【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第162話【フォルス隊ふたたび】

【正灰式】を終え、俺達は以前与えられた城内の部屋で休息を取っていた。

 俺はベッドに座り、向かいのベッドにローエたちが並んで座る。

 

 すでに夜も更けており、明日に備えて寝るべきなのだが……その前に気になる妻達の状態を確認した。

 

「みんな。魔法はどうだった?」

 

「ダメだ……私も使えなくなっている」

 

「わたしも……」

 

 思った通り。

 ローエだけでなく、カティアとフランベールも妊娠により魔法が使えなくなっていた。

 それは新しい命が彼女たちのお腹に宿った証拠でもある。

 

「おめでたいことなのに、タイミングが悪いですわ……」

 

「すまんゼクード。ディザスタードラゴンの時とは真逆になってしまった」

 

 言われてみると確かにそうだ。

 弱体化するのが、今回は俺達の方だとは。

 なんという皮肉だ。

 

「謝ることじゃないよカティア。ローエの言うとおり本当におめでたいことなんだから。それに俺はむしろ嬉しいんだ。念願の二人目がみんなのお腹にいること。みんな同じタイミングで妊娠してくれたこと。ほんとに俺って、つくづく運の良い男だと思うよ」

 

「ゼクードくん……」

 

「それに魔法が使えなくたって、俺たちはそこまで魔法に依存した戦い方はしてない。基本物理だ。だから今回も物理で攻める」

 

 俺達には奴の竜鱗を突破できる【気】がある。

 それが【シエルグリス】の女騎士たちにはない武器だ。

 

「あの雪のドラゴンは近距離と遠距離とで隙がない。さらにあのブレスの精度。俺たちの見えないところからブレスで攻撃してくるのは本当に厄介だ。奴に遠距離戦をやらせちゃいけない。手も足も出ないで負ける。だから反撃の余地がある接近戦で叩くんだ」

 

「でもあのドラゴンには翼があるよ? 戦いになったら、すぐ飛ぶんじゃないかな? 空に飛ばれちゃったら、それこそ遠距離で一方的にやられると思うわ。わたしの弓でも届かないだろうし反撃できないかも」

 

「フランの言うとおりだ。あとゼクード……あのドラゴンはお前とその接近戦をして競り負けた経験があるんだろ? なら、地上でお前に仕掛けるような真似はしないんじゃないか? 奴にとってお前は一番警戒すべき敵になってるはずだから」

 

 カティアの言葉に俺は頷いた。

 

「ああ、それは間違いない。でも大丈夫だ」

 

「何か良い作戦でもありますの?」

 

「ある。今回の戦いで大事なことは二つだ。奴にあの雪ダルマになる変な魔法は使わせない。そして遠距離戦もさせないために空への浮上を阻止する。この二つだ。そしてそれらをクリアするなら巣穴を狙うのがベストだ」

 

「え、でもゼクードくん……中で戦うのは危険だって」

 

「洞窟内では戦わないよ。仕掛けるポイントは、巣穴の出入口だ」

 

「出入口?」

 

 カティアが首を傾げ、俺はまた頷いた。

 

「今回は罠を使う。これはみんなの協力が必要な作戦なんだ。奴を罠に嵌められれば、あとは俺だけで倒せる。身重なみんなには悪いけど、どうかここだけ力を貸してほしい」

 

「了解よ」

「了解ですわ」

「了解だ」

 

 

 日が昇り、灰色の空を内側から照らしていく。

【シエルグリス王国】はまだ静かで、人の動きはない。

 誰もまだ目覚めていない時間だから当然なのだが。

 

 俺達は雪のドラゴン討伐のため、出撃準備を整えていた。

 罠に使う頑丈なロープと、フランベールの大弓につがえる弓矢。

 食料なども革袋に入れ、城の外へと出た。

 

 本当は、姉さんに挨拶してから出撃したかったが……姉さんも昨日の今日で疲れているはずだ。心身ともに。

 

 こんな早朝に挨拶のためだけに起こすのは申し訳ない。

 

 そんな思いもあって俺達は黙って雪のドラゴン討伐へと向かおうとしている。

 ドラゴンも待ってはくれないから。

 

「──もう行くのか」

「!?」

 

 その声は、城壁の門を潜った先で聞こえた。

 振り替えれば、そこには先代女王と同じ漆黒のドレスに身を包んだレイゼが立っていた。

 彼女の両脇にはリベカと、包帯だらけのミオンもいた。

 

「姉さん!?」

 

 不意打ちで驚いてしまった。

 まさかもう起きていたとは。

 

 でも、嬉しい。

 

 俺はレイゼたちの方に振り返り、今後の予定を話した。

 

「あいつの傷が癒える前に仕掛ける。出所が分かる今なら討伐できるから」

 

「そうか……」

 

 どこか申し訳なさそうに俯くレイゼ。

 それもそうだろう。

【シエルグリス】は今や瀕死。

 

 とても騎士を討伐に割ける余力はない。

 国の復興が最優先だ。

 

「ドラゴンの事は俺達に任せてくれ姉さん。義母さんの仇は必ず取る」

 

「……頼む」

 

「どうか、よろしくお願い致します」っとリベカが頭を下げてきた。

 隣のミオンもリベカに習って御辞儀をする。

 

「はい。リベカさんも、ミオンさんも、姉さんをよろしくお願いします」

 

「任せてください」

「ん」

 

 頷くリベカとミオン。

 そんな頼もしい二人を見てから、俺は踵を返して先へ進んだ。

 

 門の先で待つのは戦友──愛妻たち。

 

「……行くぞ! 【フォルス隊】出撃する!」

 

「「「ぉお!」」」

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