【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
ゼクードとカーティスの攻防はまだ終わらない。
今までどの決闘も一瞬で終わらせてきた二人が、息継ぎと瞬きすら惜しまれる打ち合いを続けている。
速すぎて刃と刃の火花しか見えない打ち合いだが、人々はそれに圧倒され、魅了されていた。
特等席でそれを眺める国王も例外ではない。
「す……凄い……あの人……私にはまったく本気じゃなかったんだ……」
アスレイが震えた声を絞り出した。
確かに今のゼクードはアスレイと対峙していた時より桁外れの動きをしている。
踏み込みでああも石造りの舞台が弾けるなんてことは今までなかった。
そして攻撃のキレも神業になっている。
抜刀の瞬間さえ見えない音速レベルの斬撃だ。
そんな常人には決して見えない斬撃に対し、それこそ超反応して捌き続けるカーティスも凄まじい。
死力を尽くして戦っているようにも見えるこの親子は、どちらも楽しそうに笑っている。
あんなに楽しそうに戦っているゼクードを見たのは初めてだ。
カーティスも。
いつ首が吹っ飛ぶかも分からない速度で戦っているのに笑っている。
戦っている当事者にしか分からない領域なのだろう。
なんにせよ、これほどの騎士が二人も【エルガンディ王国】にいる。
それだけで……もう安心だ。
見て良かった。この戦い。
「アスレイよ。よく見ておけ。この二人が【エルガンディの双璧】だ」
「双璧……」
「お前の何よりの大きな力となってくれるはずだ」
※
二つの剣舞が交差し、瞬間的に俺とカーティスは擦れ違う。
共に肩当てを狙った一撃だったが命中せず。
通りすぎた斬撃がお互いの背後にある石壁に炸裂した。
「わああああああ!?」
「か、壁が爆発した!?」
観客席から悲鳴が聞こえるが構わず、俺はロングブレードを握り直した。
そして!
「【真・竜(ドラゴン)突き】!」
真っ直ぐに放たれた切っ先。
カーティスはそれを身を捻って回避した。
避けられた突きは飛び、またも爆音を轟かせ石壁を穿(うが)った。
観客がまたも悲鳴を上げるがそれでも構わず、今度はカーティスが大きくバックステップ。
俺の間合いから離れたと思うと、凄まじい跳躍力で空へ跳んだ!
カーティスはロングブレードを両手で握り力を込める。
慣性が死んで落下が始まり、カーティスは吼えた。
「【真・竜斬り・轟】!」
この技はグロリアの!?
咄嗟に判断してカーティスの落下攻撃を回避した。
カーティスの一撃が舞台に届いた瞬間、そこは真っ二つに破砕した。
「うおわあああ!?」
「練兵台が真っ二つになったぞ!?」
「むちゃくちゃだあの二人!」
そんな観客たちの声に俺も同感だった。
確かにむちゃくちゃな威力だな、と。
グロリアより数段威力が上だった。
とんでもない破壊力だ。
受けていたら死んでたな。
なんて思っていると、カーティスがすでに懐に侵入してきていた。
ギリギリのところで反応し、カーティスの薙ぎ払いを剣で受けた。
あまりの威力に防御の姿勢のまま舞台をスライドし、あと数ミリで場外というところで止まった。
あぶねぇ……っ!
想像以上に重かった!
「【真・竜斬り・銀雷】!」
言葉と共に剣を薙ぎ払うカーティスから、銀の一閃が解き放たれた!
それはレミーベールが使っていた技だ。
雷のようにジグザグな軌道を描き俺に迫り来る。
だがどんなに軌道を不規則にしても、狙う場所は肩当てだと分かっている。
俺は銀雷を見切り、迫り来る斬撃をロングブレードの刃で受け流した。
それは石壁に激突して風穴を開ける。
「凄いな。グロリアとレミーの技も使えるのか」
「父さん。それは違います」
「ん?」
「オレがあの二人に今の技を教えたんです」
「なるほど……だから技のキレも違うのか」
納得して、俺はカーティスに剣を構えた。
カーティスもまた剣を構え直して向き合う。
そして思う。
我が息子ながら、さすがに隙がないな。
親としては勝ちたい……いや、こんなに強い相手だからこそ勝ちたい。
狙うか……大技で!
俺は全身に力を込めて、そして踏み込んだ!
向かいのカーティスも同時に踏み込んだ!
互いに考えることは同じだったようだ。
あっちからも大技が来る!
一瞬で肉薄し、パープルの瞳が重なる。
間合いに入った瞬間!
二人の大技が弾けた!
「【真・竜斬り・竜獄斬】!」
「【真・竜斬り・真紅の舞】!」
それはクロイツァーの奥義!
クロイツァーからレィナへ。
そしてレィナからカーティスへ受け継がれたのだろう双剣の技!
まさかロングブレードでそれをやるとは!
無数とも言える斬撃の嵐が吹き荒れ、火花が全周囲に散った。
斬波の衝突によって衝撃波が生まれ竜巻にも似た突風が巻き起こる。
巻き込まれた観客たちの悲鳴が響く。
突風は破砕した石壁の瓦礫をも巻き込んで宙に持ち上げた。
百を越える斬撃の衝突が終わり、竜巻が消えて瓦礫が落ちてくる。
俺とカーティスは互いにすれ違い、剣を振り抜いた姿勢のまま止まっていた。
ビキッ!
俺の肩当てに亀裂が走った。
だが同時にカツンと、カーティスの肩当てが地面に落ちた。
──相討ち。
「引き分け、だな」
俺が言うとカーティスは振り向かず。
「いえ……これは──」
「父上!? 父上!」
突如としてアスレイ王子の声が響いた。
俺とカーティスはその声に振り向く。
観客席のみんなも。
そこには国王を揺さぶるアスレイ王子の姿があった。
揺さぶられている国王は、目を閉じていた。
ドクン! っと俺の心臓が鳴った。
まさか……!
「国王さま!」
俺は国王の元へ駆けた。