【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第188話【勘違い】

 え、誰なんですかアレ!?

 あんな綺麗な人……なんで今まで気付かなかったんでしょうか?

 

 おかしい……ライバルになりそうな美人は、極力頭に入れてあるはずなのに。

 

 カーティスさんと、あのポニーテールの人、凄く楽しそうに笑い合って歩いてる!

 

 な、なんて幸せそうな……!

 

 いや、ホントに、誰なんですかあの女は!?

 

 オフィーリアは人混みを避けながら進み、カーティスの元へと近づいた。

 声が聞こえる距離までなんとか詰めると。

 

「──いよいよ妊娠の症状が出始めた。すまないなカーティス。しばらく迷惑を掛ける」

 

 ん?

 

 いまなんて?

 

 にんしん? 

 

 ニンジンの聞き違いでしょうか?

 

 いや間違いなく聞き違いですね。

 いきなりそんな、ねぇ?

 

「いえ、気にしないでください。おめでたい事なんですから」

 

 オ……

 

 オ……オ……

 

 オメデタイコトナンデスカラ?

 

「名前も考えておかないとな。何がいいと思う?」

 

「そうですね……男ならガレッド。女ならカレンティアなんてどうですか?」

 

 名前……男なら……女なら……

 か、完全に子供の話をしている。

 

 聞き違いじゃない……

 

「ほぅ……良いネーミングセンスだなカーティス。それでいこう」

 

「ありがとうございます。まぁ、無事に生まれてくれればそれで良しですが」

 

「そうだな」

 

 無事に生まれてくれれば……

 

 カシャン! とオフィーリアは、カーティスに渡すはずだったお弁当を落としてしまった。

 次いでボタボタと大粒の涙が地面に落ちた。

 

 周りにいた市民たちが驚き、オフィーリアの顔を覗き込む。

 

「ぉ、おい嬢ちゃん……大丈夫か?」

「あの、大丈夫ですか?」

 

 そんな気遣いの言葉は耳に入らず、オフィーリアは踵を返して走り出した。

 

 やっとわかった。

 カーティスさんがわたしを相手にしてくれない理由。

 

 最初から居たんだ。恋人が。

 いや恋人なんかじゃない。もう妊娠してる。奥さんだ。

 結婚してたんだ。

 

 なんで……言ってくれなかったのだろう?

 なんで。

 

 もっと早く言ってくれれば、わたしも──

 

 走り去るオフィーリアに、カーティスが気づくことはなかった。

 

 

 ……おかしいな。

 いつもならこの時間帯に()()()が来るはずだが……

 

 カティアと商店街を回りながら、ふとカーティスは思い出した。

 

 朝陽が昇ったこの時間帯には、いつもオフィーリアが頼んでもないお弁当を渡しに来る……はずなのだが、今日はどうしたのだろうか?

 

 珍しい。

 

 オレが帰還したことをまだ知らないのかもしれない。

 ……いや、あいつに限ってそれはないか。

 あいつはオレの追跡者だから、そんな情報を逃したりしないはず。

 

 まさか……風邪でも引いたのか?

 

 だとしたら……

 

「カーティス?」

 

 母カティアに顔を覗き込まれ「ぁ……」とカーティスは我に返った。

 

「どうかしたのか?」

 

「いえ……ちょっと」

 

 もし風邪だったら……心配だな。

 

「母さん……あの」

 

「うん?」

 

 カーティスはカティアに言った。

 

 

 俺は妻二人と娘二人を連れたスーパーハーレム状態で【南の領地】にある広場へ来ていた。

 そこには掲示板が有り、人だかりが出来ている。

 

 何事だろう? と俺は耳を済ませた。

 

「おい見ろよ。明日トーナメントだってよ」

 

「伝説の黒騎士と戦えるチャンス? 優勝者にはSSS級騎士の称号が与えられるって」

 

「伝説の黒騎士って、あれか? 過去にディザスタードラゴンを倒したって言う」

 

「そうそう。雪のドラゴンを倒したことでも有名だぜ。ほら、カーティスのお父さんだよ」

 

「え? でもその人って、帰って来なかったんじゃ?」

 

「カーティスが黒い鎧着て戦うだけじゃねぇの?」

 

「参加すりゃあ嘘か本当か分かるさ」

 

「え? おまえ参加すんの?」

 

「当たり前だろ? 優勝者になったらSSS級騎士になれるんだぜ? あのカーティスと同格になれるんだ。名を上げるチャンスだぜ!」

 

「お前らじゃ無理だね。第二のゼクード・フォルスはおれだ!」

 

「いーやオレ様だね。オレ様もハーレムを目指すんだ!」

 

 おーおー血気盛んな若者たちだね。

 でもハーレムはオススメしないぞ?

