【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第239話【レイゼの娘】

【シエルグリス】に着くまでに掛かった時間はたったの2日だった。

 1日目には【竜軍の谷】に到着してそこでキャンプし、2日目にはそのまま街道を沿って【シエルグリス】に着いた。

 

 現時刻は太陽が沈み始める少し前。

 数回の休憩があってこれだから本当に速い。

 前に来たときは雪だらけで徒歩だったからものすごく時間が掛かってた気がする。

 

 というか雪の積もってない【シエルグリス】を見るのが初めてで、まったく別の国に見えてしまう。

 

 馭者のネオが門の前に馬車を止めた。

 それを確認した門番が「あれ? 女王様って馬車で出てたっけ?」と横の部下に聞いていたりしたが当のレイゼが「おーい。開けてくれ。馬車は借りたんだ。客を乗せてる」と言い、門番は理解してすぐに指示を出し門を開かせた。

 

「女王様! お帰りなさいませ!」

 

「おお」っとレイゼは手を上げて出迎えの女騎士たちに答えた。

 

「速いなぁ。もう着いた」

 

 俺は馬車から下りてそう言うと、後から下りてくる妻たちやレイゼたちに手を貸して下りるのをサポートした。

 この馬車……下りるための梯子(はしご)とか階段とかそんな気の利いたものが付いてない。

 

 乗るときも俺が先に乗ってローエたちを手で引っ張り上げてた。

 それで今度は下りる。

 そのためには飛び降りるしかないのだが、ローエたちは妊婦なので出来るだけ衝撃は与えたくない。

 だから下りてくるローエたちの衝撃を和らげるためお姫様抱っこで受け止めてあげるのだ。

 姉さんにそのサポートなんて必要なかったけど、女性だからね。

 

「ありがとうゼクードくん」

 

 フランが言って俺は頷き、最後のレイゼも受け止める。

 

「おっと……気が利くじゃねぇか。ありがとな」

 

「どう致しまして~」

 

 姉さんをお姫様抱っこして受け止めてからゆっくりと地面に下ろす。その行為に周りの女騎士たちはギョッとしていたが気にしない。

 そして思った。姉さんやはり良い匂いだ。

 レィナもそうだったが30代になっても女性の甘い香りは健在である。

 

「……」

 

 なんか視線を感じた。

 ネオだ。

 馬車から下りてきたネオが俺を見ている。

 

 なんだろう?

 もしかして彼も受け止めて欲しかったのか?

 いや、まさかな。

 

「随分と女性に優しいんですね」

 

 良かった。

 受け止めて欲しかったわけではないようだ。

 っていうか完全に敬語になってる。

 周りの女騎士やレイゼが驚きの顔を見せていた。

 

「そりゃあね。俺、女の人が大好きだから」

 

「戦うのは好きではないんですか?」

 

「好きじゃないな~。怖いし」

 

「怖い?」

 

 ネオが露骨に顔を怪訝にした。

 

「ドラゴンが怖いのですか?」

 

「そりゃ怖いよ。君は怖くないのか?」

 

「怖いと思ったことはありません。初めて戦った時くらいです。あなたの口からドラゴンが怖いなんて言葉……聞きたくなかったですね」

 

 どこか幻滅したように吐き捨て、ネオは一人で【シエルグリス】の門を潜って行ってしまった。

 

 女王様を置いて先に行ってしまうとは……まだ護衛任務は解けてないだろうに。

 

 それにしてもドラゴンが怖くない……か。

 腕の割には随分と素人みたいな事を言うな。

 もしかして…… 

 

「姉さん。ネオくんは部隊を持ってるのか?」

 

「いや。あいつは遊撃だ。誰もあいつに付いていけねぇし、何より誰もあいつの部下になりたがらねぇ」

 

 あぁやっぱり……仲間がいないのか。

 しかも人望も薄いみたいだ。

 

「困ったエースさんですわね」っとローエが言うと「そーなんだよ」っとレイゼが門を潜ろうと歩き出し、みんな彼女に追従する。

 

「だからゼクード。お前なんとかアイツを人として成長させてくれねーか? ネオはたぶん、お前ほどの相手なら話を聞くと思うんだ。現に敬語使ってたしな」

 

「まぁ……姉さんの頼みなら──」

 

「お母様ぁああああああああああああああああああああ!」

 

 いきなり響いた女性の声。

 それは門を潜った遥か先から発されていた。

 見れば黒いドレスを着た女性が銀の長髪を靡かせて、まっすぐこちらに疾走してきている。

 

 誰だ? っと思っていると、先頭のレイゼが片手を上げた。

 

「おお! ロジェール!」

 

 ロジェール!

 じゃああれが姉さんの娘さん!

 たしかに義母(ロゼ)さんをそのまま銀髪にしたような可愛い容姿だ。紫色の瞳は丸くてパッチリしている。そこは姉さんとも義母さんとも似てない。

 

 あとよく見ると彼女の後ろに追従している無表情のメイドさんがいるんだが……彼女はもしかして例のリベカさんの娘エルジーちゃんかな?

 

 顔色一つ変えずにロジェールの爆走についていってる。

 茶色い短髪にヘッドドレスを着けており、眠そうな半開きの茶色い瞳が印象的なメイドさんだ。

 ほんっとに無表情で走ってるから息してるのか心配。

 

「お母様ぁああああああああああああああああああああ!」

「ロジェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエ~ル!」

 

 二人が走り、距離を詰めて抱き合おうとした瞬間にロジェールの視線が俺を捉えた。

 

「きゃあああああああああ! カッコいい人発見!」

 

 まさかの進路変更……というより加速。

 抱き締めようと両手を広げていた前方の母親レイゼを轢(ひ)き飛ばし、まっすぐ俺の方へ向かってきた。

 

 レイゼが「ぶっへぇあ!?」とかいう変な悲鳴を上げて空を舞い、それを目撃した俺や嫁たち・他の女騎士たちはもちろんのこと、あのエルジーもさすがにその無表情を崩して驚愕!

 

「じょ、女王様ああああああああああ!」っと慌てて吹っ飛ばされたレイゼの元へ駆けた。

 

 そしてそんな事態になってるとは露知らないロジェールが俺の元までやってきて、ドレスの裾を掴んで丁寧にお辞儀してきた。

 

「ようこそ【シエルグリス】へ! 私はこの国の王女ロジェール・シエルグリスと申します!」

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