【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第182話【二つ柱】

 しばらく泣いて、そして落ち着いて、カティアとレィナは身体を離した。

 カティアはこれまでの事をレィナに説明し、なぜ自分が若い姿のままなのかも教えた。

 

「氷漬けにされて18年も!?」

 

 レィナの声は表通りを歩く市民の目を一瞬集めた。

 それに気付いたレィナは「ぁ……」っと冷静になり、頬を赤らめながらカティアを見返す。

 

「……私も信じ難いことなのだが、大きくなったカーティスたちを見れば、認めざるを得ん」

 

 隣に立つ息子と娘らを見やりカティアは言った。

 すると先頭のグリータが口を開く。

 

「カティアさん。今は国王さまの元へ」

 

 言われたカティアは頷き、レィナに片手を振る。

 

「すまないレィナ。また後でな」

 

「はい! 待っています!」

 

「あ、あの! レィナさん!」

 

「あ、ローエさん!」

 

「リーネは元気ですの? それだけ聞かせてほしいですわ」

 

「大丈夫です。リーネは元気ですよ。ローエさんのこと、伝えて待ってますね」

 

「ぁあ……よかった。ありがとう。必ず会いに行きますわ!」

 

 ローエを安堵させたレィナは、彼女の後ろにいるフランベールにも気付いた。

 

「フランベールさん」

 

「!」

 

「リリーベールさんもお元気です。リーネと同じく伝えて待っていますね」

 

「ありがとうレィナさん。必ず会いに行きます。怒らないでって言っておいてほしいです」

 

「了解しました」

 

 敬礼するレィナと別れ、俺たちは城に向かう。

 

 レィナちゃん【可愛い】から【綺麗】になってたなぁ。

 大人の色気が出てた。さすがカティアの妹である。

 姉に負けず劣らずの美人だ。とても30代に見えないし。

 

 この分だとリーネちゃんも凄い美人になってそうだな。

 今から会うのが楽しみ──いや、ちょっと怖いな……。

 

 リーネちゃんは、今さら帰還した俺たちをどう思うだろ?

 あれだけ心配してくれて、結局、本当に18年も帰って来れない事態になってしまったわけだし。

 

 なんて言い訳すればいいのか。

 殴られる覚悟はしておかないとな……

 

「グリータ団長。国王さまはお元気ですの?」

 

 俺がリーネにする言い訳を考えてる時に、ローエは国王の話題を振ってきた。

 問われたグリータは顔を曇らせる。

 

「いえ……もはやご老体で、今では床にふせてます」

 

「病ですの!?」

 

「そうです。陛下ご自身、かなりの御年齢ですから……」

 

「そう……ですの」

 

 ローエの顔が暗くなる。カティアとフランベールも。

 頼もしい名君だった国王が、今はもう老体で床にふせている。

 人間ならば仕方のないことだが、そうか……あのお方も歳なのか……。

 

 ディザスタードラゴンの時、誰よりも強い人類のリーダーだった国王。  

 あの方が居たから俺も、みんなも、最後まで諦めずに戦えたのに。

 

 別れが近いと思うと、なんだか胸が苦しくなる。

 ……いや、やめよう。縁起悪い。

 

「だから陛下にもしもの事がある前に、お前が戻ってきて良かったよゼクード。陛下は誰よりもお前を頼りにしていたからな」

 

「俺だって、誰よりも陛下を頼りにしてたよ」

 

「そうか。今お前と陛下は市民の間では【エルガンディの二つ柱(ばしら)】って讃えられているんだぜ」

 

「二つ柱?」

 

「過去の武勇伝がそうなったんだ。とりあえずしっかり顔を見せてやれよ。きっと喜ぶぜ」

 

「そうだな……ぁ、いや、ですね」

 

 敬語を忘れていて思わず直すとグリータは笑った。

 

「お前がオレに敬語使うの気持ち悪いな」

 

 まったくだ。

 でも仕事ではちゃんとしないとカティアに怒られる。

 

「グリータ団長。陛下の跡継ぎは決まっているんですか?」

 

 フランベールが聞き、グリータは頷く。

 

「ええ。跡継ぎは陛下のご子息であるアスレイ王子が継ぐことになっていますよ」

 

 アスレイ王子……名前くらいは聞いたことあるけど、会ったことないな。

 

「これから我々の新しい主君になるお方。陛下の後に挨拶に行きましょう」

 

「そのアスレイ王子はどんな方なのです?」

 

 気になったので俺は聞いた。

 次の主君となれば無視はできない。

 

「とても聡明なお方だ。これ以上にない次期国王だよ」

 

「それを聞いて安心したよ」

 

 

 そしてエルガンディの主城についた。

 謁見許可の受付はグリータが直接取り計らってくるとのこと。

 彼を見送りホールで待機すること数分。

 ようやくホールの奥からグリータが戻ってきた。

 

「ゼクード。陛下との謁見許可が出た」

 

「ホントか!」

 

「ああ。お前の名前を出したら一発だった。場所は陛下の寝室だ。ゼクード一人で来てくれだと」

 

「俺だけ?」

 

「仕方ない。陛下は安静中だからな。ほら、陛下が御待ちだ。早く行ってこいよ」

 

「わかった。みんな、行ってくるよ」

 

 俺は家族ローエ・カティア・フランベール・カーティス・グロリア・レミーベールに手を振ってから足を進めた。

 

 

 城の廊下を進み、国王の寝室前まで来た。

 ノックしようと拳を握るが、久しぶりの対面ゆえにドキドキしてしまう。

 

 まずなんて言おうか?

 迷うな……

 とりあえず顔を見せて、いろいろ説明して、それから……

 

 ……よし。

 

 俺は意を決して扉をノックした。

 

 コンコン……

 

「国王さま! 俺です!」

 

「入れ」

 

「失礼します」

 

 久しぶりに聞いた国王の声に感動しつつ、俺はドアノブを回して扉を開く。

 中に入れば、天蓋(てんがい)つきのベッドで横になる国王の姿があった。

 

「ゼクード!」

 

 俺を見るなりベッドから飛び起きて来た。

 

「国王さま! お久しぶりです!」

 

 俺も国王の元へと歓喜のままに歩み寄る。

 国王はベッドから降りて来て、俺の両肩を掴む。

 

「お前! 本当に何も変わってないな!」

 

 驚きと歓喜の両方を含ませた顔で国王は言った。

 当の国王はすっかりシワの多い顔になっており、最後に会ったあの日から18年の月日が経ったのだと再確認させられた。

 

「ええ、それが……」

 

「いや、よい。グリータから事情は聞いている。雪のドラゴンに18年も氷漬けにされたらしいな」

 

「はい」

 

「よくそれで生還できたものだ。また会えて嬉しいぞ。ゼク……ぶふぉ!」

 

 突如!

 国王が吐血した。

 

「国王さま!?」

 

 ぐらりと姿勢が崩れ、倒れそうになる国王を俺は支えた。

 何度と何度も咳き込み、また血を吐いた。

 

「国王さましっかり! 誰か! 誰か来てくれ!」

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