【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第185話【大恩人】

 後から聞いた話では、グリータ・ロードリーはどうやら貴族になったらしい。

 今の【エルガンディ王国】は中央の城を中心にして、東西南北4つの領地に分けられているそうだ。

 

【東の領地】

【西の領地】

【南の領地】

【北の領地】

 

 グリータが担当しているのは【南の領地】。

 城壁の門がある大事な守りの部分だ。

 彼の所有する騎士部隊は【レィナ隊】を筆頭に【カーティス隊】や【レグナ隊】【リイド隊】などがいる。

 

 ドラゴン襲撃の際、門を守る精鋭揃いとなっている。

 ことレグナとリイドという二人の隊長に関しては

【レグナ】はレィナとグリータの息子で

【リイド】はリーネとグリータの息子らしい。

 

 強い騎士隊を複数所持し、領地さえも任され大出世したグリータ。

 そんな彼の家に招かれたのだが、それはもはや豪邸。

 一般人の住む小さな家ではない。

 

 ある意味で最前線になる領地のせいか、グリータの豪邸は徹底的に石で作られていた。

 貴族の大好きなレンガなどは使われていない。

 

 よく周りを見れば、他の民家も石作りが徹底されていた。

 できるだけ頑丈な街作りになっている。

 凄いな。たった18年でここまで仕上げられるもんなんだな。

 

「出世したなグリータ」

 

「ほんとだよ。オレが領地持ちの貴族になるなんて思ってもなかった。ガイスさんも【北の領地】を治めてるんだぜ」

 

 あのガイスさんまで貴族に。

 凄いなみんな。出世しまくりじゃん。

 どうやら当時の実力者を貴族として選び、4つの領地を治めさせているんだな。

 

 てことは俺も氷漬けにされてなかったら、どれかの領地を任されていた可能性があるんだな。

 重そうだ。グリータもよくやってるな本当に。

 

 それはともかく俺はグリータ・レィナ・リーネ・ガイス・リリーベールに、どうしても伝えなければいけないことがある。

 それはローエ・カティア・フランベールも承知している。

 

 俺はそのことをグリータに話し、家にお邪魔してガイスを呼んでもらった。

 

 

 さすが豪邸。

 中にあるホールは11人の団体をものともしない広さで、木製のテーブルやイスなどが綺麗に並んでいる。

 

 おそらくリーネが手入れしているのだろう。

 本当に綺麗な部屋だ。

 空気もしっかり換気されていて気持ちいい。

 

「待たせたな」

 

 扉を開けて入ってきたのはガイスだった。

 18年ぶりの再会である。

 

「ガイスさん! お久しぶりです!」

 

「ゼクード隊長!」

 

 ガイスは小皺の増えた顔で目を見開いた。

 俺とガイスはすぐに握手する。

【アークルム】出身の彼と……

 今思えば不思議な縁だな、と思う。

 彼とは。

 

「無事でよかった。本当に……歳を取っていないんだな」

 

「そうなんです。ご心配を御掛けしました」

 

 理由は聞かされているだろうから、俺はあえて説明しなかった。

 ガイスは俺の言葉に首を振る。

 

「いや、いいんだ。本当に無事で良かった」

 

「ありがとうございます」

 

 頭を下げながら言うと、俺の前にグリータが立った。

 

「さぁ、これで全員揃ったぜ。ゼクード」

 

 言われて俺は頷き、前を見た。

 目前に並ぶのは【ロードリー家】のグリータ・レィナ・リーネ。

 そして【アルフェルド家】のガイスとリリーベール。

 

【フォルス家】は俺を先頭にして背後にローエ・カティア・フランベールが並び、その後ろにはカーティス・グロリア・レミーベールが並んだ。

 

 俺は【フォルス家】の代表として、まっすぐにグリータたちを見た。

 集まってくれた彼らに敬意を表して、しっかりとまっすぐに。

 

 ──重い沈黙が、ホールを包む。

 

 誰もが俺の言葉を待っている。

 俺は意を決して、ゆっくりと口を開いた。

 

「この場を借りて、皆さんにお伝えしたい事があります」

 

