【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

169 / 448
第166話【カーティス】

「ゼクード達はまだ見つからねぇのか!?」

 

 晴れた蒼天の下。

【シエルグリス王国】の城にて、玉座に座ったレイゼが立ち上がった。

 言われた女騎士は困った顔をする。

 

「申し訳ありません! 雪山全体を捜索させていますが、見つかったのは捨てられた松明とネットだけです……」

 

「ドラゴンは? あんなデカイのも見つからないのか!?」

 

「……はい。残念ながら……」

 

「どうなってんだ……」

 

 玉座に座り込み、片手で顔を覆った。

 すると隣に立つリベカが「女王様。落ち着いてください」と落ち着いた声音を重ねる。

 

「落ち着けるかよこんなもん。もう一週間経ってんだぞ」

 

 ゼクードたちが雪山へ向かって一週間。

 未だに帰ってこない。

 いくらなんでも遅すぎる。

 

 だから捜索隊を編成し、今こうして探させているのだが、まったく見つからない。不気味なほどに。

 

「しかし女王様。雪は止みました。おそらくドラゴンの討伐は成功したんだと思います」

 

 確かに雪は止んだ。

 あれからまったく降っていない。

 でも……

 

「じゃあなんで帰ってこねぇんだよ……おかしいだろ」

 

 ろくな狩猟期間も聞いてなかったせいで質が悪い。

 いくら【シエルグリス】がボロボロでも、それくらい聞いておくべきだった。

 

「……相討ち、でしょうか」

 

「四人揃ってか?」

 

「それは……」

 

「だいたいそれだと両者の遺体すら見つからねぇのはおかしい。きっと移動したんだ。ドラゴンの方は翼もあるからな。……リベカ。部下たちに捜索範囲をもっと広げろって伝えてくれ」

 

「はっ!」

 

 敬礼したリベカは、居合わせた女騎士を連れて【玉座の間】の外へ。

 

 残されたレイゼは玉座に座り直し、背もたれに体重を乗せて、顔を天井へと向けた。

 大きく息を吐き、そして呟く。

 

「ゼクードお前……なにやってんだよ……子供がいるんだろ……?」

 

 早く戻ってこい。

 オレだってお前に会いたいんだ。

 

 

 ゼクード達を閉じ込めた氷は、本来なら雪のドラゴンの合図で爆発する魔法の氷だった。

 

 不幸中の幸いとはこの事で、雪のドラゴンの絶命があと少し遅かったら……氷漬けにされたゼクード・ローエ・カティア・フランベールは木っ端微塵に砕かれていただろう。

 

【アイスコフィン】

 

『氷の棺』を意味する氷の魔法。

 雪のドラゴンが最後に放ったのはこれだった。

 相手を氷の中に閉じ込め【アイスブレイカー】という氷の爆発を誘発させる魔法を使い、トドメを刺す。

 

 これが本来、雪のドラゴン──ディーネの思惑だった。

 しかしそれは成されず、ゼクードたちは【アイスコフィン】をくらったところで経緯を止められた。

 

 魔法で形成されたその氷は簡単には溶けなかった。

 むしろ使用者のディーネが絶命したからこそ、絶対に溶けない氷が溶けたとも言える。

 

 そしてそれは()()()()()()()()()、海の中でゆっくりと、ゆっくりと溶けていった。

 

 そして()()()()……ゼクードたちの心臓が再び動き出す!

 

 

 ──俺は、まだ生きているのか?

 

 そう思ったのは、波の引く音が聞こえたからだ。

 

 陽に当てられているのか、全身がほのかに暖かい。

 

 少しずつ感覚が回復していくと、誰かが俺の身体を揺すっているのが分かった。

 

「──い! おい! しっかりしろ!」

 

 聞き覚えのない男の声が聞こえた。

 俺は眼を開けると、太陽光が差しておもわず目を細める。

 見れば美しい青空の下だった。

 

 ……ここは?

 

 雪のドラゴンと戦って、白い霧に包まれて……氷漬けにされていく。

 それまでの記憶はあるが、その先からは覚えていない。

 

 まるで長い夢を見ていたような気分だ。

 やはり氷漬けにされて、あのまま海に落ちたのだろうか?

 

 まさか氷漬けにされて生きてるなんて……どうやら俺は悪運も相当強いようだ。

 

 でも身体が鉛のようにひどく重い。

 そして気だるい。

 動かすと身体の節々が痛む。

 

「──……?」

 

 ボヤける視界の先で赤い影が見えた。

 

 ……カティアか?

