【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「新種のドラゴンが4体!? マジか!」
地獄のような道筋を得て、ようやく辿り着いた【女王の間】。
そこでミオンが持ち帰った情報を話て今に至る。
「うん」っと頷いたミオンは続けた。
「【爪の長い四本腕の二脚】と【全身刃物みたいな尻尾の長い四足】と【翼を持った顔の大きな四足】。そして例の咆哮の正体だった【翼のドラゴン】。みんな見たことない緑色のドラゴンだった。そのうちの2体と交戦して、みんなやられた……」
「マジかよ……」
レイゼは絶句する。
その隣に立つリベカも。
ミオンは構わず淡々と告げた。
「A級ドラゴンの数も増えてた。早めに叩かないと大変な事になるよ」
「なら急いで討伐部隊を編成するか。リベカ」
「はっ」
「待て」っとネオがリベカの行く先に立った。
「僕が行く。一人で十分だ」
「またあなたはそんなことを……今回は単体ではないのですよ? 取り巻きだって100を越えてるのに単騎では危険です!」
「仲間なんていらん。守る対象が増えて面倒なだけだ」
またこいつは素人みたいなことを。
俺はネオの肩を掴んでこちらに向かせた。
「バカを言うなネオ。S級ドラゴンが4体もいるんだぞ。4体もいれば普通に国が滅ぶ。最悪、人類滅亡だ。これはみんなで力を合わせて対処すべき問題なんだ。お前一人が背負う問題じゃない」
「……」
ネオは何かを言い返そうとするが、言葉にできずに呑み込んだ。
息子が反論しなかったことが不思議だったのか、ミオンはゼクードを見つめた。
そんな彼女の視線には気づかず続ける。
「S級ドラゴンが相手となると半端な騎士だと歯が立たない。だからお前の力も絶対に必要になってくる。誰よりも危険な場所に立たなきゃいけないんだ」
「だから僕が先に行って討伐すれば解決でしょう? 危険な場所だと言うなら同じことです」
「バカ野郎。成功率を下げるような真似はするな。それでお前が負けたらどうするんだ?」
「僕は負けません!」
「自惚れるなよネオ。お前の身体はお前だけの物じゃないんだ。騎士なら肝に銘じておけ」
良く言えば自信家。
悪く言えば自信過剰。
そんな危なげないネオだが【シエルグリス】の最高戦力なのは間違いない。
それは俺も直接戦ったから分かっている。
だからこそ、なのだ。
替えの利かない【最高戦力】だと言うことを自覚しなければならない。
自分が倒れたら後ろのみんなどうなる?
エースと言えばカッコいい響きだが、それ相応の責任がある。
まだネオはそのへんを理解していない。
自分の命が、自分の実力が、どれほどの人間を救えるか。
今は説教をかます時ではないと、俺はネオから視線を外してレイゼに戻した。
「女王様。今回の件は攻められる前に攻めた方が良いと思います。A級ドラゴンも強いとなると討伐隊に精鋭を多く回しましょう。手薄になる【シエルグリス】の守りには俺が付きます」
「すまん。助かるぜ」
「いえ。エルガンディにも何人かの援軍を要請しておきましょう。S級ドラゴンが4体なら徹底的にやらないと負けます」
「え!? いえ! そこまでしてもらう訳には……」
「待てリベカ」
「女王様?」
「ここは経験者に従うぜ。エルガンディの騎士たちはみんな強い。助けてもらえるなら助けてもらおう。滅んでからじゃ遅いからな」
「は、了解しました」
「ミオン。帰って来て早々で悪いが、明日にはまた出てもらうぜ」
「……」
当のミオンはじっと俺を見つめていた。
理由は分からないが、凄く見られている。
なんだろ?
「おいミオン?」
「え!?」
「お……大丈夫か? 明日また出てもらうが……」
「あ、うん。大丈夫」
「ならいいけどよ……」
レイゼは心配そうに話を切ったが、やはりミオンはどこか上の空だった。
「ではネオとミオンを中心とした精鋭部隊を編成します。よろしいですね?」
リベカに問われ、レイゼは玉座を立った。
「ああ頼む。国の防衛連中にも気合い入れろって伝えておいてくれ」
「はっ」
※
「──というわけでしばらく【シエルグリス】に協力することになった」
俺は妻のローエ・カティア・フランベールに成り行きを説明していた。
湯煙の立つ【大浴場】で。
もちろんみんな裸である。
いつか見た白い大理石のタイル。
それが張り巡らされた【大浴場】は改良されていた。
あの狭かった過去の湯船ではなくなっており、ちゃんと名前の通り大きな湯船へと変わっていた。
おかげで四人で足を伸ばしてもぜんぜん平気な広さを保っている。
素晴らしい。
湯加減もちょうどいいし、何よりお湯が透き通っている。
ローエたちの美しい肢体が丸見えだ。
タオルなどはいっさい巻いてないから見放題。
──なのだが、さすがに何度と見てるのでありがた味は薄い。
しかもローエたちも俺に全裸を見られても今さら恥ずかしがるわけではないからつまらない。
昔の俺に言ったら殴られそうなくらい贅沢な悩みだと思いつつ、俺はそれでも妻たちの美しい胸などを見る。
「4体もS級がいるなら仕方ないね」
フランベールが言うと、ローエは残念そうにヘソの下を撫でた。
「わたくし達も妊娠してなかったら手伝いますのに……」
そんなローエの隣に座るカティアが肩に湯を掛けながら言う。
「万が一ここを直接攻められたら、私達も戦わざるを得ないかもしれんな」
さすがにそうなると危険だ。
でも、そうならないとも言い切れないのが現状だ。
翼を持ったドラゴンが2体もいるなら、上空からの奇襲で有り得る。
「そうだな……翼を持ったドラゴンには城壁なんて関係ないからな。まぁそれは置いといて──」
翼を持ったドラゴンはたったの2体だ。
たった2体ならなんとかなるだろう。俺もいるし。たぶん。
それに問題はそこじゃない。
これから討伐部隊を率いるネオとミオンの件が心配だ。
ちゃんと協力し合えばいいのだが……各個撃破されてここまで攻め込まれたらシャレにならない。
心配だな……俺が出て、ミオンさんに着いてきてもらえば良かったかな?
でもネオが大人しくここで留守番してるのかも怪しいし。
いやそれより何より──
「──なんであんなに仲悪いんだろうな」
俺はネオとミオンの関係を呟いた。
俺の隣に座るフランベールが首を傾げる。
「ネオくんとミオンさんの話?」
「そうそれ。ローエとカティアでもあそこまで険悪じゃなかったよな?」
「いや? あんなもんだったぞ」
「ですわ」
「え~……そうだっけ?」
元から仲良く見えてたしなぁ俺。
「今はこんなことを出来る仲ですわ。ね、カティア」
まるで恋人のようにカティアに身を寄せて、肩に顔を預けたローエ。
凄い光景だ。
昔のローエとカティアに見せてやりたい。
「熱い。離れろ」
口だけで無理矢理離そうとはしないカティアだったが、ローエはクスクス笑いながら身を離した。
「俺……正直なんでネオとミオンさんがあんなに仲悪いのかまだ知らないんだよな。姉さんとかに聞こうと思ってもみんな忙しそうで聞くタイミングが無くてさ」
「ああそれなら私がネオとミオンの情報を集めておいた」
「ホントかカティア!」
「あのネオの態度が気に食わなかったのでな。親のミオンは何をしているんだと思って街中で聞いてみた」