【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「はい……全部、覚えています」
「!?」
予想外すぎる返答に俺は言葉を失った。
グロリアとレミーベールも。
「意識はあったんです。でも身体が勝手に動いて何もできませんでした」
「アタシたちと戦ったことも覚えてるってこと?」
グロリアの問いにオフィーリアは頷いた。
「あの時は本当にご迷惑をお掛けしました……ゼクードさんも」
「いや、良いんだよ。こうして元に戻ったしさ」
殴っちゃったこともバレてるってことかぁ……
たぶんオフィーリアちゃんは気にしてなさそうだが、個人的には痛いなぁ。
「オフィーリアが悪いわけじゃないんだから。今回は本当に運が悪かっただけよ」
レミーベールのフォローにオフィーリアは「ありがとうございます」と礼を言う。
そして焚き火に視線を落とし俯いた。
「……ずっと頭の中で声がしてました。助けて、助けてって」
「そういえばそんなこと言ってたわね。なんなのそれ?」
グロリアに聞かれオフィーリアはしばらく黙った。
「……わかりません。わたしを乗っ取った本人だと思いますが、それにしては苦しそうでした」
「苦しそう?」っと俺は思わず聞き返す。
聞き返したが、あの日記を知っている以上……なんとなく察しはした。
「はい。理由は分からないんですが……なぜか苦しそうでした」
オフィーリアの言葉を聞き、俺はグロリアとレミーベールの顔を見やった。
二人もエリザの事だと察して頷く。
苦しそうに助けを呼んでいたのは俺たちという外敵が現れたからか。
それとも自分の身体に苦しんでいたのか。
仲間を呼び寄せていたから前者だと思うのだが、苦しそうというのが引っ掛かる。
「実はみんなとドラゴンの包囲網を突破してる時も声は聞こえてました」
「なんですって!? なんで言わなかったのよ?」
驚くグロリアにオフィーリアは苦笑する。
「喋れるようになって身体も動いて戦えましたから黙ってました。あの時はもう余計な心配を掛けるべきではないと思ったんです」
「ん……まぁ、賢明っちゃ賢明だけどさ」
「でも気絶してる間もその声は鮮明に聞こえてたんです。気持ち悪いくらいハッキリと。しかも途中から『助けて』じゃなくなって、いきなり怒り出したんですよ」
「怒り出した?」っと俺。
「なんて怒ってたの?」っとレミーベールが聞いた。
「『お母さんと妹は守る!』って……」
!
お母さんと妹!?
それってやっぱりあの日記の!
「うわ言のようにずっとそれを繰り返してました。でも途中で聞こえなくなって、目を覚ましたらテントの中でした」
『お母さんと妹は守る!』……か。
それってやっぱりレィナちゃんが言っていた守り切れなかった母親の事を言っているんだろうか。
まさか妹まで死んだと思っていたなんて……当時のエリザの心情はどれほどのものだったのだろう?
想像するだけで辛くなる。
母と妹を守れなかったと絶望しながら、血のバスタブに身を沈めたと思うと……
どこまでも救われない……本当に哀れな娘だ。
エリザ。
せめて妹のオフィーリアは無事だったと、それだけでも伝えられれば違ったのに。
今さらもう遅すぎる無念に、俺は黙して焚き火に視線を落とすしかなかった。
「お母さんと妹は守る……か。なんとなく分かってきたわ」
レミーベールが得心したかのように言う。
隣のグロリアが「何が?」と聞いた。
「不思議だったのよね。あの怪物……明らかに女だけは狙ってなかったわ」
「はぁ? 触手で思いっきり捕まえられたじゃない」
「それだけでしょ? 攻撃らしい攻撃なんてされてないわ。殺そうと思えばいつでもやれたはずよ?」
「そ、それは……そうだけど」
言われてみると確かに。
捕獲したグロリアとレミーベールに攻撃はしてない。
レィナちゃんの時も攻撃ではなく捕獲しようとしてた。
生かして捕らえて後で補食するという線も考えられるが、それなら女性にだけ狙いを絞るのも変だし……エリザに必要なのはドラゴンの血だろうから、人間なんてむしろ対象外だと思う。
じゃあなんだ?
まさかレミーベールたちをお母さんや妹と勘違いしてみんな捕獲して守ってたってことか?
そんな馬鹿な話があるのか?
いや……そもそも人間がドラゴンになってるという馬鹿な話が土台だ。
有り得ない話ではないだろう。
エリザは男に良いイメージ持ってないだろうし、男だけ殺しにかかってるのはそういう過去も関連してそうだ。
「……攻撃されなかったんですか?」
事情を知らないオフィーリアが聞き、レミーベールは頷く。
「ええ。捕獲されただけ。あんな力強い触手ならワタシたちを絞め殺すくらい簡単だったはずなの。でもそれをやらなかったわ」
「後で食べるエサって扱いだったんじゃないの?」
グロリアの返しにレミーベールはムッとして腕を組む。
「だったら男でも良いじゃない」
「いや男は食わんでしょ? あんな過去がある娘なのに……」
「過去?」っとオフィーリア。
「あ……」っと真顔になるグロリア。
あ~ぁ……グロリア。
お前って奴は……
「グロリアさん……何か知っているんですか?」
「んーん? 知らない」
「いや嘘ですね? グロリアさんってミスした時いつも真顔になります!」
「だ、誰が言ったのよそんなこと!」
「カーティスさんです」
「あんのキザ男!」