【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「ゼクード達はまだ見つからねぇのか!?」
晴れた蒼天の下。
【シエルグリス王国】の城にて、玉座に座ったレイゼが立ち上がった。
言われた女騎士は困った顔をする。
「申し訳ありません! 雪山全体を捜索させていますが、見つかったのは捨てられた松明とネットだけです……」
「ドラゴンは? あんなデカイのも見つからないのか!?」
「……はい。残念ながら……」
「どうなってんだ……」
玉座に座り込み、片手で顔を覆った。
すると隣に立つリベカが「女王様。落ち着いてください」と落ち着いた声音を重ねる。
「落ち着けるかよこんなもん。もう一週間経ってんだぞ」
ゼクードたちが雪山へ向かって一週間。
未だに帰ってこない。
いくらなんでも遅すぎる。
だから捜索隊を編成し、今こうして探させているのだが、まったく見つからない。不気味なほどに。
「しかし女王様。雪は止みました。おそらくドラゴンの討伐は成功したんだと思います」
確かに雪は止んだ。
あれからまったく降っていない。
でも……
「じゃあなんで帰ってこねぇんだよ……おかしいだろ」
ろくな狩猟期間も聞いてなかったせいで質が悪い。
いくら【シエルグリス】がボロボロでも、それくらい聞いておくべきだった。
「……相討ち、でしょうか」
「四人揃ってか?」
「それは……」
「だいたいそれだと両者の遺体すら見つからねぇのはおかしい。きっと移動したんだ。ドラゴンの方は翼もあるからな。……リベカ。部下たちに捜索範囲をもっと広げろって伝えてくれ」
「はっ!」
敬礼したリベカは、居合わせた女騎士を連れて【玉座の間】の外へ。
残されたレイゼは玉座に座り直し、背もたれに体重を乗せて、顔を天井へと向けた。
大きく息を吐き、そして呟く。
「ゼクードお前……なにやってんだよ……子供がいるんだろ……?」
早く戻ってこい。
オレだってお前に会いたいんだ。
※
ゼクード達を閉じ込めた氷は、本来なら雪のドラゴンの合図で爆発する魔法の氷だった。
不幸中の幸いとはこの事で、雪のドラゴンの絶命があと少し遅かったら……氷漬けにされたゼクード・ローエ・カティア・フランベールは木っ端微塵に砕かれていただろう。
【アイスコフィン】
『氷の棺』を意味する氷の魔法。
雪のドラゴンが最後に放ったのはこれだった。
相手を氷の中に閉じ込め【アイスブレイカー】という氷の爆発を誘発させる魔法を使い、トドメを刺す。
これが本来、雪のドラゴン──ディーネの思惑だった。
しかしそれは成されず、ゼクードたちは【アイスコフィン】をくらったところで経緯を止められた。
魔法で形成されたその氷は簡単には溶けなかった。
むしろ使用者のディーネが絶命したからこそ、絶対に溶けない氷が溶けたとも言える。
そしてそれは
そして
※
──俺は、まだ生きているのか?
そう思ったのは、波の引く音が聞こえたからだ。
陽に当てられているのか、全身がほのかに暖かい。
少しずつ感覚が回復していくと、誰かが俺の身体を揺すっているのが分かった。
「──い! おい! しっかりしろ!」
聞き覚えのない男の声が聞こえた。
俺は眼を開けると、太陽光が差しておもわず目を細める。
見れば美しい青空の下だった。
……ここは?
雪のドラゴンと戦って、白い霧に包まれて……氷漬けにされていく。
それまでの記憶はあるが、その先からは覚えていない。
まるで長い夢を見ていたような気分だ。
やはり氷漬けにされて、あのまま海に落ちたのだろうか?
まさか氷漬けにされて生きてるなんて……どうやら俺は悪運も相当強いようだ。
でも身体が鉛のようにひどく重い。
そして気だるい。
動かすと身体の節々が痛む。
「──……?」
ボヤける視界の先で赤い影が見えた。
……カティアか?
