【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
街の北東にある墓地に着いた。
石造りの墓石が様々な大きさで立ち並んでいる。
その中でも一際大きな墓石があった。
数は2つ。
右には俺の義母であるロゼ・シエルグリスの名が。
「あ、義母さん……!」
ロゼの名に俺は思わず呟いてしまった。
久しぶりに会えた懐かしい気持ちが沸いてきて、俺はすぐさま手を合わせた。
18年間……墓参りのひとつもしてやれなかった。
長らく心配を掛けて、本当に申し訳ないと心で伝えた。
こんな寝間着姿で申し訳ないとも伝える。
「……いま、お母さんって言いませんでしたか?」
後ろのロジェールに聞かれ、ゼクードは手を合わせるのをやめて振り返る。
「ええ。ロゼ女王様は俺のもう一人の母親です」
「えええええええええええええ!?」
今さらながらロジェールが驚愕した。
ネオとエルジーはとくに驚いていないが、ロジェールが驚いていることにむしろ驚いている様子だった。
「え、え!? も、もう一人の母親って、え? どういうことですか?」
「姉さ──……お母様から聞いてませんか? 自分とレイゼ女王様は腹違いの姉弟なんです」
言われたロジェールはこれでもかと目を丸くして、近くのネオに視線を移した。
「……ネオ知ってた?」
「当たり前です」
「エルジーも?」
「王女様。レイゼ様は何度かあなたにお話しておりましたよ?」
エルジーに淡々と言われたロジェールは冷や汗を流す。
「えぇ……じゃあゼクード様が35歳なのって本当なんですか!? あの妻や子供がいることも!?」
(まだ信じてなかったんだ)
っとゼクード・ネオ・エルジーは同時に思った。
「本当です。とあるドラゴンに氷漬けにされて、そのまま18年すぎちゃったんですよ。だから肉体年齢は17歳なんです」
「え! じゃあ問題ないじゃないですか! ゼクード様! わたくしと結婚しましょう!」
「いや問題しかないですよ! 俺には妻も子供もいるんです! それにロジェール王女は俺の立場だと血縁者だし姪になるんです。結婚なんて無理です」
「姪? あ、ああ! そうですね! うっかりでした。……じゃあ結婚は諦めます」
意外とあっさり諦めてくれた。
「はい。そうしてくれると助かります」
俺がそう返すとロジェールは踵を返して溜め息を吐いた。
「はぁ……好みの男性だったのに……わたくしの叔父様だなんて……」
聞こえてる聞こえてる。
聞こえてますよ王女様。
まぁ、好みの男性って言われるのは悪い気はしないんだ。
俺のことカッコいいって言ってくれた初めての女性な気がするから余計に。
「……ところで王女様。こちらのお墓がレイゼ女王の夫の?」
「あ、そうです! わたくしのお父様です!」
言ってすぐロジェールは屈んで手を合わせた。
エルジーもそれに習って手を合わせる。
俺も習った。
墓に刻まれた名は【リヴ】。
優しそうな名前だなと、俺はなんとなく思った。
あの姉さんが選んだ男性だ。
どんな人だったのだろうか?
一目でいいから会いたかったな。
「このリヴという人は、どのような方だったんですか?」
「……わかりません」
「え?」
「お父様はわたくしが生まれる前にお亡くなりになったそうなんです」
さすがに言葉を失った。
まさか娘が生まれる前に殉職してしまったとは。
どれほど無念だっただろうか。
リヴさんの事を思うと胸が痛くなってくる。
「それは……すみません」
「いえ。お母様が仰るには気弱で貧弱でいくじ無しで優しいだけが取り柄のダメ男だと聞いてます」
姉さん……自分の旦那に対して容赦なさすぎだろ。
「なんでも歳はお母様の10個ほど下の男性だったそうです」
「じゅ、10個も年下の男性!?」
え、ちょっと待てよ?
逆算して考えたら、いま姉さんの年齢は37歳だよな?
ロジェールちゃんがいま15歳だから、姉さんは22歳の時に妊娠したことになる。
当時22歳なら、そこから10歳も年下の男性ってことになると相手の年齢は12歳!?
いやいやいやいや!
姉さんどんだけ年下好きなの!?
いくらなんでも……
『実はゼクード。お前にそっくりなガキを見つけてよ。ちょーっとつまみ食いしたらデキちまった。なっはっはっはっ!』
ふと思い出したレイゼの一言。
あ……そういえばガキって言ってたな。
想像以上に年下だったけど。
でもあの姉さんが俺にそっくりなだけで、男性にそこまで身体を許すだろうか?
