【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
気づいた時にはもう、国王は静かに眠っていたらしい。
何かを安堵したかのような……安らかな寝顔だった。
名君の死に涙を堪えた者は一人もいなかった。
もちろん……俺もその一人だ。
心に大きな穴が空いたような、そんな喪失感があった。
いずれ別れの時が来るだろうと、その時は近いだろうと、分かっていたのに……
人はやはりその時になるまで実感できないものなんだ。
※
王位継承のため、国王の遺体は灰にされた。
燃やされていく我が主君を、涙無しでは見つめられなかった。
燃やされて、灰になって、ここでようやく……本当の本当に国王は死んだんだと実感した。
そしたらまた、涙がぶり返した。
そしてそれは……俺だけじゃなかった。
ローエも、カティアも、フランベールも……みんなまた泣いていた。
そうだろうな……国王が俺たち【ドラゴンキラー隊】を編成したのだから。
俺たちが始まったのは、国王のおかげでもあるんだ。
俺の孤独な人生が動き出したのも……
※
【正灰式】は城の大広間にて行われた。
時刻は真夜中。
だというのに……市民でさえ寝ずに参加し、アスレイ王子の王位継承を見守っていた。
大広間に入り切らない人間たちは廊下で、外で、どこだろうと構わず【正灰式】に参加していた。
みんながみんな国王の死を悲しみ……だからこそ、新たな王となるアスレイ王子の【正灰式】を見守りに来たのだ。
国王の人徳が如何に大きなものか、それを体現している。
そして……俺は──
『ゼクード殿……どうか父上の灰は、あなたが私に被せて頂けないでしょうか』
アスレイ王子に重役を頼まれ──
『父上にとって、あなたは弱音を吐ける唯一の戦友だったと聞いています。だからどうか……父上の最後を、お願いしたい』
灰を被せる重役は、本来なら最高位の貴族である大臣が務めるもの。
そんな重役をいきなり頼まれたが、俺は拒む気にはなれなかった。
いや、そもそも拒む理由がなかった。
大切な戦友の最後を、その息子に頼まれれば……拒否するものはない。
灰を引き受けた俺は今、跪くアスレイ王子の前に立っていた。
静まり返った大広間に大勢の人間が立ち並ぶ。
国王の灰が入った箱から、両手を使って掬い上げる。
砂とはまるで違うサラサラとした灰を、俺はアスレイ王子へゆっくりと被せた。
新たなる主君が生まれる瞬間だ。
煙のように舞う灰がアスレイ王子の全身を被った。
これで晴れて……アスレイ王子はアスレイ王となった。
本当にこれで……国王は──
『ゼクード』
「!?」
声が、聞こえた。
それはアスレイ王の後ろ。
国王が……立っていた!
うっすらと今にも消えてしまいそうな……
ロゼ女王の時のように会いに来てくれたみたいだ。
俺は国王の霞む姿を見ただけで、また涙が溢れ出した。
──国王さま……
『お前には本当にたくさん助けられた。心から礼を言う。ありがとう』
──俺だってあなたが居たから!
国王は微笑み、そしてゆっくりと消えていった。
『さらばだ、戦友よ……エルガンディを、みんなを……頼む――――――』
――――それが本当に最後のエルディン国王様の御言葉だった。