【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
ゼクードの一回戦が終わった。
国王は練兵場を一望できる特等席でそれを眺めていた。
さすがはゼクードという他なかった。
18年氷漬けにされても腕は鈍ってはいなかった。
これなら安心だ。
アスレイの代でも、ゼクードは大きな力になってくれるだろう。
あとはカーティスとゼクードの戦いを見届けたい。
きっと死んでも記憶に残る戦いになるだろう。
せめてそれだけは見届けてから死にたいものだ。
「父上!」
席の後ろからアスレイがやってきた。
近衛騎士がサッと席にアスレイを誘導し隣に座らせた。
「おおアスレイ。どうだ? ゼクードは凄かっただろ?」
「す、凄かったです……何をされたか、まったく分かりませんでした……」
「うむ。分かったならよい。ゼクードはお前の大いなる力となるだろう」
「は……」
「私もな……あの男が居なければあの時、決断できなかった」
「え?」
「【エルガンディ】を一度棄てた時の話だ。ゼクードが居たから反撃の希望を持てた。だから私も国を棄てることができたんだ」
「そんなに……」
「アスレイ……お前は運が良い。あれほどの騎士が、今は二人もいるのだからな」
「……カーティスの事ですか?」
国王は頷く。
「そうだ。あの二人がいればきっと、人類に困難はあれど敗北はない」
※
カーティスは練兵場へと上がった。
対戦相手が向かいに立ち、審判騎士が真ん中に立つ。
『さぁ両者出揃いました! 左サイドに立つのは【東の領地】のSS級騎士! ローグ!』
観客たちが沸き起こり、ローグと呼ばれた騎士が豪快に手を振る。茶髪の男だが、こいつはアスレイ王子と同じく同世代の騎士である。
『右サイドに立つのは【南の領地】が誇る最強の騎士! カーティスだああああ!』
審判騎士の言葉を待っていたかのように観客たちは歓声を上げた。
そんな中、向かいのローグが口を開く。
「ようカーティス!」
「ああ」
「今日という今日はお前に勝つぜ! この英雄の剣【ハーズヴァンドオブリージュ】でな!」
言いながらローグは背中のロングブレードを抜剣してみせた。
【ハーズヴァンドオブリージュ】と言えば、父さんが使っていた武器の名だ。
リーネさんが初めてオリハルコンで錬成した名剣である。
使用者の父さんがドラゴンとの戦いで無くしたと言っていたから、ここにそれがあるのはおかしい。
おそらくローグの持ってるそれはただの長剣で、あいつが勝手に──
「──また名前を付けたのか……」
「ふ……お前の炎剣【グレンハザード】も決着をつけたいと言っているぞ」
「……そうか」
ローグという男はこうなのである。
人の武器にも勝手に名前をつける。
はた迷惑な男なのだ。
なんだグレンハザードって……
『さぁそれではトーナメント第1回戦を始めたいと思います! 両者! 構え! ……始め!』
審判の片手が振り下ろされた!
「いいかカーティス! おれはお前を倒すために48個の技を考えてきた! 今からそれを見せ──」
パキン!
「え?」
ローグの肩当てが開始一秒で吹き飛んだ。
カーティスはとうに彼の背後に回っている。
ゼクードと同じようにすれ違い様に斬ったのだ。
さっきの試合と何も変わらない一瞬の展開だった。
『そこまで! 勝者カーティス!』
さすがに審判騎士の反応は早かった。
彼もカーティスの実力を知っているから、すぐに決着がつくと分かっていたのだろう。
観客たちが「さすが!」と期待通りの展開に声を弾ませた。
だがローグ本人は。
「おぃいいいいい! 人が話してる時にいきなり攻撃すんなよ! マナー違反だぞ!」
「知るか」
カーティスはカチンとロングブレードを納刀する。
「いやおれとお前の仲じゃねぇか!」
「それとこれと話は別だ」
「あーもう! せっかく48個も技を考えたのに! ぜんぶパァーじゃねぇか!」
「だったら狩りで使え」
正論を叩きつけてカーティスは舞台を下りた。
※
「一瞬でしたね! さすがカーティスさんです!」
観客席で眺めていたオフィーリアが嬉しそうに言う。
すると隣のグロリアは溜め息を吐いた。
「アホのローグが相手じゃねぇ……」
するとレミーベールも。
「まぁカーティスが相手じゃ仕方ないわ。強すぎるもの」
レミーベールの言うとおり。相手が悪い。
カーティスは強すぎる。
ローグという騎士もSS級騎士らしいから、実力はかなりあるのだろう。
いやもしかしたらSS級騎士もだいぶ増えてるから、その中でも強さにピンからキリまでの幅があるのかもしれない。
「SS級騎士ってたくさんいるんだな本当に。グロリアとレミーはどっちが強いんだ?」
俺はなんとなく聞いたのだが……
「アタシ」
「ワタシ」
姉妹そろって手を上げた。
「「は?」」
気づいて、お互いに睨み合う。
「レミー……アンタみたいなゴリラにアタシが負けるわけないでしょ? 寝言は寝て言いなさいよ」
「ゴリラはあなたでしょ? ドアノブを息するように壊すくせに」
!?
ド、ドアノブを息するように壊す!?
「ぉ、おい……聞いたか?」
俺は思わずカティアとフランベールに聞いた。
妻二人はそろって頷く。
「親子そろってドアノブを壊すなんて……」
「血は争えんな……」
フランベールとカティアがローエを見た。
俺も見た。めっちゃ見た。
破壊王の遺伝子を。
「こ、こっち見ないでくださる!?」