【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「兄妹なんだ。え、じゃあなんでローグくんは【エルガンディ】にいるんだい? 出身は【
「それは……」
「あ、もしかしてローグくん他所の国に憧れて【エルガンディ】に来たって感じ?」
若いから有り得るよなぁ。
俺も見知らぬ世界はワクワクするし、そこに行ってみたくなる。
「違います。兄が向こうにいるのは……私の両親がそもそも離婚しているからなんです」
「え!? 離婚!?」
予想外に重い単語が出てきた。
まさかの離婚とは。
でもあの生真面目なリベカさんが?
信じられない。
相手の男性は浮気でもしたのかな?
「ぁ、でも、離婚……っていうと、ちょっと違うんですけど、その……」
「んん?」
なにやらエルジーは答えにくそうだ。
離婚とはちょっと違うって、どういうことだ?
「私の両親は……結婚する前に別れてしまったらしくて」
「あぁ……」
なるほど。
結婚する前に別れちゃったのか。
で、やることはやってたから子供だけ生まれたってことか。
俺もフランベール・ローエ・カティアと結婚する前にやることやってたから人のこと言えんけど。
「……なんで、別れちゃったの?」
「わかりません。母は父と別れた理由を今でも教えてくれませんでした。聞けば不機嫌になるんで、最近は聞かないようにしてるんですけど……」
教えてくれないのか。
まぁ、親としても子供には言いづらいんだろうな。
別れた理由なんて、そんなペラペラ言うもんじゃないだろうし。
「でも最近やっと教えてくれたのが兄の存在でした。母は、父に会うのは絶対に許さないって言ってたんですけど、兄に会うなら許すって言ってくれたんです」
父に会うのは絶対に許さないってそんな。
リベカさんがそこまで相手の男性を嫌うなんて……まぁ、そもそもリベカさん男性が苦手そうだったし、それも理由としてありそうだな。
でも娘にとって父はやはり父だろうに。
「それで俺にローグくんの事を聞いてきたんだね」
「はい」っとエルジーは頷いた。
「どうかお願いですゼクード様。次【エルガンディ】に帰還する際は私も同行させてください。兄に会ってみたいんです」
「いいよ。一緒に行こう。帰るときは声掛けるよ」
「ありがとうございます!」
「良かったねエルジー!」
ロジェールに言われたエルジーは満面の笑みで「はい!」と答えた。
まったく表情が動かないエルジーだが今回はさすがに別だった。
よほど嬉しいのだろう。
「できれば父にも、会いたいんですけどね……」
※
夜が明けて【エルガンディ】は朝を迎えた。
【東の領地】にあるローグの一軒家に陽射しが差す。
窓から入る日光に顔を照されローグは目を覚ました。
「ん、まぶし……朝か」
今では誰も起こしてくれなくなった朝。
昔は父が必ず起こしてくれたのだが、その父はもうこの世にいない。
父は騎士だったが殉職ではなく、病に倒れた。
あんなに元気だったのに、人間は死ぬときはあっさりしているものだ。
そして人間は慣れる生き物だ。
父が死んで一人になったローグはしばらく朝起きる度に父を思い出しては泣いていたからだ。
今ではもうそんなことはない。
ローグはベッドから起きて身なりを整えた。
干し肉をかじりながら鎧を着ていき、ロングブレードを装備する。
そして家を出た。
今日は任務はない。
カーティスに稽古をつけてもらおうと考えている。
そのため街の石畳を【南の領地】に向けて踏んでいく。
通行人を避けながら歩き、ローグはフと思い出した。
『ローグ……お前、強くなったら、母さんと妹のところに行ってやってくれよ』
当時はまだA級騎士ですらなかったローグだが、それ以上に自分に母と妹が居たことに驚きを隠せなかった。
確かに疑問には思っていた。
なぜ自分には父がいても母はいないのか?
聞いてもいつもはぐらかされていたから、いつの日か聞くのをやめていたが。
まさかここに来てカミングアウトされるとは思ってもなかった。
あの時は父が病に倒れて死ぬ少し前だ。
今思えば、あの時すでに父は自分の死を分かっていたのかもしれない。
『母さんの名はリベカだ。双子の妹はエルジー。【シエルグリス】に行く機会があったら探してみなさい。息子のお前が相手なら母さんもきっと会ってくれる』
『オレか? オレはダメだ。母さんに嫌われちまったからな』
『浮気じゃねーよ。オレは今でも母さん一筋だよ。他の女にはまったく興味が沸かなかったからな』
『だからお前……もし母さんと妹が困ってたら、力を貸してやってくれよ。本当はオレがやりたかったけど、あいつはオレを許してくれなかった』
……いつか母と妹に会うために、力になるために今日まで頑張って【SS級騎士】になった。
そろそろ胸を張って会いに行ってもいいだろうか?
でもどんな顔をすればいいんだろう?
会ってもパッと見で母と妹だと分かるのだろうか?
母は自分と同じ茶色の髪をしていて茶色の瞳をしているとか。
そんな茶色の髪の人とかたくさんいるし、茶色の瞳だってたくさんいる。あんまり参考にならない。
まぁリベカとエルジーだと名前は分かっているのだから、聞き込みで探せば見つかるはず。
いつ会いに行こうか?
そう考えながら歩いていると、いつの間にか【南の領地】にあるカーティスの家の前についていた。
そこには怖い顔をしたカーティスがいて、グロリアが彼の家のドアを修理していた。
その光景にローグもまたか、と察した。
「ドアノブは優しく回せって何度言えば分かるんだお前は? 父さんに報告しておくからな」
「ちょ! やめてよ! この間それで怒られたばっかりなのに!」
「だったらそろそろ力加減を覚えたらどうだ? ドアノブの修理は覚えたんだからそれくらいできるだろ?」
「……普通に回してるだけだもん」
「なんだって?」
「な、なんでもないわよ! すぐ直すからあっち行っててよもう! ほらローグ来てるわよ!」
言われたカーティスは不機嫌な顔のままローグに視線を向けた。
最悪だ。めちゃくちゃ機嫌悪いぞこれ。
しかし慣れてるのでローグは引かない。
「ローグか。なんの用だ?」
「んん! 今日も稽古をつけてもらおうと思ってな! 勝負だカーティス! おれの58個の技を見せてやる!」
「断る。朝からそこの
「えぇ……じゃあゼクードさんは?」
「父さんなら今【シエルグリス】にいる」
「【シエルグリス】!? それ本当か!?」