【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
【シエルグリス王国】にて、女王の埋葬が行われた。
俺たちのような一般人は火葬をしない。
ただ土に埋められ、大地に還される。
しかし王族はそうもいかない。
王族の埋葬は、王位継承も含んでいる。
先代の灰を被ることによって、初めて王位は継承されたことになる。
つまり女王ロゼを火葬して灰にし、その遺灰をレイゼが被ることによって、彼女は正式な【シエルグリス王国】の新女王となる。
この様式はそもそも【エルガンディ王国】のもので【正灰式(せいはいしき)】と呼ばれている。
それが採用されているのは、他ならぬ女王ロゼが【エルガンディ王国】出身だからだろう。
その【正灰式】が今、城の大広間にて行われている。
外はすでに夜で、大広間は蝋燭(ろうそく)の光で照される。
そこには女騎士たちと一般の女性たちが立ち並んでいた。
その列を割って伸びる一本道を、漆黒のドレスを身に纏ったレイゼが歩いて出てくる。
レイゼは祭壇へ向かい、銀の聖杯を持ったリベカの元に身を屈めた。
両手を合わせたレイゼはそっと目を閉じる。
リベカは銀の聖杯からロゼの遺灰を掬い、それを雫のようにレイゼに振りかけた。
静かに舞うロゼの遺灰は、レイゼの全身を包む。
──俺はこの時、幻を見ていた。
レイゼに遺灰が掛けられた時、義母の──ロゼの後ろ姿が見えたのだ。
王位継承を行うレイゼを見に来てくれたのかもしれない。
幽霊を見ているようなものなのに、俺はひどく冷静で、むしろまた会えたことに歓喜の情も沸いたほどだった。
でも見えてるのは俺だけのようで……隣に立ち並ぶ妻達ローエ・カティア・フランベールは反応すらしていない。
リベカも、レイゼも。
ロゼはゆっくりと振り返り、俺に顔を見せてくれた。
黒い瞳の美しい顔が、俺を見てきた。
聖母のように優しく微笑むと、口を動かした。
『ありがとう』
──それだけ告げた義母は、いつの間にか消えていた。
本当に幻だったのでは、と疑うほどに。
でも頭が鮮明に覚えている。
『ありがとう』という確かな義母の声を。
誰にも聞こえていない……矛盾した確かな声。
なぜ『ありがとう』なのか?
何に対しての『ありがとう』なのか?
俺には分からなかった。
むしろ俺の方こそ『ありがとう』と言いたい。
最後にこうして会いに来てくれたのだから。
人間は死後……少しだけ魂が現実に居るという話を聞いたことがあるが、どうやら本当だったらしい。
ありがとう。義母さん。
そして、ごめん。
守れなくて。
……いや、これは自惚れだな。
言い直そう。
守ってくれてありがとう義母さん。