【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
翌日の昼頃に、俺たちは目的地である【オルブレイブ王国】に着いた。
空は曇りで薄暗く、今にも雨が降ってきそうな天候だった。
俺は岩影に隠れながら望遠鏡を覗き、向かい先の街並みを見た。
そこは……20年も前にドラゴンによって滅ぼされ、荒廃していた。
城壁は全て破壊され瓦礫の山となっており、長年の放置により草や苔や花などが咲き乱れている。
外周にはドラゴンゾンビが何十匹も徘徊しており、中にはゾンビ化したドラゴンマンも見えた。
やはり灰色の鱗と剥き出しになった血管。
眼は血のように赤く光っている。
黒い竜鱗に赤い瞳か。
なんというか……昔戦った人型ドラゴンを思い出すな。
ズキリと隻眼が疼くのを感じながら、俺は望遠鏡を上にスライドさせた。
瓦礫と化した城壁の奥にもドラゴンゾンビがウロウロしている。
ざっと20~30匹ほど。
こりゃ街の奥にもかなり隠れてそうだな。
どうする?
パッと見てもドラゴンゾンビどもは……のんびりしている。
【レグナ隊】と【リイド隊】と派手にやり合ったわけではなさそうだ。
やり合ったと仮定しても、それらしい痕跡もない。
ドラゴンの死体もないし、仲間の遺体も血だまりもない。
足跡は見えるんだが、争い合って付く足跡じゃない。
だとすると、身を隠しながら街中へ侵入したのか?
いや、いくらなんでもそれは無謀すぎる。
実行したとは考えにくい。
この正面だけでも計100匹は見えるドラゴンゾンビ。
そいつらを掻い潜って街中へ侵入するのは至難の技だ。
【レグナ隊】と【リイド隊】は街中へは侵入していないと見るべきだろう。
でないとドラゴンゾンビどももあんなにノンビリしてないはず。
じゃあ【レグナ隊】と【リイド隊】は?
どこへ行ったんだ?
どこか別の場所にキャンプを設置して身を隠しているのかも。
「お父さん……」
不意にグロリアが呼んできた。
「なんだ?」
「あの数……ヤバくない?」
「ヤバいな。100匹くらいはいるな。街中にもまだたくさんいるだろう」
「これじゃレグナたちは……」
「諦めるなよグロリア。みんなSS級騎士なんだ。どこかに身を隠してやり過ごしてる可能性もある」
「うん……」
「お父様。どうしますか……うっ!?」
オフィーリアが突然頭を抱えて膝をついた。
「オフィーリアちゃん!? どうした!?」
「だ、大丈夫です。ちょっと、急に頭痛がして……」
「頭痛?」
俺は彼女の隣に来て屈み、額に手を当てた。
……熱はない。
風邪ではないようだが。
「風邪じゃないな。立てるか?」
「はい。大丈夫です」
フラりとしながらも立ち上がるオフィーリアだったが、顔はどこか青ざめていた。
「オフィーリアちゃん。顔色が悪いよ。キャンプに戻って休んだ方が良い」
「いえ、その……体調は悪くないんです。なんか……頭痛がした時、知らない声に名前を呼ばれたんです」
「声?」
「はい……『オフィーリア。こっちにおいで』って……」
そのオフィーリアの発言に寒気を覚え、俺まで顔が青くなった。グロリアとレミーベールも。
完全にオバケ的なやつだ。
オフィーリアが顔を青ざめさせたのも納得だった。
「ちょ、やめてよオフィーリア。そんな怖い話……」
レミーベールが言って、オフィーリアが困ったように顔を曇らせる。
「だって本当に鮮明に聞こえたんですよ。なんと言いますか……頭の中に直接……うっ!?」
またオフィーリアが膝を地面に付かせた。
今度は目を手で覆っている。
「オフィーリアちゃん!?」
「め、眼が……痛い……」
頭痛の次は眼!?
どうなってるんだ?
オフィーリアに異変が起きている。
幽霊に憑りつかれたか?
ここは何千人もの人間が犠牲になった場所だ。
信じたくないが、幽霊が居ても不思議じゃない気がする。
ロゼや国王さまの幽霊を見たことがあるから、 なんとなくそんな気がしてきた。
オフィーリアちゃんにだけ異変が起きているということは、俗に言う霊感が強いというヤツなのかもしれない。
何にせよ、これでは任務に支障が出る。
オフィーリアはキャンプへ戻して休ませよう。
「オフィーリアちゃん。君はキャンプに戻って──」
「お父さん! ドラゴンがこっちに気づいたわ!」
レミーベールの声が弾けた。
「なんだって!?」っと俺はオフィーリアから視線を外してオルブレイブの方を見る。
ドラゴンゾンビどもはまっすぐこちらに向かって突撃してきていた。
なぜ発見された!?
「くそ! 俺が前に出る! グロリアとレミーはオフィーリアを守りながら俺の撃ち漏らしを頼む!」
「「了解!」」
娘二人の返事を聞き、俺は瞬時に【ブレイブエルガンディ】を抜刀して岩影から飛び出した。