【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第236話【またやりやがった】

 長々とグリータの説教をくらった俺はようやく解放された。

 レイゼやグロリアたちとも別れ帰宅。

 そのまま妻たちと食事や風呂を済ませた。

 

 その頃には外は暗くなり、各家の窓からランプの光が漏れるようになる。

 ここフォルス家のマイホームもその一つとなり、ホールでランプを焚いてみんなでソファーに座り談笑する。

 

「うぅ……まだ耳がキンキンする……グリータのやつ、あそこまでギャーギャー言わなくたっていいじゃないか」

 

「仕方ないよ。グリータくんは今や責任ある立場の人間だからね。ゼクードくんだけに甘くってわけにはいかないんだよ」

 

 同じソファーの隣に座るフランベールが苦笑する。

 俺は耳をほじりながら「まぁ……そうだけどさ」と、抜いた小指に息を吹き掛けた。

 

「それにあんなに広場をボロボロにされたら、わたくし達もフォローできませんわよ」

 

 テーブルを挟んだ向かいのソファーに座るローエが呆れるように肩を竦めてきた。

 これについてはもはや反論の余地がない。

 いやもともとないんだけど……

 

「そ、そうだね……ごめん」

 

 俺が素直に謝ると、ローエの隣のカティアが飲んでいたお湯をテーブルに置いて口を開いてきた。

 

「それより任務の方はどうだったんだ? 話ではそこらじゅうに居たドラゴンゾンビがみんな溶けたって話だが」

 

「ああそれね。親玉の討伐に成功したんだ。もうドラゴンゾンビは出てこないよ」

 

「さすがですわね。でもあなた……かなりボロボロになってましたけど、そんなに強いドラゴンでしたの?」

 

「うん。強かった。っていうかズル賢いヤツだったよ。人間の女の顔に変身して命乞いしてきたんだ。それにビックリして動き止めたら股間蹴られてさ。死ぬかと思ったよマジで」

 

「こ、股間を!? え、大丈夫!? まだ子作りできる!?」

 

 本気で驚愕するフランベールに俺は笑って返した。

 

「大丈夫大丈夫。まだ子作りはできるから」

 

「なら良いけど……」

 

「心配するとこおかしいだろ」っとカティア。

 

「変な会話ですわ……」

 

 俺もそう思う。

 

「……まーこっちは誰も死なずに無事に任務を達成できた。そっちはどうだった? 身体は大丈夫?」

 

 聞いてみた俺はテーブルのエールを取ってそれを飲む。

 

「見ての通りだ。変わりない」

 

 カティアが言うとフランベールが向かいの二人に身を乗り出して笑った。

 

「でもすっごく快適な毎日だったよね?」

 

 カティアが頷き、ローエも深く深く頷いて俺を見てきた。

 

「ええ。料理・洗濯・掃除その他もろもろカーティスが全部してくれましたわ。どこかのポンコツ亭主とは大違いですわね~」

 

 ぐあっ!

 カーティスのやつ、ほんとに何でもできる男なんだな……

 誰に似たんだまったく!

 

 女に興味ないところ以外はほとんど完璧じゃねーか。

 っていうか俺には料理・洗濯・掃除その他もろもろができる三人の妻がいるから別にいいじゃん。

 

 そもそも何か手伝おうとしたら阻止してくるくせに。

 っていうか──

 

「──破壊王にポンコツとか言われたくないんですけど?」

 

「なんですって?」

 

 破壊王の目が細められ、彼女の右手がコキッと音を立てた。

 

「ひ! いや! なんでもないです!」

 

「あ、そうそうゼクードくん! わたし今日すっごいレアなもの見たんだ!」

 

「レアなもの?」

 

 俺がオウム返しすると、フランベールはニコニコな笑みで続けた。

 

「ローエさんがね? カティアさんに膝枕してたの!」

 

「なっ!」

「ちょっ!」

 

 ボッ! っと火が点火したようにカティアとローエの顔が赤くなった。

 

「マジで!?」っと俺は驚きのあまりにエールを溢しそうになる。

 

「フランお前! 見てたのか!?」

 

