【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「うるせぇな。男ならネオで我慢しとけ」
「嫌ですよあんな根暗で自信過剰で気遣いもロクにできない顔だけの男なんて! まず女性に優しくない時点でダメです! 論外です! でもゼクード様からは優しいオーラが出てるんですよ! 女性に優しいオーラが!」
「え? オーラ出てる? 嬉しいなぁ~」
自分では分からないからこのオーラが出てるという情報は嬉しい。
「そんなオーラあるかバカ。早く行くぞ」
※
シエルグリス城までの道のりは早かった。
レイゼが何かを察したように早足になり、城内へと入っていく。
俺たちも姉の後を追う。
「姉さんなんか急いでない?」
「あの生真面目なリベカが出迎えに来てなかった。こういうとき、何かしら悪いことが起こってる」
断言したレイゼは正解だった。
シエルグリス城内は妙に慌ただしく、大砲の弾やバリスタの矢などを女騎士たちが忙しなく運んでいた。
完全に戦いの準備をしている。
本当に何かあったんだ。
俺も確信してレイゼについていく。
姉は王の間に向かわずリベカを探した。
彼女は二階の執務室にいた。
「リベカ」
「! 女王様! お帰りなさいませ!」
座っていたリベカは立ち上がり、美しい角度で一礼する。
茶色の長髪と茶色の瞳は昔と変わらず、肌の張りも変わらず、18年経ってるはずなのにリベカの見た目は変わってなかった。
か、変わってねぇええええええ!?
姉さんといいリベカさんといい、見た目がなんにも変わってない!
服装だけだ。変わったの。
リベカの服装は騎士のそれではなく白の衣。
鉄製のものは見当たらない。
騎士は引退したのだろうか?
「ただいま。留守をありがとな。にしても珍しいな。お前が出迎えに来ないなんて」
「あ……申し訳ありません!」
「いや責めてるんじゃねぇんだ。何かあったんだろ」
「ええ、実は数日前からA級ドラゴンの被害が相次いでまして……」
「A級ドラゴンの被害? なんだそれ。城壁に穴でも空いたのか?」
「違います。街の外で我が国の騎士たちが被害に遭ってます」
騎士たちがA級ドラゴンの被害に遭ってる?
新人の部隊が襲われたのかな?
でもエルガンディでは基本的に新人のみの部隊は組まない。
必ずベテランの騎士が隊長として就くものだ。
シエルグリスでは違うのか?
「おいおい! 大丈夫だったのかよそいつら!? 怪我は!?」
「それは──」
「おい。今のは本当なのか?」
割り込んできたのはまさかのネオだった。
執務室の扉を開けて入ってきた。
「ネオ!」っとリベカが目を険しくする。
「S級ならいざ知らず……A級に遅れを取るとは。シエルグリスの面汚しめ」
ネオのその言葉にはさすがのレイゼとリベカも苛立ちの顔を見せた。
そして俺も今の言葉は聞き流せなかったので、ネオの前に立って詰め寄った。
「おいネオ」
「!」
「もう忘れたのか? 俺お前になんて教えた?」
強めの口調で言いながら詰め寄り、俺はネオの目を睨む。
するとネオは少し怯みながらも目を逸らす。
「……臆病者の教えなんて」
臆病者?
俺のことか?
ドラゴンが怖いって言ったあれの件か。
やれやれ……
「その臆病者に負けたのは誰だ?」
「……っ」
「仲間を馬鹿にするなって言ったろ。今後は女王様を見習って仲間の安否を先に心配するよう心掛けるんだ。いいな?」
「そんなことして強くなれるのか!」
「今は強さの話しなんかしてない! お前は人としてちょっとダメ過ぎるって話ししてんの!」
「なっ!?」
「今のお前なんか誰も助けてくれないぞ? もっと相手を思いやる気持ちを持て!」
「……」
今度はハッキリと怒りの口調で言葉を叩きつけた。
ネオは納得していない顔だったが、舌打ちしてそれ以上は何も言わなくなった。
「あなたは……?」
「お久しぶりですリベカさん。俺が分かりますか? ゼクードです」
「ゼクード……ゼクード!?」
リベカが驚愕し、思い出したように俺の後ろにいるカティアたちをも見た。
リベカとカティアの視線が重なる。
「久しぶりだなリベカ」
「カ、カティア……さん? なぜ? だって……あなた方は……」
理解が追い付いていないリベカだったが、俺が説明するより早くレイゼが割り込んできた。
「あ~いろいろあって生きてたんだよリベカ。その話は後にして、さっきの話を聞かせてくれ。味方の被害はどうなんだ?」
「あ……それなのですが、死亡4名。重傷者8名にも及びます」
凄い被害だ!
死者まで出てる!
A級ドラゴン相手にここまでの被害が出るってことは、やはり新人の部隊が襲われたに違いない。
可哀想に。
「そんなにもか!? なんだ? A級ドラゴンの大軍でも来たのか?」
レイゼの問いにリベカは首を振った。
「いえ、数は20にも満たないようなのですが、情報では強い個体ばかりだったそうです。ベテランの騎士が4人掛かりでやっと互角だったらしくて」
「4人で互角!? ベテランがか!? そんなのが20体近くいんのかよ!」
「それ本当にA級ドラゴンなんですの?」
黙って聞いていたローエがリベカに聞き「間違いないらしいです」と返された。
「A級ドラゴンの強い個体……前にもいたよね。あの顔に傷がついたA級ドラゴン」
フランベールが思い出しを口にし、俺も思い出して腕を組む。
「ああ、あのディザスタードラゴンの時に現れたヤツか」
一匹だけ動きのイイA級ドラゴンがいたのを覚えている。
そいつはS級ドラゴンを次々と行動不能にしていた。
あんなのが複数いたとすると、確かにベテランでも危ないかもしれない。
「うん。あの……リベカさん。他に情報はありませんか?」
フランベールに聞かれたリベカは机の上にある報告書を見る。
「仲間の話では開戦前にA級ドラゴンのものではない聞き慣れない咆哮が聞こえたそうです」
「S級ドラゴンですか?」
俺が聞くとリベカさんは視線を向けてきた。
「かもしれないと調査に行ったら先のA級ドラゴンたちと遭遇したそうです。蹴散らして先に進む予定だったのですが……」
逆に蹴散らされて今に至るってわけか。
俺も納得して、当のレイゼも納得したように小さく頷く。
「なるほどな……ミオンは?」
「精鋭三人を連れて再調査に向かいました。咆哮の正体を掴むと言っていました」
「たった四人で大丈夫なのか!? その強いA級ドラゴンの群れに当たったら……」
「ええ、ですからミオンには念を押しました。危険だと判断したらすぐ帰還するようにと。あの子、止めても聞かないので……」
「……まぁ、そうだろうな。どのみちこりゃ早急に対処しなきゃならない事態だ。ミオンが帰還したら報告を聞いてそこからみんなで作戦を練るぞ」
「了解です」
「わりぃなゼクード。最悪……力を貸してくれ」
「もちろんだよ姉さん。任せとけ」