【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
【シエルグリス】にミオンが帰還したのは、ちょうど昼に差し掛かってからだった。
母の帰還をずっと門の付近で待っていたネオは、外傷のないミオンを見て安堵する。
しかし連れの仲間が見当たらない。
三人ほど連れていたと聞いていたが、まさか……
「ミオン様! お疲れ様です!」
門番の女騎士二人に敬礼され、ミオンは「お疲れ」と敬礼を返した。
「あの……レマさんたちは?」
恐る恐る門番が聞くと、ミオンは顔を曇らせる。
「ごめん……みんなやられたの。生き残ったのはアタシだけ」
「な! そんな! レマさん達が!?」
「精鋭ですよ!? なんで……」
「……新種のドラゴンに襲われたの。とんでもない強さだったわ。数は4体。女王様へ報告に行くわ」
「は……はっ!」
門を潜ったミオンと、その先で待っていたネオは、ついに視線が重なった。
ミオンは驚いたのか、目を少し大きくした。
「……」
「……」
束の間の沈黙。
『おかえり』『ただいま』……そんな親子なら普通に交わすであろう挨拶もせず、ミオンはネオから視線を外して城へと歩き出す。
「咆哮の正体はその新種の4体だったのか?」
呼び止めるようにネオが聞くと、ミオンは足を止めた。
「……4体の内の1体。早急に対処しないと危険だわ。A級ドラゴンの数も前より増えてた。あいつら仲間を集めて【シエルグリス】を襲うつもりなのかもしれない」
「なら僕が行く」
「な! 何言ってるの!? 一人じゃ危険よ!」
「早急に対処しないと危険なんだろ?」
「パッと見ただけでも数は100を越えてたわ! そのどれもが強い個体かもしれない! いくらアンタでもやられるわ!」
「僕をあんたら凡人と一緒にしないでもらおうか?」
口をついて出てしまった。
あれだけゼクードに仲間を見下すなと注意されたのに。
内心後悔したが遅く、目前のミオンはギリッと拳を握り締めた。
「あんた……っ!」
今にも殴ってきそうな怒気を発している母だが、自分より弱いと分かっている相手に怖がる道理はなく……ネオは後には引けぬ思いで口を開いた。
「僕が居たらその新種の4体。その場で狩り尽くしてやったのにな。残念だ」
「……」
「そうすれば連れの仲間が死ぬこともなかったろうに」
この一言は完全に余計だった。
次の瞬間にはミオンに頬を殴られ、ぐらりと倒れそうになる。
しかし踏ん張って前を見ると、そこには何かに驚愕しているミオンがいた。
人を殴っておいて何に驚いているのか?
その答えはすぐにわかった。
ネオを殴ったのはミオンではなく、突如として現れたゼクードだったからだ。
「この大バカ野郎! なんでお前はそんな言い方しか出来ないんだ!」
今までとは桁の違う本気の怒声だった。
あのゼクードが本気で怒っている。
さすがのネオも全身が戦慄した。
人間相手にここまでビビったのは正直初めてである。
ゼクードはネオの胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「仲間を見下すのはやめろって俺はそう言ったよな! こんなことを続けてたら誰もお前を助けてくれなくなるって!」
「そ、それは……っ!」
口が滑っただけ……なんて言い訳が、今ここで通用するはずもない。
「何度も同じ事を言わせるな!」
ゼクードに本気で怒鳴られ、突き放されたネオは地面に尻餅をついた。
怖かった……自分より強い相手だからだろうか?
父親のいないネオには未経験に近い恐怖だった。
突き放された今でも身体が小刻みに震えている。
「あの……」っとミオンが声をかけ、振り返ったゼクードがお辞儀する。
「あ、お久しぶりですミオンさん! 無事で良かったです!」
「……誰?」
「え!? あ! 覚えてませんか? ゼクードです! 姉さ──レイゼ女王の弟です!」
「レイゼちゃんの弟?」
「思い出しました?」
「ううん。全然」
「そ、そうですか……」