【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第165話【氷の棺桶】

 洞窟の奥から、確かな咆哮が聞こえた。

 どうやらゼクードが雪のドラゴンと遭遇したらしい。

 

 ローエは気を引き締め、向かいに待機するカティアとフランベールに視線を送った。

 二人も頷き、地面に敷かれた巨大ネットを掴んで、いつでも投げられるようにする。

 

 洞窟の入り口を正面として、ローエは左側。

 カティアとフランベールは右側で待機している。

 

 この配置配分はゼクードいわく、単純に筋力の問題らしい。

 ローエは力があるから一人でも巨大ネットを十分な高さに投げれるとのこと。

 

 まるで筋肉バカのような扱いで女性としては非常に遺憾だが、騎士として考えるならパワーがあるというのは褒め言葉だ。

 

 でもカティアもあんなデカい大盾と銃槍を振り回してるし、自分とそんなに筋力の差は無いような気がするのだが。

 

「来るぞ!」

「構えて!」

 

 突如弾けたカティアとフランベールの声に叩かれて、ローエはハッとなった。

 地鳴りがする。

 洞窟内で雪のドラゴンが走ってきている足音だ。

 

 もうすぐそこまで来てる!

 

 ローエは両手に力を込めた。

 すると颯爽と現れたのはゼクード。

 さすがの脚力で雪のドラゴンを離していた。

 

「今だ!」

 

 洞窟から脱出したゼクードが叫んだ。

 それを合図としたローエたちはタイミングを合わせ、後から出てきた雪のドラゴンに巨大ネットを振り掛けた。

 

 それは見事に命中し、雪のドラゴンに絡み付く。

 驚き慌てたドラゴンは暴れ出し、その巨体を振り回した。

 

「張り付け!」

 

 間髪いれずゼクードの指示が飛ぶ。

 

 みな【拘束用バリスタの矢】を取り出し、一斉に雪のドラゴンに飛び掛かった。

 

 ローエは右脇に、

 カティアは左脇に、

 フランベールは尻尾の付け根に、

 ゼクードは胸部に矢を突き立てた!

 

 深く突き刺さった矢は鮮血を吹き出させた。

 その激痛でさらに暴れる雪のドラゴンだが、掴み所を得たゼクードたちは振り落とされない。

 振り払えたのは顔に掛かったネットだけだった。

 

 暴れれば暴れるほどゼクードたちを振り回し、己に突き刺さった矢が、彼らの体重で体内を抉る。

 それはさらなる激痛を呼んだ。

 

 ドラゴンが涙を流したその時、ゼクードたちは武器を抜刀!

 刹那に纏わせる【気】を高め、全員が武器を掲げる。

 

「全力で叩き込め!」

 

「「「おおおおおおお!」」」

 

 ローエたちは勇敢に叫び、持てる力の全てを込めて武器を叩きつけた!

 

 ローエの【ヴェルデリボルバー】が敵の肩を強打!

 カチンとトリガーを引き、爆発の追加ダメージを与える。

 

 カティアも【クリムゾングレイス】を敵の肩に突き刺す!

 引き金を鳴らし、内部から爆発させる。

 

 二人の攻撃で雪のドラゴンの両腕が吹っ飛んだ。

 

 フランベールは【アイスソード】の代わりに持ってきた直剣【ロングソード】で尻尾を切断!

 

 ゼクードは【真・竜突き】を放ち、ドラゴンの胸部を穿つ!

 

 四人の一斉に攻撃に雪のドラゴンは断末魔を上げた。

 狂ったかのように暴れ出し、両翼をばたつかせた。

 その両翼は風を掴んで急上昇!

 

「こいつ! まだ!?」

 

 ゼクードが驚き、すぐに胸部に突き刺したロングブレードで傷を抉った。

 しかしドラゴンは止まらない。

 悲鳴だけ上げながら、高度を上げ始めた。

 

 

 あああああ痛い!

 痛い!

 痛いぃ!

 

 痛い! 痛い! 痛い!

 痛い! 痛い! 痛い!

 

 やめて!

 痛いぃいいい!

 

 あああああああああくそっ!

 離れろおおおおおお!

 

 くそ!

 くそ!

 痛い! 痛いぃいいいい!

 

 こいつら!

 こいつらああああああ!

 

 ああああああああああああああ!

 離れろおおおおおおおおおおお!

 

 ああああああああああ! もういい!

 

 こんな……こんな命、くれてやる!

 

 お前らだけは道連れだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

 

 

 飛び降りれる高度限界に達した。

 両腕を失い、全身穴だらけにされてもなお空へ上昇していくドラゴン。

 

 やはりドラゴンの生命力は桁違いだ!

 だが、これだけ深傷を負わせた。

 もうコイツは瀕死だし、人型ドラゴンのような再生能力もない。

 

 十分だ。

 

「みんな! 離脱しろ!」

 

 俺は妻達に叫んだ。

 

 ピシィッ!

 

「ぐあっ!?」

「きゃああああ!」

 

 しかし返って来たのは妻達の悲鳴だった。

 胸がザワつく。

 予期していた不測の事態か!?

 

「どうし──うぐっ!」

 

 俺はバリスタを握る左手に激痛を感じた。

 

 見ればバリスタが真っ白に凍っていた。

 それは握っている俺の手にも伝染し、離せなくなっていた。

 

「て、手が凍って!?」

 

 雪のドラゴンの全身から今までに見たこともない白い霧のようなものが溢れ出していた。

 それは凄まじい勢いで光を発し、大きくなっていく。

 

 ほんの少しそれに触れただけで身体が凍りついていく。

 それは突き刺したロングブレードを固定し、バリスタを固定し、それを持った両手を凍りつかせていた。

 

 なんだこの凄まじい冷気は!

 嘘だろ!?

 拘束していたのが、いつの間にか俺達が拘束されている!

 

「手が離れませんわ!」

「くそ! か、身体が!」

「やだ! 冷たい! 赤ちゃんが! やめてええええ!」

 

 必死に身体を動かして逃れようとするローエ・カティア・フランベールだが、彼女たちもすでに冷気で拘束されていた。

 

 ドラゴンは尚も空を飛び、まっすぐどこかへ飛んでいく。

 数ある山脈を飛び越えて、気がつけば下は海に!

 

 初めて見る広大な海が真下に広がっていた。

 

 しかしそれがゼクードたちが見た最後の景色となった。

 

 ドラゴンの全身から発せられる光が爆発した。

 その次の瞬間にはゼクードたちの意識も凍った。

 

 雪のドラゴンが発した白い霧は、ついに光となって爆発し、一秒の間もなくゼクードたちを氷漬けにした。

 

 それを最後に力尽きた雪のドラゴンは落下し、海へ。

 

 氷の結晶と化したゼクードたちと共に、どこかへと流れて行った。

 

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