ロジェールを生んだってことは、つまりそういうことだし……少なくとも姉さんが好きになるほどの魅力がその少年には有ったんじゃないだろうか?
そう思えてならない。
「一度で良いから会いたかったです。お父様とお婆様には」
静かに、そして寂しさを感じさせるロジェールの声音だった。
エルジーがロジェールを心配そうに見つめる。
そうだよな。
ロジェールちゃんはまだ15歳。
まだまだ甘えたい盛りの年頃だ。
俺が15歳の頃はドラゴンキラー隊の隊長に任命されて、なんかいろいろ世話を焼いてくれるカティアたちに甘えて、そしてカティアで童貞を捨てて、そのままフランベールとローエも抱いて妊娠させてたな。
我ながら凄いやりまくってたな。
計3回だけだけど。
あれ? 何の話だったっけ?
「御気持ちはよく分かります」
俺は即答して、ゆっくりと続けた。
「俺も物心つく頃には父も母もいませんでした。祖母もすぐに亡くなって、ひとりぼっちでしたので……」
ロジェールたちの視線が俺に集中する。
俺はロゼの墓を見つめながら続けた。
「ロゼ女王様もせっかく出会えたのに……すぐに亡くなられて。もっと話したかった。ちょっとくらい甘えたかったですね」
「叔父様……」
「まぁでも、今の俺はもう一人じゃないですからね。三人の妻と、六人の子供がいますから、甘えたいとか言ってられませんし」
「……わたくしも一人じゃないですから、大丈夫です。エルジーが側に居てくれるし、みんな優しいし、お母様は大好きですから」
お母様は大好き、か。
レイゼは娘に好かれてるんだな。
確かに娘の事を語るとき、レイゼからは溺愛レベルのものを感じたからそうなのだろう。
義母が生きていたら、レイゼと義母もこんな風に仲良くなれていたのかもしれない。
「お母様のこと、やっぱり大好きなんですね。王女様は」
「はい! お母様といると本当に……幸せでたまらない気持ちになるんです!」
ロジェールは満面の笑みでそう答えた。
娘にここまで言わせるとは。
レイゼの愛情はちゃんとロジェールに届いているということか。
凄いな姉さんは。立派な母親をやっている。
俺もいつかカーティスたちに同じ事を言ってもらえるだろうか?
……いや、無理だな。
時間が過ぎすぎてる。
「だからわたくし、お母様の期待に応えられるようちゃんと勉強して! 剣の腕も磨いて! 良い男を捕まえて! 立派な三代目女王になります!」
素晴らしいほどやる気満々だ。
これはシエルグリスの将来も明るいな。
「良い心掛けですね王女様。側で支えてくれるエルジーちゃんと、ドラゴン退治ならお任せのネオもいる。これはシエルグリスもまだまだ安泰ですね」
俺の言葉にネオは「ふん……」と満更でもない鼻息を吹いた。
任せろと言わんばかりの頼もしい鼻息だった。
「えへへ、ほんとそうですよ~。エルジー。ネオ。これからもよろしくね!」
「もちろんです。王女様」
「……」
いや返事しろよネオ。
ノリの悪いヤツだなぁ。
言われるまでもない、て顔してるけど口に出せ。
「そういえばエルジーも叔父様に聞きたいことがあるって言ってなかった?」
唐突に思い出したようロジェールが言い、当のエルジーも「あ!」っと思い出したように口を開いた。
「ぁ、あの……ゼクード様」
「ん?」
「【エドガード・セラン】という騎士をご存知ですか?」
「エドガード……」
あれ?
なんか聞いたことあるような、ないような?
【ヨコアナ】生活の時に騎士団を任されていたから、曖昧ながらに部下たちの名前はある程度は覚えている。
確か居たような気がする。
「居たかもしれないなぁ。あんまり覚えてないけど」
「では【ローグ・セラン】というお名前はご存知ですか?」
ローグ・セラン?
もしかして40個くらい技があるとかなんとか言ってたテンションの高いあの若い騎士の事かな?
「ああ、彼なら知ってるよ。ついこの間いっしょに任務をこなしてたからね」
言うと無表情だったエルジーの顔に少しだけ変化が起きた。
嬉しそうに微笑んだのだ。
「あぁ……良かった。その人は私の兄なんです」
「へ!?」
兄!?
ローグがエルジーの!?
え?
兄妹なの!?
エルジーって、リベカさんの娘だよね?
二人生んでたってこと?
ん?
あれ?
でもなんで兄のローグがエルガンディに居るんだ?