【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
国王に挨拶済ませた。
いよいよ俺たちはグリータの案内で、会うのが怖いリーネとリリーベールの家に向かうことになったのだが……
「フラアアアアアアアアアアアアアアアアン!」
突如としてエルガンディ全体に大声が轟いた。
俺たちは揃ってビクつき驚愕した。
路上を歩く市民たちも例外なく。
「え! この声……姉さん!」
声の主に気づいたらしいフランベールが言った。
その視線は声の響いた方角へと向けられる。
俺もフランベールの視線に習って目を動かしたら、そこには路上に舞う土煙が見えた。
誰かが猛烈な勢いで走ってきてる。
その誰かは銀の長髪を靡かせ、袖と裾の長い婦人服を着て爆走してきた。
赤い目をしているその誰かはフランベールの姉リリーベールで、何故かローエに向かって飛び付いた!
「フラン!」
「きゃっ!? ちょ! なんですの!?」
「バカ! このバカ! バカ! バカッ! 今まで! 今までなにやってたのよ! この大バカッ!」
完全に抱きつく相手を間違えているリリーベールは、それは凄まじい量の涙を流していた。
まさに滝と称するレベルに。
あまりの涙ゆえに前が見えずローエに抱きついてしまったようだ。
リリーベールがどれだけフランベールを思っていたか。
それが分かる量の涙。
その涙に気づいたローエはリリーベールを押し退けようとしても出来ず、抱かれるがままになった。
力いっぱいリリーベールはローエを抱き締める。
バカバカと連呼しながらローエの頭を撫でていた。
ローエは気持ち悪そうに顔を引きつらせ、フランベールに助けの視線をよこす。
そのローエの救難にフランベールはすぐ動いた。
「あの……姉さん……」
「何よ! 散々心配かけて! 今さら言い訳!?」
怒鳴りながらもローエを抱き締めて離さない。
ものすごい妹愛を感じるのだが、抱き締めている相手が完全に犬猿の仲のローエで台無しだ。
リリーベールとローエはメチャクチャ仲悪かった気がするのだが、そんな二人のこんな光景を見られるのはある意味レアなのかもしれない。
ローエはこの上なく迷惑そうだが。
「いや、姉さん……それ、ローエさん」
「は?」
リリーベールはローエを撫でていた手を止めて、そしてようやく目の前に抱き締めているはずのフランベールがいることに気づいた。
「あれ、フラン? え? じゃあ……」
自分が抱き締めている人物を確かめるため、密着していた身体を離した。
そこでようやくリリーベールとローエの、目と目が合う。
それはもう一瞬の出来事で、リリーベールの顔がゴミを見るような顔になった。
「邪魔」
まるでローエをゴミのようにポイっと捨てるように横へ追いやった。
そして何事もなく「フラン! あんたね!」と言いながらフランベールの元へツカツカ歩いていく。
「あの女ブッ潰してよろしくて!?」
「「まぁまぁ落ち着け」」
俺とカティアが宥めると、またも背後から別の足音が聞こえてきた。
「お姉様!」
今にもリリーベールに殴り掛かりそうだったローエは、その声でピタリと止まった。
俺にも聞き覚えのあるその声の主は。
「リ、リーネ!」
ローエが驚愕した。
リーネは姉ローエと同じくらいの長髪になっており、羽飾りもつけている。
彼女もまた緑の衣服を着こなし、派手さはないが年齢相応の落ち着きのある見た目をしていた。
リーネは両手を口に当て、歓喜して涙を溢れさせた。
「ぁぁ……ぁあ……本当に、本当にお姉様だ! レィナの言った通りだわ! お姉様ああああ!」
リーネは叫びながらローエの胸に飛び込んだ。
今度は最愛の妹が相手。ローエは全身全霊で彼女を受け止めた。
そしてしっかりお互いの体温を感じ合うよう抱き締め合う。
「リーネ! 会いたかったですわ!」
リーネの頭を撫でながらローエも涙を流した。
「ワタシもよお姉様! 良かった無事で! 良かった!」
「心配かけてごめんなさいリーネ……本当に、ごめんなさい!」
「いいの! いいのよ! 生きててくれたらそれで……!」
「リーネ……」
もはやそこは姉妹の世界だった。
何者にも邪魔はできない感動の再会。
リリーベールとフランベールも奥で抱き合っている。
目前でもリーネとローエが抱き合う。
本当に嬉しそうな二つのペアに、見ていた俺も貰い泣きしてしまった。
しかも幸いなことに、グロリアとレミーベールも貰い泣きしていた。
おかけで男の俺一人が泣くという恥ずかしい事態は避けられた。
カティアとカーティスはその光景に微笑み、グリータもまたリーネの喜ぶ姿を見て笑っていた。
路上のど真ん中で、行き交う人々は不思議そうに俺たちを見るが、今の俺たちには些細な事だった。