 うちのローエ・カティア・フランベールが奇跡のような仲良しだから成り立ってる。レィナちゃんやリーネちゃんもだ。

 

 並の女性たちではかなりのストレスにしかならないと思う。

 

「なんかゼクードくんの話ばっかりだね」

 

 ふて腐れるフランベールに、隣のローエは「まったくですわ」と面白くなさそうに髪を手で揺らした。

 

「わたくしたちの話は残ってませんの?」

 

 言われてみると確かに。

 ローエ・カティア・フランベールの話はいっさい出てこない。

 さっきの若者たちの会話にも。

 

「そう言われるとそうねぇ……なんでかしら?」

 

 困ったようにレミーベールが言ってグロリアを見た。

 当のグロリアは肩を竦める

 

「さぁ? お父さんが凄すぎてお母さんたちの話は誰もしないものね」

 

「んもぅ……わたくしたちだって頑張ってましたのに」

 

 ローエが不服そうに言う。

 でも気持ちは分かる。

 まるで俺しか活躍してないみたいになってるから。

 

 俺と共に戦って、彼女たちも命を賭けたんだ。

 ここは一つ、娘たちに母たちの活躍を知ってもらっておこう。

 

「そうだよなぁ……ディザスタードラゴン倒したのだって、本当はお母さん達だし」

 

「え!?」

「それ初耳なんだけど!?」

 

 やはりレミーベールとグロリアは驚き、この話題に食いついてきた。俺はニヤリと続ける。

 

「だろうな。ディザスタードラゴンを倒したのはお母さんたち三人で、その取り巻きのS級ドラゴン500匹を狩り尽くしたのもお母さんたちなんだ」

 

「ええええ!?」

「じゃあお父さん何してたの!?」

 

「俺はディザスタードラゴンから出てきた人型ドラゴンと戦ってた」

 

「え……たった一匹に!?」

 

 グロリアが唖然とした。

 隣のレミーベールも。

 

「メチャクチャ強かったんだよそいつ。俺の左目を潰したのもそいつなんだ」

 

 俺は潰れた左目を指差す。

 するとフランベールが口を開いてきた。

 

「レミー、グロリア。お父さんの名誉のために言うけど、お父さんがその人型ドラゴンを抑えてくれなかったら、わたし達は全滅してたのよ」

 

「え、うそ!? そんなに!?」

 

 レミーベールが驚愕し、ローエは頷く。

 

「間違いありませんわ。だから討伐数だけで見ないでほしいの。お父さんはわたくし達を守ってくれたのですわ。だからあれほどの戦果を上げることが出来ましたのよ」

 

 ありゃ……なんかローエたちの評価を上げようかと思ってたのに。

 俺が持ち上げられてる。

 どんな時でも旦那を立ててくれる良い妻たちである。

 

 ──刹那。

 今朝見たオフィーリアが俺の視線に入った。

 

 あれ?

 あの子は……

 

 少し遠いが、確かに見えた。

 しかも泣いていた。

 泣きながら走り去って行く。

 

 何かあったのだろうか?

 

「お父さん? どこ見てんの?」

 

 グロリアに言われ、俺は遠くを見ていた視線を娘に戻した。

 

「いや、ちょっと。グリータに聞きたいことがあったんだ。俺ちょっと離脱するよ」

 

「えー」っとローエたち四人が心底不満そうな顔をする。

 

 ぉ、俺が抜けるのそんなに嫌なの!?

 嬉しいけど、ちょっと今回はオフィーリアちゃんが気になる。

 もしかしたらカーティスに冷たいこと言われたのかもしれない。

 

 もしそうなら、カーティスに一言いわねばならない。

 女の子を泣かすのはさすがにダメだ。

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