【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第222話【エリザの正体】

「レグナくん……それは?」

 

「ゼクードさん。この部屋……暗くて広いから分からなかったが、隅っこは死体だらけだぜ。あっちもこっちも」

 

「!」

 

「んでこんな日記も見つけた。……なんでオフィーリアだけ操られたのか分かったぜ」 

 

 レグナに手渡されたのは古びた本だった。

 かなりの年数が経っている様だが、保存状態がかなり良い。

 雨風もないこんな地下にあったおかげだろう。

 

 俺は本をめくった。

 最初の1ページ目……

 

『あいつらは頭がおかしい』

 

 これだけだった。

 広大な余白を残したまま、日記は次の2ページ目に続いている。

 

『エリザが美しいからって、今日も血を浴びせられている』

 

 3ページ目。

 

『今日は血を身体に塗りたくられている。正気じゃない。あれじゃいつか病気になる。あいつらおかしい! 誰が言ったの!? 血で美しさが保たれるなんて……』

 

 4ページ目。

 

『地獄だ。娘がおかしくなるのをただ見ていることしか出来ないなんて。出来ることなら代わってあげたい』

 

 5ページ目。

 

『ベリエーラが生け贄にされた。ウィスカトリアも。気が狂いそう……あいつは自分の娘でも平気で殺す。父親とは思えない。……そしてまた新しい奴隷が買われてきた。彼女もまた、エリザの生け贄になるのだろう。あの男はどれだけやれば気が済むの?』

 

 6ページ目。

 

『おかしい。あいつはやっぱり男の中でもおかしすぎる。若い娘を買ってきて、彼女たちの血をバスタブに溜めた。そこにエリザを。おかしい。おかしい。狂ってる』

 

 7ページ目。

 

『女は男の遊び道具に過ぎない。女は弱い生き物だから。男には従え。尽くせ。奉仕せよ。そう教わってきた。でも……これはどう考えてもおかしい。エリザの目に光がない』

 

 8ページ目。

 

『エリザが動かない。代わりに私のお腹の子が動いている』

 

 9ページ目。

 

『エリザは死んだ。娘の死に様を眺めるしかできないなんて……でもあんまり悲しくなかった。心のどこかですでに諦めてたから』

 

 10ページ目。

 

『あの男はエリザの死を受け入れてない。今度はドラゴンの血をバスタブに満たして、そこにエリザの死体を漬からせた。やっぱりこいつは正気じゃない』

 

 11ページ目。

 

『4人目の娘が生まれた。名前はオフィーリア。エリザにも見せて上げたかった……』

 

「オフィーリアちゃんの名前が……!」

 

 俺は思わず読む手を止めた。

 リイドとローグも息を呑む気配を見せる。

 向かいのレグナは頷き、そして口を開く。

 

「その日記の書き手はオフィーリアの母親で間違いないですよ。そして今回の血の怪物の正体は……このエリザって娘でしょう」

 

 レグナの答えに俺は前の戦闘を思い出す。

 

『や、やめて! 斬らないで! 私はエリザ──』

 

 あの時は……確かにエリザと名乗っていた。

 彼女にこんな経緯があったとは。

 変態のオモチャにされて……あんな姿になったのか。

 そう思うと、少し胸が苦しくなった。

 

 12ページ目。

 

『この子だけはもう……何があっても守りたい……』

 

 13ページ目。

 

『……今日もエリザの死体を漬からせている。いまのところはオフィーリアには手は出さないだろう。でもいつか、この子が大きくなったら……』

 

 14ページ目。

 

『もうかなり経ってるのにエリザの死体は綺麗なままだ。どうなってるの?』

 

 15ページ目。

 

『オフィーリアは今日も元気だ』

 

 16ページ目。

 

『オフィーリアが一歳になった。おめでとう。愛してる』

 

 17ページ目。

 

『男が帰ってこない』

 

 18ページ目。

 

『男がまだ帰ってこない。信じられないほど静かだ。外では何があったのだろう?』

 

 19ページ目。

 

『食料がもうない。男はまだ帰ってこない。このままではオフィーリアが……』

 

 20ページ目。

 

『今日信じられないことが起こった。エリザが生き返った! エリザが生き返った! わたしを母と呼んでいる! 奇跡が起きた!』

 

 21ページ目。

 

『エリザが地下室の扉を破壊した。凄まじい力だった。娘の身に何が起こったのか? ……だが今はどうでもいい。娘は正気だ。わたしとオフィーリアのために食料を探しに出てくれた』

 

 22ページ目。

 

『男が帰ってこない理由が分かった。エリザから聞いた。街が滅んでいた。何があったのか? 生き残りはわたしとエリザとオフィーリアだけ? これからどうすればいいの?』

 

 23ページ目。

 

『エリザがドラゴンを狩ってきた。信じられない。水と食料をわたしとオフィーリアのために運んでくれた。おかげで命を繋いでいる』

 

 24ページ目。

 

『もうどれくらい経ったのだろう? 何もない毎日だが、どこか幸せを感じている。誰にも縛られることなく、自由に生きている。娘二人と過ごす他愛もないこの時間が、とてつもなく愛しい。こんな国、滅んで良かったんだ』

 

 25ページ目。

 

『夜……エリザが呻き声を上げているのが聞こえた。一緒に寝てくれないと思っていたら、そういう事だったらしい。ドラゴンの血で満たしたバスタブに漬かると落ち着くが、最近は頻度が上がっている。大丈夫だろうか? なんとかしてあげられないのだろうか? エリザ……』

 

 26ページ目。

 

『狩りに行ったエリザが帰ってこない。嫌な予感がする』

 

 27ページ目。

 

『エリザは帰って来た。小さな人里を見つけたってハシャイでいる。人の気も知らないで困った娘だ。でも無事で良かった。エリザはわたしとオフィーリアをその人里へ連れていくと言う。わたしは反対、できなかった。エリザの身体が……足がドラゴンのようになっている。バスタブで元に戻ったが、もうエリザの身体は人ならざるモノに変わってしまっていたらしい。エリザは自分に正気があるうちにわたしとオフィーリアをその人里まで連れていくと、そこまで自分が二人を守るって、言ってくれた。……できるならずっと、ここで静かに3人で過ごしたかった』

 

 日記はそこで終わっていた。

 あとは白紙。

 

「そういう事だったのか……」

 

 呟いて俺は……目の奥が熱くなるのを感じた。

 涙が出そうだった。

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