【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「いやぁ~、死ぬかと思ったな」
とぼけた口調で国王が言った。
吐血して倒れた国王は、その後すぐ駆けつけた常駐の医師によって落ち着き、今はこうして寝室のベッドで横たわっている。
「それこっちのセリフですよ父上!」
俺の前に立つ一人の男性が怒った。
青い髪と青い瞳。そして整った精悍な顔。
服は白いサーコートを足らし、青い鎧を着ている。
どう見ても騎士なのだが、実は彼こそが王子。
ちょうど様子を見に来て吐血したタイミングと鉢合わせた。
「大丈夫だ
そう、次期国王であるアスレイ王子だった。
「いや吐くこと事態が危ない状態なんですよ!」
父のとぼけた態度にまたまた怒るアスレイ王子だが、当の国王は右から左へ。
「んん、そんなことより紹介しよう。ゼクードよ。こやつが次期国王だ」
言われてアスレイ王子が俺の方に振り向いてきた。
俺は失礼の無いよう咄嗟に跪く。
「ゼクード・フォルスと申します、殿下。御拝謁賜り、大変光栄に思います」
「おお! あなたがあのレミーベール嬢の!」
さっきまで怒っていたアスレイ王子の口調が急に柔らかくなった。良かった。怒りっぽい人なのかと思った。
というか何故にレミーベールの名前を?
「私はアスレイ・エール・エルガンディと申します。貴公の伝説はかねがね伺っております。過去の英雄にこうして御会いできて光栄です!」
面を下げているのでアスレイ王子の顔は見えないが、声が弾んでいるのだけは分かった。
本当に嬉しそうに言ってくれている。
「身に余る御言葉です殿下。このゼクード……英雄の名に恥じぬよう【エルガンディ】にこの身を懸けて尽くす所存です」
「万の騎士を得た気分です。頼りにしていますゼクード殿」
「はっ!」
「面を上げて、楽にしてください」
言われて俺はようやく顔を上げて立った。
すると向かいのアスレイ王子が俺の顔をマジマジと見だす。
どうしたんだろ?
「……それで、あの……失礼ですが、ゼクード殿はおいくつですか?」
「え?」
「あ、いえ……なんと言いますか、その、あのレミーベール嬢のお父上にしては、あまりにも若すぎるというか……」
「あ、それはですね──」
俺はもう何度もした説明を、アスレイ王子に一文字の違いもなく伝えた。
「じゅ、18年も氷漬けに!?」
「はい。運よく生きていました」
「そんな事が……なるほど。それでゼクード殿はそんなに若い姿のままなのですね」
「はい。まさか息子たちに歳を越されるとは思いませんでした」
「……心中、御察しします」
「いえいえ! そこまで悲観はしてませんから」
「ゼクード殿……」
「生きてまた会えた。それだけで幸運だと思っています。妻たちも、息子たちも、きっと同じ気持ちでしょう」
「そうですか……」
「ゼクード」
呼んできたのは国王さまだった。
「国王さま?」
「私も……また会えて嬉しいぞ。戦友(とも)よ」
「自分もです。国王さま」
お互いに笑い合い、俺は敬礼した。
そろそろ戻ろう。
なんか涙が出そうだから。
「それでは、失礼します」
「あ! 待ってください!」
「はい?」
アスレイ王子に呼び止められて、俺はなんとか涙を引っ込めた。目は赤くなってそうだがどうしようもない。
「ゼクード殿! 不躾で申し訳ないのですが……騎士として、私と手合わせしてください!」
「え!? 手合わせ!? なぜ急に!?」
「私も次期国王として剣の腕を高めておきたいのです! 相手が伝説の黒騎士なら不足はありません!」
いや不足はありませんって言われても……
「それは面白そうだな」
なんか国王が言ってる!
「こ、国王さま!?」
「伝説の黒騎士と戦えるという御題目でトーナメントでもしてみるか。お前の事を知らない若い世代にお披露目にもなるだろう」
えー、面倒くさい……とは言えんよなぁ。
「父上! 私はゼクード殿と手合わせしたいだけであって、そんなトーナメントなんて……」
「やれ」
「あ、はい……」
アスレイ王子はあっさり押しきられてしまった。
父強しである。
※
俺はその後、ホールで待たせていたグリータと家族と合流した。
事の成り行きを話ながら街道へ出た。
「──というわけで練兵場でトーナメントが開催されることになっちゃった」
「参加します」
「いや食いつくの早いなカーティス!」
「父さんと戦えるなら当然です」
めっちゃ目を輝かせてる。
そこまで俺と戦えるのが嬉しいのか。
息子との決闘か……
そういえばいつだったかな?
練兵場でカティアと手合わせしたのは。
次はそのカティアの息子カーティスと手合わせするなんて、なかなかロマンチックだな。
ちょっとヤル気が出てきた。
「ふ……私も身体が万全なら参加するのだがな。カーティスと手合わせしてみたい」
カティアがお腹を撫でながら心底残念そうに言った。
するとカーティスが慌てて首を振る。
「や、やめてください。母に剣を向けるなんて出来ません」
「わたくしにも?」っとローエ。
「当然です」
「わたしにも?」っとフランベール。
「当たり前です」
「アタシはアタシは?」っとグロリア。
「お前は……その……」
カーティスは眉間にシワを寄せて悩みだした。
「なんで悩むわけそこで! 即答しなさいよ!」
「うるさい」
そんなカーティスとグロリアのやりとりにまた笑いが起きた。
その談笑の中、グリータが俺の近くに来て小声で語りかけてきた。
「ゼクード」
「うん?」
「城が一瞬騒がしかった気がするが、何かあったのか?」
「いや、ちょっと国王さまが血を吐いた」
「そうか……」
「やっぱり……もう長くはないのかもしれないな」
「だから見たいのかもしれないぜ?」
「なにが?」
「お前とカーティスの試合だよ。それを見て、安心したいんじゃないかな?」
「安心したいって……関係あるのか? 騎士と騎士の試合なんて、国政にまったく関係ないぞ?」
「あるよ。きっと陛下はアスレイ王子のことはそんなに心配してないんだ。本当に心配なのは次の世代の騎士たちだ。そのトップであるカーティスが、お前とどこまでやり合えるのか、それを見たいんだと思う」
あんな咄嗟にトーナメントを決めた国王さまに、そこまでの考えがあるとは……いや、あの方なら有り得る。
頭の回転は早い人だから。
「騎士の強さは王国の生命線だ。そこを重視するのは当然だろう? ゼクード」
「そうだな」
それならやるしかないかトーナメントを。
どのみち俺もカーティスとやってみたい気持ちはある。
今まで同じ騎士で、俺の本気に耐えられた騎士はいない。
あのカティアも、正直相手にならなかった。
だがカーティスは違うだろう。
俺が本気を出しても良い勝負になりそうだ。