【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第226話【相談】

 あまりに酷い事実だった。

 倒したあの血の怪物はエリザの成れの果てだったとは。

 そしてオフィーリアの姉でもあった。

 

 この事実を、俺はオフィーリアに告げるべきか悩んでいた。

 レグナたちに相談しても答えは出なかった。

 みんな分からないと答えたから。

 

 俺も同じで分からない。

 ただ……今のオフィーリアに、この事実を知る必要性があるのだろうか?

 

 あの子はいま好きな男に夢中で、普通に女として生きている。

 何も不自由はしていない。

 そう考えると、この日記は必要ないのではないだろうか?

 

 燃やしてしまうべきだろうか?

 だがもしオフィーリアが母親のことを知りたがっていたらどうしよう?

 そもそもオフィーリアの母親は健在なのだろうか?

 それさえもレグナたちは知らないらしい。

 

 ならばと俺は調査を終わらせてキャンプの方へ戻った。

 レィナに相談しよう。

 彼女ならオフィーリアの母親のことを知ってるかも知れない。

 

「お帰りなさい」

 

 岩影のキャンプで出迎えてくれたのは当のレィナで、グロリアは焚き火を維持して、レミーは薪を運んでいた。

 オフィーリアは居ない。

 まだテントで休んでいるようだ。

 

「うぃ~っ。母さん腹減った。飯」っとレグナ。

 

「出来てるわよ」

 

「ねぇねぇ義母さん。あの料理……義母さんが作ったんだよね?」

 

 リイドが恐る恐る確認した。

 どうやら彼はグロリアとレミーベールの料理の腕を知っているらしい。

 もちろん確認されたレィナはキョトンと目を丸くした。

 

「そうよ? なんで?」

 

「いや! それなら良いんだ~。良かった良かった~」

 

「グロリアたちじゃないんだな。これで安心して食えるぜ。母さんの料理は最高だからな! お袋の味!」

 

 リイドとレグナが心底安心したように言った。

 そして聞こえていたらしいグロリアが怒る。

 

「ちょっと! アタシたちが作ったら不味いみたいに言わないでくれる!?」

 

「いや不味いんだよ! ちったぁ練習しろ! なんならオレが教えてやろうか?」

 

「いらないわよ!」

 

「レグナが嫌なら僕が教えてあげようか~?」

 

「いらないっつってんでしょーが!」

 

「このローグ様が教えてやろう!」

 

「アンタはうるさい!」

 

 んー……なんかカーティスの世代は男の料理上手が多いな。

 まさかレグナたちも料理できるなんて。

 俺ができないのは黙っておこう。

 

「お義兄様お帰りなさい。お疲れ様でした」

 

「ありがとう。ところでレィナちゃん。ちょっと時間……いいかな?」

 

「? はい。大丈夫ですよ」

 

 

 キャンプから離れた草原までレィナを連れてきた。

 夕陽が沈みかけ、草原は少しずつ暗くなっていく。

 そんな中で俺はレィナに例の日記を読んでもらった。

 

「これは……」

 

「例の地下室で見つけたんだ。オフィーリアちゃんのお母さんが書いていたらしい」

 

「あの子のお母様が……。まさか、人があんな化け物になるなんて……」

 

「レィナちゃん。オフィーリアちゃんのお母さんはエルガンディに居るのかい?」

 

「いえ、彼女はすぐに亡くなりました」

 

「亡くなった? どうして?」

 

「ドラゴンの大群に襲われて、その時の傷が大きくて……そのまま……」

 

 なんて事だ……こんなに報われない話があるのか。

 

「守り切れなかったのか……エリザは」

 

「はい……残念ながら。ですがオフィーリアは無事でした」

 

 救いはあったとレィナがそう言ってくれた。

 俺は同意を示して頷く。

 確かに……オフィーリアちゃんだけ助かっただけでも良かったと見るべきだな。

 

「その時エリザを見た人は居なかったのかい?」

 

「いました。鉢合わせた数名の騎士が血だらけの少女を見たと言っていました。戦っている様に見えたとか、こっちを見るなり逃げ出したとか……」

 

「そうか」

 

 そこでオフィーリアちゃんだけ【エルガンディ】に保護されたってことか。

 

「お義兄様……その日記、オフィーリアに見せるんですか?」

 

「いや……実はそれについてレィナちゃんと相談したかったんだ。俺一人じゃ決められなくてさ」

 

「私と?」

 

「うん。分からないんだ。どうすればいいのか。……見せるべきなのか、見せないべきなのか」

 

 俺としては見せなくていいと思っている。

 今のオフィーリアちゃんに、こんな重くて辛い過去は知らない方が良いと思うのだ。

 

 自分から幸せを掴もうとしている彼女にこんなもの、蛇足でしかないと思う。

 

 ただ……それが本当に正しいのかどうか、俺には判断できなかった。

 だから誰かに決断を後押しして欲しかった。

 ズルいとは思うが、こればっかりは……

 

 しばらくの沈黙を経て、レィナは下げていた顔を上げた。

 

「私は……見せなくて良いと思います」

 

「! ……どうして?」

 

「今のあの子にはそんな重い過去の話なんて知る必要ないと思うんです。あの子は今、好きな男の子に夢中で女の子らしく普通に生きてます」

 

「なるほど……」

 

 ホッとした。

 レィナちゃんが自分と同じ考えだったのが、なぜか無闇に嬉しい。

 賛同者が一人でもいれば案外と安心するものだ。

 

「お義兄様はどう思ってるんですか?」

 

「俺もレィナちゃんと同じだよ。オフィーリアちゃんに必要なのかな? って、ずっと考えてた。ありがとう」

 

「いえ……」

 

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