【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第205話【赤い眼光】

 岩影から飛び出したゼクードは片手を突き出した。

 

 その掌から闇魔法【ダークマター】が何十発も発射され、それらは全てドラゴンゾンビの剥き出しになった血管に直撃する。

 

 血管が爆発で裂け、血が弾けるように噴き出した。

 ドラゴンゾンビたちには激痛らしく、怯むどころかのたうち回り出した。

 

「すご……」

 

 グロリアは父の凄まじい魔法精度に感動の声を漏らした。

 適当に撃って牽制しているのかと思ったら、全て敵の弱点を狙った必殺の一撃だった。

 

 あの距離でなんという命中レベルだ。

 ドラゴンと父の距離はまだ数メートル以上もあるのに。

 

「け、剣だけかと思ってた……」

 

 隣の姉レミーベールも驚愕していた。

 父が魔法を使うところを見るのは今回が初めてだから、同じ事を思っていたようである。

 

 格闘と射撃の両立で隙がない。

 そのくせあの速さ。

 群れのど真ん中に立っても被弾しない回避と立ち回りの熟練度。

 

 何より防御無視の【真・竜斬り】がドラゴンゾンビたちをバターのように斬り裂いていく。

 銀の剣閃は虚空に鏡面を生み出すほど速く、斬られたドラゴンの鮮血を映した。

 

 撃ち漏らしを任されたが、父の猛攻にそれはない。

 たった一人で何匹ものドラゴンを蹂躙していく。

 危なげもなく安定した実力で。

 

 父ゼクードは、顔は可愛いが背中は逞しくて男らしい。

 

 先陣切って戦う彼の勇姿には、さすがのグロリアも見惚れてしまう。

 相手が自分の父親だと知らなければ……おそらくあの強さに心奪われていたかもしれない。

 

 強い男性はやはり純粋にカッコいい。

 母たちが父ゼクードに惚れたのも分かる気がした。

 

「アタシたちの出番はなさそうね」

 

 言いながらグロリアはオフィーリアの方へ振り返った。

 彼女は大鎌を展開してはいるものの、それを支えにして立っている。

 どうにもフラフラで、今にも倒れそうだった。

 

「ちょ、ちょっとオフィーリア! アンタ倒れそうじゃない!」

 

 グロリアとレミーベールがオフィーリアに駆け寄り手を貸そうとした時だった。

 シュンっと大鎌の一閃がグロリアとレミーベールの首をかすめた。

 

「な!?」

「ちょっ!」

 

 当然のオフィーリアの攻撃にグロリアとレミーベールは驚愕する。

 

「ふー」っとオフィーリアは大きく息を吐くと、俯いていた顔を上げた。

 彼女の糸目が開眼し、赤い光を孕んだ瞳が露になっていた。

 

「いきなり何すんのよオフィーリア!」

 

「待ってグロリア! あの眼!」

 

 怒鳴るグロリアの隣で、レミーベールがオフィーリアの眼を指差す。

 それは間違いなくドラゴンゾンビと同じ、血のような不気味な眼光だった。

 

「ドラゴンゾンビと同じ眼をしてる!」

 

「どうなってんのよ! なんで!?」

 

 感染したのか?

 いや、人間にゾンビ化は感染しないはず。

 そもそも病気かも怪しいものなのに。

 

 答えは分からず、迷っているうちにオフィーリアは大鎌の振り回して襲い掛かってきた!

 

「ちょ! 嘘でしょ!」

「やめてオフィーリア!」

 

 

 最初にいた100匹は全滅させた。

 しかし街中からドラゴンゾンビが大量に沸いてくる。

 キリがないな。

 

 ドラゴンゾンビは狂暴性が上がったが、血管が出てくるほど鱗が腐ってもいるので防御力は無いに等しい。

 だから狩ること事態はA級ドラゴンよりも楽だった。

 

 ゾンビ化したドラゴンマンも同様で、動きは早いが人型ドラゴンに比べれば赤子同然だ。

 集団で来ようが大した脅威にはならない。

 

 さて、ここからどうするか?

 このまま狩り続けて親玉を引きずり出すか?

 敵の数を減らせば、それだけで【レグナ隊】と【リイド隊】の生存率が上がる。

 

 問題は敵の数が未知数という事と、

 親玉の能力も未知数という事。

 

 敵の数が分からないのはかなり危険な事だ。

 親玉の能力だってそうだ。

 だいたいS級クラスのドラゴンは、獲物を仕留めるとんでもない能力を隠し持っている。

 経験上、それが分かる。

 

 一番怖いのは親玉の能力だな。

 いったいどんな能力なのか。

 

「やめてオフィーリア! 危ないってば!」

「正気に戻ってオフィーリア!」

 

 なんだ!?

 

 グロリアとレミーベールの焦る声に気づき、俺は咄嗟に【ダークマター】を撃って複数のドラゴンゾンビを止めた。

 そして振り返り、目前の光景に眼を疑った。

 

 あの糸目のオフィーリアが開眼し、不気味な赤い光を発している。

 それはあのドラゴンゾンビと同じ光で、オフィーリアは無表情のままグロリアとレミーベールに大鎌を振っている。

 

 なんで味方に攻撃を!?

 どうしちまったんだオフィーリアちゃんは!?

 

 慌てて俺は娘二人の元へ駆けようとした。

 しかし後ろから複数のドラゴンマンが飛び掛かってくる。

 

「くそ!」

 

 それを薙ぎ払い、また別の方角から来るドラゴンマンも一閃した。

 さらに足止めしたドラゴンゾンビどもが進行を再開し迫り来る。

 街中から次々と溢れ出て来ており、その数はもやは先程の倍にもなっている。

 

 前には200を超え始めたドラゴンゾンビの群れ。

 背後には正気を失ったオフィーリア。

 

 これは、ヤバいな。

 グロリアとレミーベールはオフィーリアの攻撃を捌いてはいるが、反撃できないでいる。

 仲間を攻撃するなんて非情なことはできないのだろう。

 当然だ。

 

 なんとかしてオフィーリアを正気に戻さないと。

 だが、何が彼女をおかしくしたんだ?

 

 あのドラゴンゾンビと同じ不気味な赤い瞳はなんだ?

 感染したのか?

 人間には感染しないはずじゃ……

 

 くそ。

 どうする?

 敵の数は増える一方で、親玉の能力すらも把握してないのに。

 

 まさか人間を操る能力……なんて言うんじゃないだろうな?

 だがそれならオフィーリアだけ操られて、俺たちが操られないのはおかしい。

 

「お父さん! 危ない!」

 

 !?

 

 グロリアの叫びに振り向けば、そこにはオフィーリアが。

 大鎌の一閃が首を狙って薙ぎ払われた。

 

「いっ!?」

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