【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
ガキィン!
振りかざされた大鎌は空へと舞った。
不意討ちだったオフィーリアの攻撃はなんとかパリィした。
しかし!
ガシッ!
「!?」
オフィーリアに素手で首を掴まれた。
尋常ではない力で首を絞めてくる。
しかも片手で。
フル装備の俺を持ち上げて。
「ぐ……がっ!」
首にオフィーリアの指が食い込み、このままでは窒息させられると俺は咄嗟に彼女の腹を蹴って反撃した。
蹴る場所を選びたかったが、そうも言ってられなかった。
オフィーリアは吹き飛び、しかしすぐに受け身をとって体勢を整えこちらへ向かって来た。
さらにしくじったのは、オフィーリアが吹き飛んだ場所はドラゴンゾンビの群れがある方角だったことだ。
やってしまった。オフィーリアが食われる!
助けに駆けようとしたが、ドラゴンゾンビどもはオフィーリアを無視して俺に向かって来た。
むしろオフィーリアと並んで共に襲い掛かってくる。
襲わない!?
オフィーリアを味方と認識してるのか!?
「オフィーリアちゃん!」
呼び掛けても反応しない。
草の生える大地をドラゴンゾンビと共に踏み迫り来る。
お互いに赤い眼を光らせながら。
敵の数はさらに増えている。
この数をオフィーリアを無視しながら戦うのはあまりにも無理がある。
「くそ! グロリア! レミー! 一旦引くぞ!」
「オ、オフィーリアは!?」
グロリアが不安の声を上げた。
その声音に胸が重くなるのを感じながら告げる。
「後で考える! 今は逃げるぞ!」
「グロリア急いで!」
レミーベールにも急かされ、グロリアは歯を食い縛って踵を返した。
娘二人の撤退を確認し、俺はオフィーリアとドラゴンゾンビ群に向き直る。
そして片手を突き出し、地面を狙って【ダークマター】を乱射した。
地面に着弾した黒球は土煙を上げ、オフィーリアとドラゴンゾンビ群の視界を遮る。
それは効果抜群だったようで、奴等は揃って足を止めた。
よし。今のうちに。
ごめん。オフィーリアちゃん。
必ず助けに戻るからな!
※
逃げた先は事前に設置したキャンプ場だ。
オルブレイブから離れた岩影の場所である。
オフィーリアとドラゴンゾンビ群の追跡は想像以上にしつこかったが、途中でパッタリと諦めてくれた。
ある程度距離を開けていなかったら、まだ追跡されていた可能性もある。
俺はフゥと息を漏らし、空を見上げた。
曇りだった空はついに雨を降らせ、下がりきった俺たちの士気をさらに下げてくる。
テントの横に設置したタープで雨を凌ぎつつ、俺は娘二人と話す。
「最悪な事態になった。【レグナ隊】と【リイド隊】の救難どころか……オフィーリアちゃんが操られてしまうなんて」
俺が居ながら……情けない。
ドラゴンの親玉すら見つけられていない。
久しぶりに悔しい思いをしている気分だ。
「お父さん……これからどうするの?」
レミーベールに聞かれ、俺は腕を組んで考えた。
「そうだな……」
オフィーリアの救出。
【レグナ隊】と【リイド隊】の生存確認。及び救援。
ドラゴンゾンビ群の親玉の発見。可能なら討伐。
こっちの戦力は俺とグロリアとレミーベールの三人。
「このまま任務続行は難しいな」
「そんな……」
弱気な発言をした俺にグロリアが絶句する。
反論してこないあたり、グロリアも少なからずそう思っているのだろう。
「ねぇお父さん。もうちょっとみんなで作戦を考えましょう? オフィーリアもあのままだとどうなるか分からないし、レグナやリイド達だってこのままじゃ……」
レミーベールの言葉に俺は「わかってる」と返した。だが……
「現状オフィーリアちゃんの救出が一番難易度が高い。たぶん彼女を元に戻すには親玉のドラゴンを倒すしかないと思うんだ」
「やっぱりオフィーリアは操られてるの?」
グロリアの問いに俺は「予想だけどな」と付け足した。
「オフィーリアちゃんとドラゴンゾンビの共通点は眼を赤く光らせてるとこだ。どうにも分からないところがオフィーリアちゃんは死んでないし、ドラゴンでもない。それなのに操られてしまった。眼だけ光ってたし、肉体は腐ってない。なんでオフィーリアちゃんだけ操られたのか。これも分からない。ただ言えるのは、元凶を潰せばオフィーリアちゃんを救える可能性があるってだけだ」
「じゃあ親玉を見つけて倒しましょうよ。アタシとレミーが囮になるから、お父さんは隙を見てオルブレイブに侵入して親玉を討つの。それしかなくない?」
「それしかないな。でもこれは、どちらかと言うとお前たち二人が危険になる。ドラゴンゾンビの誘導には当然オフィーリアも出て来るだろう。操られて手を出せない相手だ。彼女を捌きながらドラゴンゾンビの誘導はあまりにも無謀すぎる。それにオフィーリアは操られているせいか動きが速かった。あの速さは危険だ」
「危険なのは仕方ないわよ。でもやらなきゃ。オフィーリアを見捨てるなんて出来ないわ。あいつ、やっとカーティスと一緒になれてこれからって時なのよ。お願いお父さん!」