 でも、さっきの声は男だった。

 赤いだけで別の人間か。

 

 徐々に視界が回復し始め、俺を揺さぶる赤い影の正体がハッキリ見えるようになってきた。

 

 赤い髪とパープルの瞳をした男だった。

 なかなか精悍な顔つきで、厳格そうな雰囲気さえ漂わせている。

 

「目が覚めたか」

 

「……君は?」

 

「カーティスだ」

 

 ……カーティス?

 カーティスって……俺の息子の名前じゃ──

 

 よく見ればカーティスと名乗った男は鎧を装備していた。

 しかも【エルガンディ王国】のデザインだ。

 真紅の鎧と背中には俺と同じ武器種のロングブレードが納刀されている。

 

 彼は【エルガンディ王国】の騎士らしい。

 てことは味方だ。助かった。

 でもカーティスって……偶然かな?

 俺の息子と同じ名前なんて。

 

 この俺とそっくりなパープルの瞳と、カティア譲りの赤い髪はどう見てもうちの息子カーティスだ。

 

 でもデカくなり過ぎだ。

 俺よりちょっと身長高いし……なにより本物のカーティスはまだ一歳のはずだ。

 

 似てるだけ、なんだろうか? 

 よく見るとあのクロイツァーをそのまま若くしたような見た目をしている。

 

 いや、まさかな? 

 

「立てるか?」

 

「ぇ、ぁ、ああ。なんとか……」

 

 俺は差し出されたカーティスの手を握り、上半身を起こした。

 そして引っ張られるように立ち上がる。

 すると全身の骨が悲鳴を上げ、痛みを訴えてくる、

 

 歯を食い縛って耐えたが、身体はフラついてしまう。

 するとまたカーティスに支えられた。

 

「大丈夫か? 無理はするな」

 

「……ごめん。少し身体を動かさないと、むしろダメだこれ。全身が凝り固まってる感じ」

 

 俺は首を回し、肩を回し、身体をほぐしていった。

 しながら辺りを見渡すと、ここは浜辺。

 上を見れば晴れ渡った空が広がる。

 

 浜辺を形成する砂も白く綺麗だ。

 サラサラとしていて、妙に足を取られる。

 前を見れば、恐ろしいまでに広大な海が広がり波打っていた。

 

 しかしここにカティア・ローエ・フランベールの姿はない。

 俺だけここに流されたのか?

 まさか……

 

 不安が芽生え、早く探さねばという思いに駆られた。

 

「こんなところで倒れて、何があったんだ?」

 

 カーティスに聞かれ、俺は肩を竦める。

 

「いや、実はさっきドラゴンと戦ってたんだ。そしたら海に落ちちゃってこの様だよ」

 

「ドラゴンと?」

 

 カーティスは怪訝な顔をしてきた。

 何か俺に対して疑問を持ったらしいが、今はそれよりローエたちを探しに行きたい。

 心配だ。別の場所に打ち上げられていればいいんだけど。

 

「なぁカーティスさん。俺の他に三人……女騎士がいなかったか? 一緒に戦ってた仲間なんだけど」

 

「いや、見ていない」

 

「やっぱ俺だけ?」

 

「ああ」

 

「マジか……じゃあ探そう! 悪いけど手伝ってくれないかい?」

 

「構わないが……あんた名前は?」

 

「ゼクードだ。よろしくな」

 

「ゼクード!?」

 

 さっきまでクールだったカーティスがいきなり大声を上げた。

 ドが付くほど大袈裟に驚き、目を限界まで見開いている。

 

「ぁあビックリした……どうしたの?」

 

「あ、すまん……その…………オレの父も……ゼクードだから、驚いた」

 

「え!?」

 

 ……こ、この人のお父さんもゼクードって名前なんだ。

 へー、凄い偶然だなぁ。

 

 まさか本当に……息子のカーティスなのか?

 

 でも……じゃあ……なんで?

 なんでこんな大人になってるんだ?

 

 ……いやまて、落ち着け。

 まだ最後の城壁が残ってる。

 たまたま父と息子の名前が被ってただけだろう。

 

「ぉ、お母さんの名前は?」

 

「カティアと聞いている」

 

「カ……」

 

 最後の城壁はたった一言であっけなく破壊された。

 

 嘘だろ……なんだよこれ……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。