【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第21話【逆襲のゼクード】

「身体能力の全てにおいて女は男に劣る。狩りに適しているのは男だ。それは歴史が証明している」

 

 ガリッ!

 と後ろでカティアの歯を食い縛った音が聞こえた。

 

 堪えてカティアさん!

 俺にまかせとけ!

 もう少しだけ我慢だ!

 

 言いたい放題言わせた後に思いっきり反撃してやんよ。

 

「まして女では【攻撃魔法】を覚醒させられない」

 

「いえ、彼女たちは【攻撃魔法】を覚醒させています。問題はありませんな」

 

 そう、男は基本的に【攻撃魔法】を覚醒させる。

 けど女性はそうでもない。

【錬金術】【合成術】などを覚醒させるのが女性の基本的なスタンスだが、9割の女性はそもそも魔法を覚醒させられないのだ。

 

 そんな女性が【攻撃魔法】を覚醒させるのは希すぎて逆に。

 

「なるほど。では異端ですな」

 

 と、こんな風に言われる。

 希少なのにこの言われよう。

 エルガンディ王国もちょっと昔はそうだった。

 

「女の身で【攻撃魔法】など覚醒させてもなんの役に立つと言うのか? 男を尻に敷くのに使うか?」

 

「きさまっ!」

 

 カティアがついに怒りを露にして前に出ようとした。

 それを俺は片手で制してカティアにウインクする。

 当のカティアは怒りに染まっていた顔を怪訝な色へと変えた。

 

「仰る通りですね」

 

 俺は目前の大男に向かって笑いながら言った。

 大男たちの視線が一気に俺に集中する。

 

「俺も彼女たちの隊長になってまだ日は浅いのですが、彼女たちの非力さには呆れてものも言えません」

 

「た、隊長!?」

 

 ローエさんが驚愕の声を上げた。

 俺は振り返ってローエさん達を見る。

 

「うるせぇな。お前らA級ドラゴン一匹狩るのに【1分】も掛かってんじゃねーよ!」

 

 俺は盛大な大声でローエたちに怒鳴った。

 もちろんワザとだ。

 

 そして俺のこの言葉に一番びっくりしてるのは後ろの大男たちだ。

 

「……は?」

「お、おい、いま……」

「え、今あいつ、なんて?」

「A級ドラゴンに……1分?」

「あの女どもが、A級を1分で狩れるのか!?」

「そんなバカな! 女だぞ!?」

 

 笑えるくらい大男たちが動揺し始めた。

 この反応は分かっていたよ。

 

 お前らの平均討伐時間はみ~んな8分だもんなぁ?

 A級ドラゴンに8分もかかっちゃうもんなぁ?

 遅すぎるよ。その筋肉は重りかい?

 

「お前らがA級ドラゴンを相手してる間に俺は3匹狩れるっつーの! もっと頑張れよ!」

 

 すると更に背後の大男たちが息を呑む気配まで感じさせてきた。

 

「さ、3匹って……」

「あの女どもが1分だから、あのガキは……」

「に、20秒!?」

「いやいやありえねーよ!」

 

 いかん。

 ニヤニヤが止まらなくなってきた。

 彼らの反応を見て、俺が演技しているのをローエたちも察してくれたらしく。

 

「す、すみませんですわ隊長!」

「我々の力不足を御許しください!」

「1分を切れるように頑張ります!」

 

 俺に合わせてローエ・カティア・フランベールの順に答えてくれた。

 その光景を目の当たりにした大男たちが言葉を失って静かになった。

 絶句である。

 

 俺はまた振り返り、先頭の大男に向かってお辞儀した。

 

「お見苦しいところを御見せしました。なにせ口ばっかりな奴らでして」

 

「は? あ、いや、ぁ、ああ? ……いや、その……」

 

「たしかあなたはオルブレイブの隊長さんでしたね。あなたほどの方なら何秒でA級ドラゴンを狩れますか? 俺はまだ20秒が限界でして」

 

「い、いや……っ」

 

「やはり10秒ほどですか? どうかまだまだ未熟な俺にいつか御指導をお願いしたいのですが」

 

「き、機会があれば、な……」

 

「楽しみにしてます」

 

 俺がニッコリ笑って返すと。

 

「お、おい小僧!」

 

 おや?

 今度はアークルムの隊長さんだ。

 

「はい?」

 

「20秒とかふざけてるのか!」

 

 その言葉は、決して言ってはいけなかった。

 なのにこの男は愚かにも言ってしまった。

 現に他の大男たちがゲッ! って顔をしている。

 みんな頭の回転は速いみたいだね。この人以外。

 

「ふざけてる、とは?」

 

 俺が聞くと、アークルムの隊長は俺を指差す。

 

「A級ドラゴンを20秒で狩れるはずがない! そんなデタラメ信じられるか!」

 

「おや? まさか疑われるとは思いませんでした。俺はてっきり隊長さん方に『なんだこの程度か?』って言われるかと思っていたのですが?」

 

「……っ!」

 

 ここでようやく自分の発言の愚かさに気づいたようだった。

 アークルムの隊長は顔を赤くして冷や汗を流しだす。

 こちらを『疑う』ということは、彼らにそれが出来ないことを暗に証明してしまうことになる。

 

 出来る人間というのはそもそも相手を疑わないもの。

 まして格上ならばむしろ嘲り笑うものだ。

 こいつらなら特にな。

 

「まさか、A級ドラゴン相手に1分も掛かるんですか? うちの部下を散々バカにしておいて?」

 

「ぃ、いや……」

 

 そろそろトドメ刺してやるか。

 

「あ~そう言えば風の噂で聞いたのですが、他国のS級騎士の平均討伐時間は8分と聞きましたが?」

 

 すると大男たちがこぞって身体をドキンと硬直させた。

 やめろ。笑わすなって。

 

「平均がそんなに膨れ上がるなんて、誰がそんなに足を引っ張ってるんですかねぇ?」

 

「ゼクード隊長。そこまでだ」

 

 まさかの国王さまからの制止。

 なんでよ国王さま。

 あいつらの時は止めなかったのに。

 

 そんな眼差しを国王さまに向けたら、国王さまはもう十分だと頷いてきた。

 

「彼らの実力に疑いがある者は言いなさい。彼らの狩猟見学を許可する」

 

 国王さまの言葉に何かを言い返す大男たちは一人もいなかった。

 

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