【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第177話【応援】

 キャンプを出発して、俺達は【エルガンディ王国】を目指した。

 方角は西。

 順調にいけばあと1日で帰還できるとのこと。

 

 青空と太陽が眩しい。

 まばらに立つ木々や、生え渡る草原。

 それらを乗せる大地は、女体を思わせる艶かしさがあった。

 稜線が腰の膨らみのような曲線を描いている。

 

 緩やかな勾配が続く大草原は、妊婦のローエたちの足を疲れさせる難所だった。

 それでもグロリアたちが手を貸したり、声を掛けたり、いろいろ気遣ってくれているおかげで、妻たちの疲労の色は薄かった。

 

 俺も妻たちを気に掛けようとしたが、先にグロリアとレミーベールが動いてしまって何もできなかった。

 妻たちの好感度を上げるチャンスが、まさか娘に横取りされるとは。

 

 手を取り合って進む母と娘を見るのは、とても微笑ましいものだったが、夫の俺が何もしてない状態になってるのはちょっと悲しい。

 

 まぁいいか、と前を向けば、そこには先頭を歩くカーティスの背中があった。

 ロングブレードをチャキチャキと揺らしながら進んでいる。

 

 母の事は完全にグロリアとレミーベールに任せている感じだ。

 常に先頭に立って周囲の警戒をしている。

 本当に頼もしい長男だ。

 

「そういえばカーティスは誰から剣を習ったんだ?」

 

 頼もしい息子の背中に俺は声を掛けた。

 

「国王さまです」

 

「国王さま!? 直々にか!?」

 

 あまりに意外な師匠だったので驚いた。

 カーティスは顔だけこちらに振り向く。

 

「はい。お忙しい中、お時間を割いてくださりました」

 

 そういえば国王さまはロングブレード使いだったな。

 グリータが言っていた。

 うちのカーティスをここまで練り上げるとは、国王さまの技量も相当なもんだな。

 

「そっか。それで俺と同じロングブレード使いなんだ」

 

 納得した声を上げると、俺の肩をポンと掴んでレミーベールが顔を出してきた。

 

「お父さんと同じじゃなきゃ嫌だってゴネてたもんね」

 

「やかましい」っとカーティスはまた前を向いた。

 

 俺といっしょな武器を使いたかったのか。

 なんか分かるなぁその気持ち。

 カーティスも可愛いところあるじゃん。

 

「一番泣き虫だったのに、今じゃ【エルガンディ】で一番強い騎士だもんね。唯一のSSS級だし」

 

 今度はグロリアが俺の隣に現れて言った。

 

 カーティス泣き虫だったのか。

 ほんと……可愛いところあるんだな。

 見てみたかったな。いやそれより。

 

「カーティスもSSSなんだ。俺と同じだな」

 

 言うと後ろのカティアが驚く。

 

「さすが……男の子はやはり強いな。鼻が高いよ」

 

 母にそう言われても振り向かないカーティスだが、やはり嬉しかったのか、耳が真っ赤になっていた。

 可愛い……

 

「ふーんだ。みんなしてカーティスカーティスって。アタシだって本気出したら凄いんだから」

 

 いきなり不機嫌になったグロリアが草原をドカドカ踏み出す。

 

「あら? グロリアはどの級ですの?」

 

 ローエに聞かれたグロリアは、困った様に母から目を逸らした。

 

「……SS級」

 

「あらあら、わたくしと同じですわね」

 

「お母さんより強い自信あるよ? あと美貌も」

 

「んまっ! わたくしの美貌があなたのどこに劣るのかしら?」

 

「全部! 若さが違うよ!」

 

「同い年ですわよ!」

 

 なんか凄い会話してるあの親子。

 端から見るとただの姉妹喧嘩だ。美人姉妹。

 

「んー、気になってたんだけど……レミーとグロリアはなんでそんな白とか銀の鎧を着てるの?」

 

 フランベールの問いに、俺もハッとなった。

 そういえば俺も聞こうと思ってて忘れてた。

 

「ああ、ワタシとグロリアは魔法が使えないの」

 

「え!?」

 

 カーティスとグロリア以外が驚愕して声を揃えた。

 まさかグロリアとレミーベールが魔法を使えないなんて。

 確かに必ず遺伝するものでもないが、じゃあなんで騎士に?

 

 俺が聞く前にレミーベールは続ける。

 

「それで色のない白とか銀の鎧を装備してるの。魔法の使えない物理専門の証ね」

 

「魔法が使えないのに騎士になったのか?」

 

 カティアに聞かれ、グロリアは頬を掻く。

 

「うん……まぁ……ちょっとね」

 

 何か言いにくそうなグロリアだ。

 見ればレミーベールも同じ顔をしている。

 なんだろ?

 家族にも言いにくい事なのだろうか?

 

 グロリアとレミーベールは、どちらもカーティスの背を見ている。

 騎士になった理由はカーティス関連か?

 

 よく分からんが、まぁいいや。 

 それより俺的にはレミーベールの銀の鎧の方が気になる。

 

「レミー。銀の鎧って総司令の偉い人が着る鎧じゃなかったか?」

 

「それは昔の話。いま総司令の人は金の鎧を着てるわ。目立つし分かりやすいから」

 

「金? また派手だなぁ……」

 

 あれから【エルガンディ】もいろいろ変わったんだな。

 魔法がなくても騎士になれるんだ。

 でも逆はどうなんだろ?

