【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第215話【反動】

 顔を再生させた血塗れの女は、その上半身を人間に、下半身はドラゴンの四肢と化した。

 生身の背中からは翼も生えている。

 長い尻尾が地面を激しく叩いた。

 

 もはや人間とドラゴンが混ざった怪物だ。

 どうしてこんな怪物が生まれたんだ。

 

「──女」

 

 !

 

 たった一言だけ聞こえた「女」という言葉。

 血の怪物が確かに呟いたのを俺は聞いた。

 レィナを見て不気味に笑っている。

 

「お義兄様下がって! ここは私が!」

 

 レィナは具足が床を踏み砕くほどの脚力で一足飛びに踏み込む。

 血の怪物が気付いた時にはその口から脳天へと剣がまっすぐに突き通されていた。

 

 そのまま剣を持ち上げて顔前部を裂き、鳥のようなステップで後方へと飛び退く。

 

 裂けた頭部はブクブクと泡立ち、その傷をゆっくりと再生させていく。

 俺にとっては悪夢同然の光景で、あの人型ドラゴンを思い出す。

 

 だが再生速度は奴ほどではない。

 これなら再生が追い付かないほどの速度で攻撃を繰り返せば、いつかは絶命させられる。

 双剣使いでレィナほどの達人ならこいつはいけるはず。

 

 血の怪物は顔を失ったというのにレィナへ手を突き出し、視認しているのか指を触手のように変えて伸ばしてきた。

 まるで獲物を捕らえる縄のようにレィナを狙う。

 

 あんな攻撃……初めて見た。

 俺の時には使って来なかったのに。

 あの中途半端な形態だからか?

 

 レィナの高速剣が巡り、彼女を捕らえようとした触手の渦が瞬時に切り払われた。

 

 ──かと思うと次は髪の毛!

 

 血を含んだドロドロの毛が伸び、無数の触手となってレィナに襲い掛かる。

 

「しつこい!」

 

 レィナは下がらず踏み込んだ。

 無謀にも見えるそれは……しかし並の人間では決して見えない剣の結界が張られていたからだ。

 レィナに肉薄する触手の群れが霧となって消えていく。

 

 血の怪物の横を駆け抜けたレィナは双剣を逆手に持ち変えた。

 

 その間に……血の怪物の胴体と、ドラゴンの下半身に斬線が刻まれる。

 擦れ違い様に斬り伏せたようだが、レィナの本命は次の攻撃だ。

 

 逆手に持った双剣。

 低い姿勢とあの構え。

 出る! あの究極の連続剣!

 

 レィナにとっては父クロイツァーの形見である奥義!

 

「【真紅の舞】!」

 

 無数の斬撃が血の怪物の全身を切り裂き、血を薔薇のように吹き荒れさせた。

 

「ひぎぃああああああああああああ!」

 

 やっと口が再生した血の怪物だったが、それを使う機会は悲鳴だけだった。

 人間の上半身もドラゴンの下半身も全て微塵に斬り刻まれ、それらが再生することはなかった。

 

「おぉ……」

 

 僅かにもレィナを心配していた俺は思わず感嘆の声を漏らした。

 

 過去に……人間の男にも勝てず、A級ドラゴンにも勝てず、グリータに助けられた少女が、S級に匹敵するドラゴンを圧倒し俺を助けてくれた。

 

 か弱かった頃の彼女を知っている身としては、とんでもない感動を覚えたのは言うまでもない。

 

 静かな残心と共に血糊を払うレィナは、その仕草が颯と美しかった。

 

「レィナちゃん……本当に強くなったね」

 

 今ではレィナの方が年上なのに、俺は年配者のようなことを言ってしまっていた。あまりの感慨深さ故に。

 

「いえ……まだまだお義兄様やカーティスには及びません」

 

「レィナちゃん……」

 

「さ、レグナたちが待ってます。急ぎましょう」

 

 

 一方でグロリアたちはドラゴンゾンビ群の一角と交戦中だった。

 包囲網の突破まであと少しというところでいきなりドラゴンゾンビどもが倒れていった。

 

 まるで糸が切れた人形のように。

 

「なに!? 何が起こってるの!?」

 

 パタパタと倒れていくドラゴンゾンビどもに驚くグロリアだが、すぐに察した。

 

「……お父さんだわ! お父さんが親玉を倒したんだ!」

 

 グロリアの声にレミーベールが「やった! さすがお父さんだわ!」と喜ぶ。

 

 彼女たちの歓喜する姿を見てレグナやリイドたちがフゥと地面に座った。

 

「なんだよ無理する必要なかったじゃねーか」

 

「はは~、そうだね~」

 

「足りない。この英雄の剣がドラゴンを狩り足りないと血に飢えている」っとローグ。

 

「物騒な英雄の剣だなオイ」

 

 レグナが呆れていると……

 

「いだぁああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 突如としてオフィーリアが絶叫した。

 

 

 

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