【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
理由は分からないが、レィナが息子のレグナとリイドに追い掛けられていった。
それを不思議と思いながらも見送り、俺は妻や息子らと任務の談笑をしながら街の中央広場まで来た。
そこで懐かしい声が響く。
「ゼクードォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
その声は俺達の正面から轟いた。城の方角である。
忘れるはずもない。
どこかドスの利いた声。
俺にとっては数週間ぶりの再会となるその声の主は間違いなく!
「姉さん!」
腹違いの姉レイゼだった。
なぜここに? という疑問より先に俺は駆け出していた。
レイゼもまっすぐにこちらに向かって走ってきている。
「ゼクードォオオ!」
「姉さぁああーん!」
飛び込んでくる姉を受け止めようと両手を広げたら──
「フンッ!」
バキャアッ!
「ぶへぇあっ!?」
──ぶっ飛ばされた!
「と、父さん!?」っとカーティスが慌てて地面を転がる俺を追い掛けた。
「じょ、女王様なにを!? お止めください!」
レイゼの護衛騎士らしい若い少年も慌てて制止する。
俺はプルプル震えながら身を起こし、目前に立ちはだかる姉を見上げた。
「ね、姉さん……なんで?」
「なんでじゃねぇ! お前! 今の今までこの野郎! オレがどれだけ心配したと思ってんだ! ああん!?」
レイゼの怒声は見る者を圧倒する迫力があった。
おかげでフランベール達やグロリア達も気圧されて動けなくなっている。
俺もその一人だが、なんとか立ち上がる。
「ご、ごめん……それは……」
──その先の言葉を言う前に……レイゼは俺を抱き締めてきた。
身を震わせながら強く、俺という存在を確かめるようにしっかりと。
「本当に……どれだけ心配したと思ってんだ……バカ野郎ぉ……」
ボタボタと大粒の涙を流して俺の肩を濡らしていく。
「姉さん……」
「生きてて良かった……会いたかった……」
「姉さん……ごめん。本当に……」
※
ようやくレイゼが落ち着き、身を離した俺は姉に問う。
「姉さんはなんでここに? まさか俺の事を聞いて?」
今や【シエルグリス】の女王であるレイゼ。
その女王自らが【エルガンディ】に足を運ぶ用件となると、よほどの事のはずだが。
「いや、お前らの事はここに来てから知らされた。本当の用件は先代国王が御亡くなりになられたと聞いてな。アスレイ陛下への挨拶も兼ねて手を合わせに来た」
「そうだったんだ……」
「名君に相応しい緒方だった。あの方が居なければ【シエルグリス】と【エルガンディ】は友好関係を築けなかっただろう」
「その件は聞いたよ。俺達が帰らなくて姉さん達にいろいろな疑惑が掛けられたって。本当にごめん」
「もういい。お前らも大変だったみたいだしな。雪のドラゴンに氷漬けにされたんだって?」
「ああ。おかげでまだまだ若いけど……」
「確かに……」っとレイゼはローエ・カティア・フランベールを見る。
「久しぶりだな。みんなも無事で良かったぜ」
「女王様こそお元気そうで良かったです」っとフランベールが笑顔で返しローエが続けた。
「変わってませんわね。女王様も氷漬けになられたのかしら?」
ローエの言うとおりレイゼはまったく老けていなかった。
あれから18年が経っているはずなのに、顔は当初のままで美しい。
髪も長いのが嫌いなのか18年前のままだ。
ハッキリ言って変わってない。
変わったのは騎士の身なりではなく、王族らしいマント姿なとこくらいだ。
あと口調も変わってない。
女王なのに男口調は相変わらずだ。
姉さんらしいと言えば姉さんらしいが。
「まさか。だいぶ老けたぜ? なぁネオ?」
ネオと呼ばれた隣の護衛騎士が「は……」と直立し「自分は昔の女王陛下を知りませんのでなんとも」と率直に返した。
「ああそうだな」
レイゼはつまらなそうに肩を竦める。
ネオの反応は素っ気ないが、俺はまぁそうだろうなと思った。
このネオという騎士はどう見ても10代の若い少年だ。
先の言葉の通り昔の女王陛下を知らないのは当然のこと。
このネオという少年……性格はカーティスみたく素っ気ないが、まぁでもこの若さで女王の護衛を任されるということは、かなりの腕前なのではないだろうか?
彼からはただならぬオーラが見えるし、かなり練り上げられている気を感じる。
武器はオーソドックスな直剣が腰に垂らされているが、もう一つ短剣も装備されている。
剣と短剣を左右に持って使うのだろうか?
双剣とは違う、まさに二刀流というやつだ。
攻撃と防御のバランスが良いと聞く組み合わせだが、実際に使っている者を見るのは初めてだ。
二刀流を使いこなす少年……なかなか腕が立つみたいだな。
若いのに大したものだ。
彼の装備している黒い鎧は【闇魔法】の使い手を表してるのだろうか?
【シエルグリス】にそんな鎧の色別けとかあったかな?
あと……このネオくんの瞳だが……どこかで見たことあるようなピンク色をしている。
誰だったかな? ん~……
「……なにか?」
「っ! あ、いや……」
ジ~ッ見つめていたせいでネオに睨まれた。
さすがに失礼だったと俺は慌てて謝る。
「ごめん。君の眼が誰かに似てるような気がしてね」
ははは、と笑って誤魔化しているとレイゼが俺に口を開いてきた。
「ああ、それミオンだろ?」
姉の補足で俺はついに思い出した!
そうだ! 彼女だ!
髪も瞳もピンクピンクしていたミオンだ!
彼女に似てるんだ! そうだそうだ!
「それだ! ミオンさんだ! やっと思い出した!」
俺が言うと後ろのローエ達も。
「あ、言われてみると確かに」
「似てますわ」
「まさか御子息(ごしそく)か?」
最後のカティアの言葉にレイゼはすんなり頷いた。
「ああ。あいつのガキさ。シエルグリス自慢のエースだ」