 こちらの真剣さを伝えるために、冗談ではない声音で語る。

 みんなの視線が俺に集中し、全身が重くなる感覚を覚えた。

 それでも続ける。

【フォルス家】の大黒柱として、これだけは絶対に伝えなければいけない。

 彼ら──グリータらは……大恩人なのだから。

 

「18年もの間、息子たちを見てくれて、こんなにも立派に育ててくれて、本当に……本当にありがとうございます!」

 

 姿勢を正し、まっすぐに頭を下げた。

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

 背後で妻たちも頭を下げ、感謝の声が続く。

 

「このご恩は一生! 忘れません!」

 

 氷漬けになり18年。

 俺たちがカーティスたちを育てた期間はたったの一年とちょっと。

 

 そのたったの一年とちょっとでも、子育ての大変さは身に染みて理解していた。

 変な話し……仕事をしていた方が楽なくらいに。

 それくらい育児は大変なのだ。

 

 子供を育てるというのは、並大抵の事ではない。

 それを自分たちの詰めの甘さで氷漬けにされ、18年もグリータたちに押し付けてしまった。

 

 ……その責任はもう、今さら取れない。

 俺たちはただどうしようもなく、グリータらに感謝するしかなかった。

 

 自分の命を救われるより、重い恩なのだ。

 感謝しても仕切れない。

 頭を下げても下げたりない。

 

 グリータらがカーティスたちを立派に育ててくれたから、俺たちは今ここにいる。

 カーティスたちが居なかったら……浜辺で目覚めても俺たち【フォルス家】は全滅していたはずだから。

 

「別にいいわよそんなの。身内なんだし、当たり前じゃない」

 

 強い口調で言い切ったのはリリーベールだった。

 

「リリーベールさん……」

 

「私には子育てしかやることなかったから。良い暇潰しになったわよ」

 

「姉さん……ありがとう。本当に」

 

「良いのよフラン。その子育てでリーネたちとも仲良くなれたもの。ね?」

 

 リリーベールがリーネにウインクした。

 リーネは笑顔で頷く。

「はい! リリーさんは友達です!」

 

「どっかの姉と違って良い子なのよねぇ~、リーネって」

 

 ワザとらしくチラッとリリーベールはローエを見た。

 ローエは一瞬、砂を噛むような複雑な顔になった。

 フランベールの姉で、しかもグロリアの育ての親で、しかもリーネの友達という三連コンボに、ローエはフゥと息を漏らす。

 

「………………あなたには、頭が上がりませんわ」

 

 小さく笑って、恩人であるリリーベールにはそう返した。

 ローエのその反応に満足したらしいリリーベールは、それこそ一変して優しい顔になった。

 

「あとでグロリアのこと、いろいろ聞かせてあげるわ」

 

 妹のフランベールに向けるような優しい声音で言われ、ローエは虚を突かれたように目を丸くした。

 しかしリリーベールは嫌味ではなく本心で言ってると理解し、微笑んで頷く。

 

「ありがとうですわ」

 

「よーし! 辛気くさいの終わり! せっかくみんな揃ったんだ。今日は家でパーティーだ!」

 

 突如としてグリータが手を叩いて公言した。

 息の詰まるこの場を我慢していたようだ。

 

「いえーい! パーティー!」っとグロリアやレミーベールがはしゃぐ。するとカーティスまで。

 

「おじさん! 料理はオレに任せてください!」

 

「お? 珍しいなカーティス。自分から名乗り出るなんて」

 

「帰還したらご馳走すると約束しましたから。父さんと母さんたちに」

 

「カーティスの手料理ですわ!」

「楽しみだ!」

 

 ローエとカティアもテンションを上げ始めた。

 

 あぁ、なんかいいなこの空気。好きだ。

 

「よーし。じゃあガキどもは買い出しに行ってこい。オレたちはパーティーの準備だ!」

 

 グリータの指示にグロリアたちが「オーッ!」と掛け声を発する。俺もそれに混じってグロリアたちと買い出しに行こうとするが、首をガシッと掴まれた。

 

「おいコラ待てゼクード! なんでお前まで買い出しに行くんだよ!」

 

「いや俺も年齢的にガキだし……」

 

「うるせぇこっち手伝えバカ野郎」

 

 そして俺はものの見事にグリータにコキ使われた。

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