【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
雪山の麓は前に起きた雪崩のせいで進めなくなっていた。
もちろん、俺達が使っていたキャンプもメチャクチャだろう。
だが用意してもらっていた筏は無事だった。
俺とフランベールが落ちた川の上流に、しっかりと繋ぎ停められている。
「よし。みんな乗るんだ。櫂は俺がやる」
その櫂という筏を漕ぐための棒を俺は持った。
ローエたちが筏に乗り込み、重みで少し……というかけっこう沈んだ。
木と木の繋ぎ目から水が浮かんでくるほどに。
これはローエたちが重いわけでは決してない。
フル装備の騎士が四人も乗ったらこうなる。
……まぁ、ローエたちは胸に重そうなのを付けてるが。
長方形のかなり大きい筏で助かった。
小型だったら沈んでただろう。
きっと重量も考えて作ってくれたんだ。
女騎士さんたちに感謝だな。
「じゃあ行くぞ。落ちるなよ」
言って俺は筏を停泊させていたロープをほどき、川の流れに乗って進み始めた。
生まれて初めての川下りだ。
緊張するな。
筏に乗るのも初めてだし、こうやって櫂を握ったのも初めてだ。
騎士学校じゃ習うだけで実技はなかったからな。
まぁそもそも川を下る必要性がなかったが。
しかしこれが……やってみるとなかなか難しい。
まず川の流れが激しい。
これは知っていた事だが、進めば進むほど激流になっていく。
「右だ! 右に漕げゼクード!」
「お、おう!」
ドゴン!
右に漕ぎすぎて右岸に筏をぶつけてしまった。
「きゃあ!」と妻達の可愛い悲鳴が聞けたが、それどころではない。
「前に岩がありますわ! 避けてゼクード!」
「わかってる!」
バコン!
またぶつかった。
激しい衝撃にみなが身体を揺らされ、またローエたちが悲鳴を上げる。
しかもその衝撃で筏は川のど真ん中でスピンした。
振り落とされそうになりながらスピンを止めて、なんとか流れに乗り直す。
む、難しい!
川の流れは一瞬にして変わっていく。
今度は階段状になった細かな滝の連続が迫っていた。
全身を襲う落下感が肝を冷やし、激しく飛散する水しぶきに目をやられそうになる。
くそ!
甘く見てた。
川下りがこんなに難しいなんて。
「ゼクードくん! また前に岩だよ!」
「わかった!」
ドッゴン!
「きゃあ!」
避けたのにすぐ次の岩に当たってしまった。
これ一人で対応するの無理じゃないか!?
バキッ!
さらに今度は左岸に勢い余ってぶつけてしまった。
俺の力が強すぎるのだろうか?
どうにも予測した以上に筏が進んでしまってぶつかる。
ドカッ! バキッ! ゴリッ!
「お、おいゼクード! ぶつけすぎだぞ!」
「筏が壊れますわ!」
「わかってるって! けっこう難しんだよこれ!」
バキャン!
「ちょっとゼクードくん! 真面目に──」
グシャ!
「きゃあ! ゼクードくん壊れるってば!」
「お前まさかやったことないんじゃ!?」
「ないよ! 今回が初めてだ!」
「なんですのそれ!? 川下りを選ぶからてっきりあなた!」
ドガン!
「いやぁあああああああああああ! 誰か助けてえええええええ!」
そんな妻達の悲鳴が途切れることはなかった。
そして筏が何かにぶつかる衝突音も、断続的に響いたという。
※
激流との壮絶なる戦いを制し、俺達はなんとか雪山の裏へと下ることができた。
緩やかになった川を半壊した筏で渡る。
岸に筏を着け、俺達はようやく地上に足をつけた。
ローエ・カティア・フランベールの顔色は悪い。
地面に四つん這いになってゲッソリしていた。
俺はそんな彼女たちに額の汗を拭いながら声を掛ける。
「よし。なんとか着いたな。さぁみんな立つんだ! ヘバるのはまだ早いぞ! これからが勝負だからな!」
「黙れこのド下手クソがああああ!」
「死ぬかと思いましたわよ!」
「これなら登山の方がマシだったよバカ!」
「イタタタタタッ! ごめんなさい! ごめんなさい! ほんっとごめんなさい!」
嫁たちに包囲され蹴られまくった。