【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第183話【即時決定】

「いやぁ~、死ぬかと思ったな」

 

 とぼけた口調で国王が言った。

 吐血して倒れた国王は、その後すぐ駆けつけた常駐の医師によって落ち着き、今はこうして寝室のベッドで横たわっている。

 

「それこっちのセリフですよ父上!」

 

 俺の前に立つ一人の男性が怒った。

 青い髪と青い瞳。そして整った精悍な顔。

 服は白いサーコートを足らし、青い鎧を着ている。

 

 どう見ても騎士なのだが、実は彼こそが王子。

 ちょうど様子を見に来て吐血したタイミングと鉢合わせた。

 

「大丈夫だ()()()()。少し吐いたら楽になった」

 

 そう、次期国王であるアスレイ王子だった。

 

「いや吐くこと事態が危ない状態なんですよ!」

 

 父のとぼけた態度にまたまた怒るアスレイ王子だが、当の国王は右から左へ。

 

「んん、そんなことより紹介しよう。ゼクードよ。こやつが次期国王だ」

 

 言われてアスレイ王子が俺の方に振り向いてきた。

 俺は失礼の無いよう咄嗟に跪く。

 

「ゼクード・フォルスと申します、殿下。御拝謁賜り、大変光栄に思います」

 

「おお! あなたがあのレミーベール嬢の!」

 

 さっきまで怒っていたアスレイ王子の口調が急に柔らかくなった。良かった。怒りっぽい人なのかと思った。

 というか何故にレミーベールの名前を?

 

「私はアスレイ・エール・エルガンディと申します。貴公の伝説はかねがね伺っております。過去の英雄にこうして御会いできて光栄です!」

 

 面を下げているのでアスレイ王子の顔は見えないが、声が弾んでいるのだけは分かった。

 本当に嬉しそうに言ってくれている。

 

「身に余る御言葉です殿下。このゼクード……英雄の名に恥じぬよう【エルガンディ】にこの身を懸けて尽くす所存です」

 

「万の騎士を得た気分です。頼りにしていますゼクード殿」

 

「はっ!」

 

「面を上げて、楽にしてください」

 

 言われて俺はようやく顔を上げて立った。

 すると向かいのアスレイ王子が俺の顔をマジマジと見だす。

 どうしたんだろ?

 

「……それで、あの……失礼ですが、ゼクード殿はおいくつですか?」

 

「え?」

 

「あ、いえ……なんと言いますか、その、あのレミーベール嬢のお父上にしては、あまりにも若すぎるというか……」

 

「あ、それはですね──」

 

 俺はもう何度もした説明を、アスレイ王子に一文字の違いもなく伝えた。

 

「じゅ、18年も氷漬けに!?」

 

「はい。運よく生きていました」

 

「そんな事が……なるほど。それでゼクード殿はそんなに若い姿のままなのですね」

 

「はい。まさか息子たちに歳を越されるとは思いませんでした」

 

「……心中、御察しします」

 

「いえいえ! そこまで悲観はしてませんから」

 

「ゼクード殿……」

 

「生きてまた会えた。それだけで幸運だと思っています。妻たちも、息子たちも、きっと同じ気持ちでしょう」

 

「そうですか……」

 

「ゼクード」

 

 呼んできたのは国王さまだった。

 

「国王さま?」

 

「私も……また会えて嬉しいぞ。戦友(とも)よ」

 

「自分もです。国王さま」

 

 お互いに笑い合い、俺は敬礼した。

 そろそろ戻ろう。

 なんか涙が出そうだから。

 

「それでは、失礼します」

 

「あ! 待ってください!」

 

「はい?」

 

 アスレイ王子に呼び止められて、俺はなんとか涙を引っ込めた。目は赤くなってそうだがどうしようもない。

 

「ゼクード殿! 不躾で申し訳ないのですが……騎士として、私と手合わせしてください!」

 

「え!? 手合わせ!? なぜ急に!?」

 

「私も次期国王として剣の腕を高めておきたいのです! 相手が伝説の黒騎士なら不足はありません!」

 

 いや不足はありませんって言われても……

 

「それは面白そうだな」

 

 なんか国王が言ってる!

 

「こ、国王さま!?」

 

「伝説の黒騎士と戦えるという御題目でトーナメントでもしてみるか。お前の事を知らない若い世代にお披露目にもなるだろう」

 

 えー、面倒くさい……とは言えんよなぁ。

 

「父上! 私はゼクード殿と手合わせしたいだけであって、そんなトーナメントなんて……」

 

「やれ」

 

「あ、はい……」

 

 アスレイ王子はあっさり押しきられてしまった。

 父強しである。

 

 

 俺はその後、ホールで待たせていたグリータと家族と合流した。

 事の成り行きを話ながら街道へ出た。

 

「──というわけで練兵場でトーナメントが開催されることになっちゃった」

 

「参加します」

 

「いや食いつくの早いなカーティス!」

 

「父さんと戦えるなら当然です」

 

 めっちゃ目を輝かせてる。

 そこまで俺と戦えるのが嬉しいのか。

 

 息子との決闘か……

 

 そういえばいつだったかな?

 練兵場でカティアと手合わせしたのは。

 次はそのカティアの息子カーティスと手合わせするなんて、なかなかロマンチックだな。

 

 ちょっとヤル気が出てきた。

 

「ふ……私も身体が万全なら参加するのだがな。カーティスと手合わせしてみたい」

 

 カティアがお腹を撫でながら心底残念そうに言った。

 するとカーティスが慌てて首を振る。

 

「や、やめてください。母に剣を向けるなんて出来ません」

 

「わたくしにも?」っとローエ。

 

「当然です」

 

「わたしにも?」っとフランベール。

 

「当たり前です」

 

「アタシはアタシは?」っとグロリア。

 

「お前は……その……」

 

 カーティスは眉間にシワを寄せて悩みだした。

 

「なんで悩むわけそこで! 即答しなさいよ!」

 

「うるさい」

 

 そんなカーティスとグロリアのやりとりにまた笑いが起きた。

 その談笑の中、グリータが俺の近くに来て小声で語りかけてきた。

 

「ゼクード」

 

「うん?」

 

「城が一瞬騒がしかった気がするが、何かあったのか?」

 

「いや、ちょっと国王さまが血を吐いた」

 

「そうか……」

 

「やっぱり……もう長くはないのかもしれないな」

 

「だから見たいのかもしれないぜ?」

 

「なにが?」

 

「お前とカーティスの試合だよ。それを見て、安心したいんじゃないかな?」

 

「安心したいって……関係あるのか? 騎士と騎士の試合なんて、国政にまったく関係ないぞ?」

 

「あるよ。きっと陛下はアスレイ王子のことはそんなに心配してないんだ。本当に心配なのは次の世代の騎士たちだ。そのトップであるカーティスが、お前とどこまでやり合えるのか、それを見たいんだと思う」

 

 あんな咄嗟にトーナメントを決めた国王さまに、そこまでの考えがあるとは……いや、あの方なら有り得る。

 頭の回転は早い人だから。

 

「騎士の強さは王国の生命線だ。そこを重視するのは当然だろう? ゼクード」

 

「そうだな」

 

 それならやるしかないかトーナメントを。

 どのみち俺もカーティスとやってみたい気持ちはある。

 今まで同じ騎士で、俺の本気に耐えられた騎士はいない。

 

 あのカティアも、正直相手にならなかった。

 だがカーティスは違うだろう。

 俺が本気を出しても良い勝負になりそうだ。

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