【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
娘たちに可愛がられて楽しい時間を過ごした俺は、見張りのカーティスの元へと来た。
一切の隙を見せないカーティスは、俺の気配を感じたらしく振り向いてくる。
凄いな。
かなり気配を消して近づいたのに。
「よっ! カーティス。お疲れさん」
「父さん? もうお休みになった方が……」
驚くカーティスに、俺はお湯を渡して隣に立った。
自分用とカーティス用の二つのカップ。
そのお湯を一口飲んでから、俺は口を開いた。
「いや、なんか目が冴えちゃってさ。せっかくだから話でもしようと思ったんだ」
「そ、それは! 光栄です!」
「か、堅いなカーティス。もっとリラックスしてくれよ。親子なんだからさ」
「は、はい……リラックス……」
肩の力を抜くように深呼吸し始めたカーティス。
なんか凄い俺のこと敬ってくれてるよなカーティスって。
態度で分かる。
姉のレミーベールやグロリア相手だとクールというか、無口というか、素っ気ない。
カティアたち母親には笑顔を見せるぐらいには柔らかくなる。
そして俺には凄い敬意を払って接してくれている。
父と息子ってこんな距離感なのかな?
さっきのレミーベールやグロリアのように、砕けた口調でもいいのだが。
……俺もなんだかんだ親父(フォレッド)とまともに接したことがないから、なかなか迷うなこれ。
親の俺がこんだけ迷うなら、カーティスもそうなのかもしれない。
素の性格が無口なら、あり得る話だ。
もっと他愛のない話をしよう。
こういうのはたくさん数をこなすしかないだろうしな。
「ほら見ろカーティス。お星さまが綺麗だぞ」
いつか言ったこのセリフ。
いつか見たこの夜空。
18年の時を経ても、相変わらず美しかった。
何も変わっていない。
変わっているとすれば、俺の隣でカーティスが自分で立って、自分で夜空をお見上げるくらいに大きくなってること。
「そうですね。綺麗です。とても」
深呼吸して落ち着いた声音だった。
俺は夜空を見上げたまま口を開く。
「思い出すな。昔お前を抱っこして、この夜空をいっしょに見上げた」
「18年前、ですか?」
「うん……でも俺の感覚で言うと、それは18年前じゃなくて、数週間前の記憶なんだ」
「数週間……」
「記憶が飛んでるって感じかな。……ごめんなカーティス。18年もお前を見てやれなくて」
「いえ! こうして会えただけでも奇跡です! オレは嬉しいですよ父さん! 本当に!」
カーティスがそう言った。
本心と分かるその声に、俺の涙腺はまたも震えだす。
本当に……グリータ・レィナ・リーネ・ガイス・リリーベールには感謝しかない。
こんな優しい子に育ててくれて。
「お前ら本当に……良い子に育ったな」
「父さん……」
「本当なら俺たちが手を尽くして……お前たちを育ててやりたかった……」
いくらなんでも泣きすぎだと、自分で思っていたのに、結局は泣いてしまっていた。
なんでこんなに涙が込み上げてくるのだろう。
やっぱり自分で育てたかったという後悔からか。
18年という失った時間はあまりにも大きすぎて、それが空っぽ過ぎて……
親としての責任をまるで果たせてなくて、そんな俺たちをカーティス・グロリア・レミーベールは『お父さん』『お母さん』と呼んでくれる。
産みの親より育ての親という言葉があるのに、カーティスたちは俺たちを親と呼んでくれる。
それが無闇に嬉しい。
普通そんな簡単に、親として受け入れられるだろうか?
どんなに証拠があったとしても。
無理だ。
まして歳が同じくらいにまでなった親を親と呼ぶなんて。
だからこそ思うのだ。
グリータたちが、どれほど繊細な育児をしてくれたか。
それが分かるのだ。
本当に、本当に、感謝しかない。
「……泣かないでください父さん。オレにとって父さんは、憧れの英雄で、無敵の存在なんです」
無敵の……存在。
どくん……
心臓が高鳴った。
感動したんだと思う。
俺も親父にはそんなイメージを持っていた。
同じ事を息子に言われる日が来るなんて。
感動せずにはいられない。
余計に涙が出てくる。
「カーティス……」
「グリータさんやガイスさん。それから国王さまから……ずっとあなたの伝説を聞いて育ちました。その度に憧れました。素晴らしい父を持ったと、毎日が誇らしかったです。そして、今でも」
「お前……」
「だから、泣かないでください。父さんには涙なんて似合いませんよ。無敵で最強の騎士なんですから」
「…………ありがとう」
俺はお湯を飲んだ。
そのお湯は、ちょっとだけしょっぱかった。