美しい顔が、俺を見てきた。

 聖母のように優しく微笑むと、口を動かした。

 

『ありがとう』

 

 ──それだけ告げた義母は、いつの間にか消えていた。

 本当に幻だったのでは、と疑うほどに。

 

 でも頭が鮮明に覚えている。

『ありがとう』という確かな義母の声を。

 誰にも聞こえていない……矛盾した確かな声。

 

 なぜ『ありがとう』なのか?

 

 何に対しての『ありがとう』なのか?

 

 俺には分からなかった。

 

 むしろ俺の方こそ『ありがとう』と言いたい。

 最後にこうして会いに来てくれたのだから。

 人間は死後……少しだけ魂が現実に居るという話を聞いたことがあるが、どうやら本当だったらしい。

 

 ありがとう。義母さん。

 

 

 そして、ごめん。

 

 守れなくて。

 

 

 ……いや、これは自惚れだな。

 

 言い直そう。

 

 守ってくれてありがとう義母さん。

 

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