【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第172話【嬉しさと悲しさと】

「失礼ね。人を見かけで判断するなんて」

 

 腕を組んで、ちょっとだけムスッとした顔でフランベールは言った。

 するとレミーベールは小さく笑う。

 

「ふふ、冗談よ。気を悪くしたなら謝るわ。あなたが母と同じ名前だったから、ちょっとカラかいたくなったの」

 

 母と同じ名前……か。

 本当に大きくなったレミーベールなら、なんて説明すれば良いんだろう?

 

 いや……待って。

 確認すればいいんだ!

 

「……ねぇレミーベールさん。突然だけどあなた……妹弟がいるでしよ?」

 

「え? ええ、まぁ、いるけど」

 

「人数は……あなたを含めて三人」

 

「え!? そ、そうだけど」

 

 図星だったらしいレミーベールは怪訝な顔を浮かべた。

 やはり、と確信を掴んだフランベールは続ける。

 

「あなたが一番お姉ちゃんで、妹と弟がいるわね?」

 

「え……」

 

「みんな同い年でしょ?」

 

「!?」

 

「妹は【グロリア】。弟は【カーティス】じゃない?」

 

「ちょ、ちょっと待って! なんでそこまで知ってるの!?」

 

 知りすぎてて逆にドン引きされた。

 

 この反応……やっぱり合ってるんだ。

 ここまで来たらもう疑いようもない。

 この子は、わたしとゼクードくんの娘。

【レミーベール・フォルス】だ。

 

 妹弟の名前まで偶然同じなんて、それこそバカな話はないだろう。

 娘であるということが確信に変わった。

 それともう1つの事も確信に変わった。

 

 じゃあ本当に……わたしは18年も氷漬けにされてたってことなの?

 信じられない……

 

 でもそれしか考えられない。

 肉体が老化してないこの現状を見れば。

 

「あなたもしかして……占い師?」

 

「違うよ……その………………わたしは【フランベール・フォルス】。あなたの、母親」

 

 確信に変わった事実を隠さずに告げた。

 率直すぎて、すぐには受け入れて貰えないだろう。

 現にレミーベールは、開いた口が塞がらない顔になっていた。

 

 しばらくお互い黙り合って見つめ合う。

 重い沈黙が続き、レミーベールは頬を掻く。

 

「ぇ……え~っと……ちょっと、なに言ってるか分かんないんだけど」

 

「信じてもらえないのは……分かるよ。わたしもまだ半信半疑だから」

 

 確信はしている。

 けどあまりに非現実的すぎて実感が湧かないのだ。

 自分の感覚で言えば、ちょっと寝て、目が覚めたら18年過ぎていて、娘が大きくなっていたのだから。

 

 会えて嬉しいのに……なぜか胸が苦しい。

 

「……ワタシの家族構成を知ってるの?」

 

「うん。ゼクード・フォルスがお父さん。わたしは妻。それともう二人……カティア・フォルスとローエ・フォルスが妻にいるわ。カティアさんの息子がカーティスで、ローエさんの娘がグロリア。そしてわたしフランベールの娘が……あなたよレミー」

 

「嘘でしょ……どうなってんの?」

 

 レミーベールの顔に疑心の色が無くなってきた。

 ここまでプライベートを証明されれば、さすがに疑うのも難しくなってくる。

 

「……雪のドラゴンとの戦いで、わたしたち【フォルス隊】はみんな氷漬けにされたわ。それでそのまま18年が過ぎたみたい」

 

「氷漬け……」

 

 そこが気になったらしいレミーベールが呟く。

 フランベールはゆっくりと歩み寄った。

 

「レミー……信じて。わたしはあなたの──」

 

「ま、待って! 少し待って! それは信じるから、少し落ち着かせて!」

 

「レミー……」

 

「死んだって聞いてたから……いきなりこんな……頭の整理が追い付かないわ」

 

 慌てて後退るレミーベールを見て、フランベールはどこか共感を覚えて安堵した。

 

「うん……そうだね。わたしもゴチャゴチャだよ」

 

 そうだ。

 こんな非現実的なこと、簡単に受け入れられるわけない。

 おかしいものはおかしいんだ。

 

 でも、それでも……苦しい胸の奥で感じているこの気持ちだけは、本物だ。

 

「でも……これだけは言わせてレミー」

 

「?」

 

 レミーベールがこちらを見る。

 絶対に確かなこの気持ちを、フランベールは告白した。

 

「会えて嬉しい」

 

 言われたレミーベールは目を見開き「お母さん……」と掠れる声を出した。

 

 お母さんと呼んでくれた。

 悲しいのに嬉しい。

 何を悲しいと感じているのか?

 

 それはきっと母親でありながら……

 一歳のレミーベールしか知らず……

 その先の思い出もなく……

 親子として過ごすはずだった大切な時間が……

 無情にも過ぎてしまったことに対して。

 

 ──でも、氷漬けになって、本当ならわたしは死んでいたかもしれない。

 そう考えれば、こうして生きて会えたことは、とんでもない奇跡なのではないだろうか?

 

 過ぎた時間を悔やむ気持ちは抑えられないけれど、それ以上にこうして会えたことが本当に嬉しい。

 

「大きくなったね。わたしより身長あるんじゃない?」

 

「そ、そうかしら……よく分かんないわ」

 

 頬を赤くしたレミーベールは、まだ困惑している。

 彼女はフランベールから目を剃らして背を向けた。

 

「レミー……」

 

「い、今はともかく仲間を探しに行きましょう。ドラゴンに襲われてたら大変だし」

 

「う、うん。そうだね」

 

 確かにその通りだとフランベールは思った。

 ゼクードくんやカティアさんたちが心配だ。

 ここはレミーに頼らせてもらおう。

 

 それにレミーベールにはまだ心の準備が必要みたいだから。

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