【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第198話【さらば戦友よ】

 気づいた時にはもう、国王は静かに眠っていたらしい。

 

 何かを安堵したかのような……安らかな寝顔だった。

 

 名君の死に涙を堪えた者は一人もいなかった。

 

 もちろん……俺もその一人だ。

 

 心に大きな穴が空いたような、そんな喪失感があった。

 

 いずれ別れの時が来るだろうと、その時は近いだろうと、分かっていたのに……

 

 人はやはりその時になるまで実感できないものなんだ。

 

 

 王位継承のため、国王の遺体は灰にされた。

 燃やされていく我が主君を、涙無しでは見つめられなかった。

 

 燃やされて、灰になって、ここでようやく……本当の本当に国王は死んだんだと実感した。

 

 そしたらまた、涙がぶり返した。

 

 そしてそれは……俺だけじゃなかった。

 ローエも、カティアも、フランベールも……みんなまた泣いていた。

 

 そうだろうな……国王が俺たち【ドラゴンキラー隊】を編成したのだから。

 

 俺たちが始まったのは、国王のおかげでもあるんだ。

 

 俺の孤独な人生が動き出したのも……

 

 

【正灰式】は城の大広間にて行われた。

 

 時刻は真夜中。

 

 だというのに……市民でさえ寝ずに参加し、アスレイ王子の王位継承を見守っていた。

 

 大広間に入り切らない人間たちは廊下で、外で、どこだろうと構わず【正灰式】に参加していた。

 

 みんながみんな国王の死を悲しみ……だからこそ、新たな王となるアスレイ王子の【正灰式】を見守りに来たのだ。

 

 国王の人徳が如何に大きなものか、それを体現している。

 

 そして……俺は──

 

『ゼクード殿……どうか父上の灰は、あなたが私に被せて頂けないでしょうか』

 

 アスレイ王子に重役を頼まれ──

 

『父上にとって、あなたは弱音を吐ける唯一の戦友だったと聞いています。だからどうか……父上の最後を、お願いしたい』

 

 灰を被せる重役は、本来なら最高位の貴族である大臣が務めるもの。

 

 そんな重役をいきなり頼まれたが、俺は拒む気にはなれなかった。

 いや、そもそも拒む理由がなかった。

 

 大切な戦友の最後を、その息子に頼まれれば……拒否するものはない。

 

 灰を引き受けた俺は今、跪くアスレイ王子の前に立っていた。

 

 静まり返った大広間に大勢の人間が立ち並ぶ。

 

 国王の灰が入った箱から、両手を使って掬い上げる。

 

 砂とはまるで違うサラサラとした灰を、俺はアスレイ王子へゆっくりと被せた。

 

 新たなる主君が生まれる瞬間だ。

 

 煙のように舞う灰がアスレイ王子の全身を被った。

 

 これで晴れて……アスレイ王子はアスレイ王となった。

 

 本当にこれで……国王は──

 

『ゼクード』

 

「!?」

 

 声が、聞こえた。

 

 それはアスレイ王の後ろ。

 

 国王が……立っていた!

 

 うっすらと今にも消えてしまいそうな……

 

 ロゼ女王の時のように会いに来てくれたみたいだ。

 

 俺は国王の霞む姿を見ただけで、また涙が溢れ出した。

 

 ──国王さま……

 

『お前には本当にたくさん助けられた。心から礼を言う。ありがとう』

 

 ──俺だってあなたが居たから!

 

 国王は微笑み、そしてゆっくりと消えていった。

 

『さらばだ、戦友よ……エルガンディを、みんなを……頼む――――――』

 

 ――――それが本当に最後のエルディン国王様の御言葉だった。

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