 

「よく魔法無しで騎士になれましたわね」

 

 ローエにレミーベールは頷く。

 

「今は実力があればなれるよ。女でもね」

 

「変わったな【エルガンディ】も」

 

 カティアが感心すると、先頭を歩いていたカーティスが突然止まった。

 

「! みんな! こっちだ!」

 

 何かに気づいたらしいカーティスはみんなを誘導し、近くにあった岩の影に隠れた。

 

 どうしたんだ? と聞くよりも早く、カーティスは俺に望遠鏡を手渡してきた。

 察した俺は岩から少し顔を出し、望遠鏡を覗く。

 

 草原のど真ん中で赤いドラゴンの群れと黒いドラゴンの群れがひしめき合っている。

「あれは……」

 

「A級ドラゴンとドラゴンゾンビの群れですね」

 

「争ってないか?」

 

 ドラゴン同士なのに……しかもA級ドラゴンが劣勢だ。

 

「ええ。ああやって襲ってドラゴンゾンビは仲間を増やしているみたいなんです」

 

「なるほど。殺してドラゴンゾンビにするのか」

 

「そのとおりです。……おいグロリア。レミー」

 

 カーティスが呼ぶと、娘二人は頷いて大剣と戦斧を取り出して肩に乗せた。

 当のカーティスもロングブレードを抜刀する。

 

「父さんたちはここで隠れててください。オレたちが片付けます」

 

「いや、ちょっと待ってくれカーティス」

 

「なにか?」

 

「お前のロングブレード貸してくれ」

 

「え!?」

 

 カーティスが目を丸くした。

 俺は構わずグロリアとレミーベールの方へ視線をやる。

 

「グロリア。レミー。昨日の勝負の約束。今ここでやらないか?」

 

「え? お父さん大丈夫なの? 身体……」

 

 グロリアが心配そうに言う。

 

「もう十分回復したよ」

 

「ならいいけど、勝負方法は?」

 

 レミーベールに聞かれ、俺は当然とばかりに腕を組んで笑う。

 

「そりゃあ狩った数勝負だよ。審判もたくさんいるし、不正はできないさ」

 

「ぉ、おいゼクード。なにもこんな時にやらなくたっていいだろ」

 

 言ってきたのはカティアだった。

 

「まぁまぁ。ちょっとあいつらに俺の本気を見せたいだけだって」

 

「あなたまたそうやってカッコつけようとして……。前もレイゼさんの時も失敗してたじゃありませんの」

 

「そうだよゼクードくん。今回は助けてあげられないよ? わたし達」

 

「そ、そうだけどぉ~……」

 

 ローエとフランベールに言い返せないでいると、カーティスが割って入ってきた。

 

「大丈夫です。何かあればオレが助けに入ります」

 

「カーティス!」

 

「どうぞ。使ってください」

 

 ロングブレードを手渡された。

 

「ありがとう!」

 

 柄を握り、何度か振って見る。

 いいね。前に使っていた【ハーズヴァンドオブリージュ】と同じ重さだ。やりやすい。

 

「よっしゃっ! 勝負だグロリア! レミー!」

 

「望むところよ!」

「お父さんでも手加減しないからね?」

 

 

 ゼクード・グロリア・レミーベールがドラゴンたちが争う群れの中に突っ込んで行く。

 それを見送りながらローエは溜め息を吐いた。

 

「んもぅ……心配ですわ。ゼクードってすぐ調子にのってカッコつけたがりますもの」

 

 すると隣でフランベールも頷く。

 

「ね。まぁ今回はレミーとグロリアも側にいるから大丈夫だとは思うけど」

 

「……カーティスお前。お父さんの戦いが見たかっただけだろ?」

 

 カティアが探りを入れると「はい! そのとおりです!」と元気いっぱいな息子の返事が返ってきた。

 

「す、素直だな」

 

「ずっと憧れて、目標にしていた人ですから。この戦い……目に焼き付けます」

 

「ふふ……そうだな。それがいい。ガッカリはしないさ。お父さんは……ゼクードは強い」

 

「はい!」

 

 カーティスは望遠鏡でゼクードの背を追い続ける。

 

「ゼクードくん妙に張り切ってたよね?」

 

「何かあるのですわ。カーティスは何か知ってまして?」

 

 言われて思い当たるものがあったらしく、カーティスは望遠鏡から目を離してローエとフランベールを見た。

 

「ええ。なんでも父さんは『勝ったらグロリアとレミーがデートしてくれる』とか言ってました」

 

 その一言でローエ・カティア・フランベールは止まった。

 しかしすぐ三人は揃って溜め息を吐いて口を開く。

 

「娘とデートぉ? あの馬鹿者め」

「グロリアとレミーを応援しますわ」

「グロリアー! レミー! 頑張ってーっ!」

 

「え、あの……父さんの応援は……?」

 

「お前がやってやれ」っとカティア。

 

「あ、はい! 父さん! 頑張ってください!」

 

 結局、カーティスしかゼクードを応援していなかった。

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