でも、さっきの声は男だった。
赤いだけで別の人間か。
徐々に視界が回復し始め、俺を揺さぶる赤い影の正体がハッキリ見えるようになってきた。
赤い髪とパープルの瞳をした男だった。
なかなか精悍な顔つきで、厳格そうな雰囲気さえ漂わせている。
「目が覚めたか」
「……君は?」
「カーティスだ」
……カーティス?
カーティスって……俺の息子の名前じゃ──
よく見ればカーティスと名乗った男は鎧を装備していた。
しかも【エルガンディ王国】のデザインだ。
真紅の鎧と背中には俺と同じ武器種のロングブレードが納刀されている。
彼は【エルガンディ王国】の騎士らしい。
てことは味方だ。助かった。
でもカーティスって……偶然かな?
俺の息子と同じ名前なんて。
この俺とそっくりなパープルの瞳と、カティア譲りの赤い髪はどう見てもうちの息子カーティスだ。
でもデカくなり過ぎだ。
俺よりちょっと身長高いし……なにより本物のカーティスはまだ一歳のはずだ。
似てるだけ、なんだろうか?
よく見るとあのクロイツァーをそのまま若くしたような見た目をしている。
いや、まさかな?
「立てるか?」
「ぇ、ぁ、ああ。なんとか……」
俺は差し出されたカーティスの手を握り、上半身を起こした。
そして引っ張られるように立ち上がる。
すると全身の骨が悲鳴を上げ、痛みを訴えてくる、
歯を食い縛って耐えたが、身体はフラついてしまう。
するとまたカーティスに支えられた。
「大丈夫か? 無理はするな」
「……ごめん。少し身体を動かさないと、むしろダメだこれ。全身が凝り固まってる感じ」
俺は首を回し、肩を回し、身体をほぐしていった。
しながら辺りを見渡すと、ここは浜辺。
上を見れば晴れ渡った空が広がる。
浜辺を形成する砂も白く綺麗だ。
サラサラとしていて、妙に足を取られる。
前を見れば、恐ろしいまでに広大な海が広がり波打っていた。
しかしここにカティア・ローエ・フランベールの姿はない。
俺だけここに流されたのか?
まさか……
不安が芽生え、早く探さねばという思いに駆られた。
「こんなところで倒れて、何があったんだ?」
カーティスに聞かれ、俺は肩を竦める。
「いや、実はさっきドラゴンと戦ってたんだ。そしたら海に落ちちゃってこの様だよ」
「ドラゴンと?」
カーティスは怪訝な顔をしてきた。
何か俺に対して疑問を持ったらしいが、今はそれよりローエたちを探しに行きたい。
心配だ。別の場所に打ち上げられていればいいんだけど。
「なぁカーティスさん。俺の他に三人……女騎士がいなかったか? 一緒に戦ってた仲間なんだけど」
「いや、見ていない」
「やっぱ俺だけ?」
「ああ」
「マジか……じゃあ探そう! 悪いけど手伝ってくれないかい?」
「構わないが……あんた名前は?」
「ゼクードだ。よろしくな」
「ゼクード!?」
さっきまでクールだったカーティスがいきなり大声を上げた。
ドが付くほど大袈裟に驚き、目を限界まで見開いている。
「ぁあビックリした……どうしたの?」
「あ、すまん……その…………オレの父も……ゼクードだから、驚いた」
「え!?」
……こ、この人のお父さんもゼクードって名前なんだ。
へー、凄い偶然だなぁ。
まさか本当に……息子のカーティスなのか?
でも……じゃあ……なんで?
なんでこんな大人になってるんだ?
……いやまて、落ち着け。
まだ最後の城壁が残ってる。
たまたま父と息子の名前が被ってただけだろう。
「ぉ、お母さんの名前は?」
「カティアと聞いている」
「カ……」
最後の城壁はたった一言であっけなく破壊された。
嘘だろ……なんだよこれ……