 カティアに問われたフランベールはコクンと頷いて窓を指差す。

 

「うん。そこの窓からバッチリ見てた!」

 

「なん、だと……」

 

「おいカティア。ローエの膝は俺の枕だぞ? 勝手に使うなよ」

 

「いや何言ってるんだお前は」

 

「そうですわよ。これはフォルス家みんなのものですわ」

 

「お前も何言ってるんだ」

 

 カティアの突っ込みを期にみんなで笑った。

 やっぱりこの三人といる時が一番楽しいし幸せだ。

 

「あ、膝枕で思い出した。俺もグロリアにされたなぁ」

 

「なんですってぇえええええ!?」

 

 聞いた瞬間にローエが身を乗り出してきた。

 それこそ胸ぐらを掴まれそうなほどの勢いで。

 

「な、なんだよ急に!?」

 

「娘にまでそんなことさせて! この変態!」

 

「ちがっ! グロリアが勝手にしてたんだよ!」

 

「嘘おっしゃい! あの子可愛いから手ぇ出したんでしょう!」

 

「出してないって! さすがの俺も娘には手ぇ出さないって。っていうか俺ローエたち以外の女性に手ぇ出したことないだろ?」

 

 言うと、しばらくローエが止まった。

 ジ~ッと俺を見つめて数秒後。

 

「……まぁ……そうですわね」

 

 特に思い当たることがなかったようで、無事に審査に合格した。良かった良かった。

 

「だろ? っというか俺が言いたいのは膝枕じゃなくて、ツインテールをほどいた時のグロリアがローエにそっくりだったってことだよ」

 

「あら? そんなに似てましたの?」

 

「めっちゃ似てた。最初分からなかったもん。親子でもここまで似るんだなぁって思ったよ」

 

「へぇ……今度ローエさんとグロリアを並べて見てみたいね」

 

 フランベールの案は当のグロリアも似たようなことを言っていた。

 面白そうだから是非やりたいものだ。

 

「いいなそれ。んでどっちが本物のローエかをカーティスかレミーに当てさせるんだ」

 

「それはいいんだがゼクード。娘たちとの初の共同任務はどうだった?」

 

 カティアに聞かれ、俺はエールを置いて腕を組んだ。

 

「そうだなぁ。正直いろいろ大変だったからロクな感想は言えないんだけど……」

 

『オフィーリアを見捨てるなんて出来ないわ。あいつ、やっとカーティスと一緒になれてこれからって時なのよ。お願いお父さん!』

 

『お父さん……ワタシからもお願い。オフィーリアを助けて』

 

 娘グロリアとレミーベールの言葉が脳裏をよぎり、俺は自分でも気づかない内に笑みを溢していた。

 

「……仲間を見捨てない良い子たちだったよ。友達思いでもあるな」

 

 それを聞いたカティアは「そうか」と微笑み、フランベールとローエも。

 

「姉さんやリーネさんたちの育ての良さが窺えるね」

「ほんと……リーネやリリーさんたちには頭が上がりませんわ」

 

「そうだな」

 

 感傷的になるこの話題は、長くは続けない。

 みんな涙もろくなるからだ。

 俺はエールを飲み干して話をやめると、妻たちもお湯を飲み干してテーブルにカップを置いた。

 

「さぁて……そろそろ寝るか」

 

 俺は背伸びをしながら言った。

 本当は誰かと夜を過ごしても良かったんだが、みんな妊婦だし、俺も身体がけっこう疲れてるみたいだしやめておこう。

 

「え~、寝るには少し速いですわよ。みんなで夜の街を散歩しませんこと? もう少しお喋りしましょうよ」

 

「こんな夜中にか? 危ないぞ」

 

「大丈夫ですわよカティア。ポンコツ亭主が守ってくれますわ」

 

 物足りないらしいローエが一方的に言い放って玄関に足を運んだ。

 

 やれやれと俺は立ち上がり、カティアとフランベールも立ち上がった。

 

 するとバキャッ! と懐かしい音が聴こえた。

 

 その音を辿ると、玄関のドアノブを握ったローエが青ざめていた。  

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