【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「失礼ね。人を見かけで判断するなんて」
腕を組んで、ちょっとだけムスッとした顔でフランベールは言った。
するとレミーベールは小さく笑う。
「ふふ、冗談よ。気を悪くしたなら謝るわ。あなたが母と同じ名前だったから、ちょっとカラかいたくなったの」
母と同じ名前……か。
本当に大きくなったレミーベールなら、なんて説明すれば良いんだろう?
いや……待って。
確認すればいいんだ!
「……ねぇレミーベールさん。突然だけどあなた……妹弟がいるでしよ?」
「え? ええ、まぁ、いるけど」
「人数は……あなたを含めて三人」
「え!? そ、そうだけど」
図星だったらしいレミーベールは怪訝な顔を浮かべた。
やはり、と確信を掴んだフランベールは続ける。
「あなたが一番お姉ちゃんで、妹と弟がいるわね?」
「え……」
「みんな同い年でしょ?」
「!?」
「妹は【グロリア】。弟は【カーティス】じゃない?」
「ちょ、ちょっと待って! なんでそこまで知ってるの!?」
知りすぎてて逆にドン引きされた。
この反応……やっぱり合ってるんだ。
ここまで来たらもう疑いようもない。
この子は、わたしとゼクードくんの娘。
【レミーベール・フォルス】だ。
妹弟の名前まで偶然同じなんて、それこそバカな話はないだろう。
娘であるということが確信に変わった。
それともう1つの事も確信に変わった。
じゃあ本当に……わたしは18年も氷漬けにされてたってことなの?
信じられない……
でもそれしか考えられない。
肉体が老化してないこの現状を見れば。
「あなたもしかして……占い師?」
「違うよ……その………………わたしは【フランベール・フォルス】。あなたの、母親」
確信に変わった事実を隠さずに告げた。
率直すぎて、すぐには受け入れて貰えないだろう。
現にレミーベールは、開いた口が塞がらない顔になっていた。
しばらくお互い黙り合って見つめ合う。
重い沈黙が続き、レミーベールは頬を掻く。
「ぇ……え~っと……ちょっと、なに言ってるか分かんないんだけど」
「信じてもらえないのは……分かるよ。わたしもまだ半信半疑だから」
確信はしている。
けどあまりに非現実的すぎて実感が湧かないのだ。
自分の感覚で言えば、ちょっと寝て、目が覚めたら18年過ぎていて、娘が大きくなっていたのだから。
会えて嬉しいのに……なぜか胸が苦しい。
「……ワタシの家族構成を知ってるの?」
「うん。ゼクード・フォルスがお父さん。わたしは妻。それともう二人……カティア・フォルスとローエ・フォルスが妻にいるわ。カティアさんの息子がカーティスで、ローエさんの娘がグロリア。そしてわたしフランベールの娘が……あなたよレミー」
「嘘でしょ……どうなってんの?」
レミーベールの顔に疑心の色が無くなってきた。
ここまでプライベートを証明されれば、さすがに疑うのも難しくなってくる。
「……雪のドラゴンとの戦いで、わたしたち【フォルス隊】はみんな氷漬けにされたわ。それでそのまま18年が過ぎたみたい」
「氷漬け……」
そこが気になったらしいレミーベールが呟く。
フランベールはゆっくりと歩み寄った。
「レミー……信じて。わたしはあなたの──」
「ま、待って! 少し待って! それは信じるから、少し落ち着かせて!」
「レミー……」
「死んだって聞いてたから……いきなりこんな……頭の整理が追い付かないわ」
慌てて後退るレミーベールを見て、フランベールはどこか共感を覚えて安堵した。
「うん……そうだね。わたしもゴチャゴチャだよ」
そうだ。
こんな非現実的なこと、簡単に受け入れられるわけない。
おかしいものはおかしいんだ。
でも、それでも……苦しい胸の奥で感じているこの気持ちだけは、本物だ。
「でも……これだけは言わせてレミー」
「?」
レミーベールがこちらを見る。
絶対に確かなこの気持ちを、フランベールは告白した。
「会えて嬉しい」
言われたレミーベールは目を見開き「お母さん……」と掠れる声を出した。
お母さんと呼んでくれた。
悲しいのに嬉しい。
何を悲しいと感じているのか?
それはきっと母親でありながら……
一歳のレミーベールしか知らず……
その先の思い出もなく……
親子として過ごすはずだった大切な時間が……
無情にも過ぎてしまったことに対して。
──でも、氷漬けになって、本当ならわたしは死んでいたかもしれない。
そう考えれば、こうして生きて会えたことは、とんでもない奇跡なのではないだろうか?
過ぎた時間を悔やむ気持ちは抑えられないけれど、それ以上にこうして会えたことが本当に嬉しい。
「大きくなったね。わたしより身長あるんじゃない?」
「そ、そうかしら……よく分かんないわ」
頬を赤くしたレミーベールは、まだ困惑している。
彼女はフランベールから目を剃らして背を向けた。
「レミー……」
「い、今はともかく仲間を探しに行きましょう。ドラゴンに襲われてたら大変だし」
「う、うん。そうだね」
確かにその通りだとフランベールは思った。
ゼクードくんやカティアさんたちが心配だ。
ここはレミーに頼らせてもらおう。
それにレミーベールにはまだ心の準備が必要みたいだから。