【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第252話【空】

 ローエ・カティア・フランベールと熱く幸せな夜を過ごした俺は、そのまま三人と寝て翌日を迎えた。

 

 寝間着からいつものオリハルコン一式とロングブレードの【ブレイブエルガンディ】を装備する。

 

 果たして、寝室でまだ寝ている妻たちを置いて、俺はネオとミオンのいる城壁の門へと向かった。見送りだ。そろそろ出撃の頃だし。

 

 俺は城から外へ出た。

 日が昇り始める時刻で、空気はやや冷たいが澄んでいる。

 澄んでいるのだが……なんか嫌な雰囲気だ。

 

 静か過ぎる。

 小鳥さえ飛んでいない。

 なんだ?

 

 外の妙な雰囲気に疑問を抱きながら俺は門へ足を運ぶ。

 すると門の前は予想通りギスギスした険悪な空気が蔓延していた。

 ネオとミオンである。

 この妙な外の雰囲気はこの二人のせいだったらしい。

 

 睨み合ってやまない親子二人に、周りの女騎士たち約200人が困り果てていた。

 そこにはレイゼとリベカの姿も。

 

 あ、姉さん来てたんだ。

 

「ゼクードさんゼクードさんって。アンタ相当あの黒騎士になついみたいね。珍しい」

 

「なついた? 違うな。あの人は本物の実力者だ。言葉を聞く価値があると思っているだけだ」

 

 しかも俺の話題かよ! やめてよ!

 

「ミオン! ネオ! 今回はあなた方二人が中心となって連携をとって貰わないと困るんですよ! ケンカばっかりしてないでしっかりしてください!」

 

 痺れを切らしたかのようにリベカが怒鳴った。

 どうやらかなり長いことやらかしてるようだ。あの険悪親子。

 

「リベカ大臣。この大袈裟な戦力はなんだ? 僕にこれだけの奴らを守れと言うのか?」

 

「相手は強い個体らしい100を越えるA級ドラゴンの群れです。そこにS級が4体も加わるとなるとむしろ少ない戦力ですよ。それだけあなたをアテにしている構成です。何か文句でも?」

 

「……ふん」

 

 リベカに言われて押し黙ったネオだが、ふと俺と目線が重なった。

 昨日カティアにネオの事を聞いたからか、彼の顔が妙に可愛く見えた。

 あんなにミオンを嫌ってるのに、強くなった根元がそのミオンの笑顔が見たかったからとは。

 

 本当はネオは母親の事が大好きだった。

 その事を知ってしまったから、あんなに生意気でも可愛いげが出てくる。不思議なものだ。

 

「ゼクードさん?」

 

 ネオのその一言に反応して、みんなが一斉に俺へ視線を集中させた。

 中でもレイゼが目を丸くする。

 

「なんだお前。起きてたのか?」

 

「いや、まぁ、ちょっと心配だったから見送りに来たんだけど……」

 

 頭を掻きながら苦笑していると、周りの女騎士たちから声が。

 

「見て。例のゼクードさんよ」

「生きてたんだ」

「顔が変わってないわね」

「あのネオが敬語を使う人よね。凄いわ」

「ネオが認めてるってだけで凄いわよ」

 

 ヒソヒソとなんか色々言われてるが聞こえない。

 カッコいいとか言ってくれてないかな?

 

「そうか見送りか。ありがとな。けど見ての通りモタモタしてる」

 

 レイゼが呆れながら肩を竦めた。

 すると隣のリベカも露骨な溜め息を吐いた。

 

「昔のレイゼより酷いです」

 

「うるせぇな。オレを出すんじゃねぇ」

 

「はは……」と俺は視線を空へやった。

 ギスギスした空気はわかった。

 でも、こんなのでここまで外が静かになるものだろうか?

 

 嫌な予感がする。

 この不気味な静けさはなんだ?

 まさか……

 

「母さ──ミオン隊長はできるだけ他の奴等のカバーに回ってくれ。僕がいつでも助けられるとは限らないからな」

 

「カバーするのは当然だけど、守る対象として見るのはどうなの? みんな戦力よ」

 

「セシリ・レマ・ティエリが簡単にやられたんだろ? あいつらより弱いこいつらを戦力とは呼ばない。連れていっても犠牲になるだけ──……?」

 

 どうやらネオも気づいたらしい。

 空を見て顔を険しくした。

 

「……? ネオ?」

 

 言葉を途中で切ったネオに怪訝な顔をするミオン。

 しかしようやくミオンも気づいたらしく、彼女も空を見上げた。

 

「静かだ」

 

 ネオが言うと、周りの女騎士たちが「え?」っと言う。

 

「分からないのか! 素人どもが!」

 

 ネオが怒鳴り上げ、周りの女騎士たちをビクかせた。

 

 お前も気づくの遅かったけどな、と内心でネオに突っ込んだ俺はレイゼとリベカに近づく。

 

「リベカさん。姉さんを連れて城へ。ここは危険かも知れません」

 

 言った刹那……()()()()()()()咆哮が轟いた。

 

 それは真上の遥か上空で聞こえた。

 みんながその咆哮に驚く中で、俺は人一倍に戦慄させられた。

 

 似ている。

 似すぎている。

 この咆哮……あのディザスタードラゴンか!?

 生きていたのか!?

 

 そんな馬鹿な!

 似ているだけだろう?

 そうであってくれ。

 

「おいこの咆哮は!」

 

 レイゼがミオンに声を投げると彼女は頷いた。

 

「空にいる! 例のS級の一体だよ! レイゼちゃんもリベカちゃんは城へ避難して! 早く!」

 

 空に敵がいる事が判明した。

 よく見れば小さな点が見える。確かにいる。

 しかも2体。

 

 どうやらディザスタードラゴンではないようで一安心……でもない状況だが。

 

「前方に敵を確認! 赤い! A級ドラゴンの群れです!」

 

 門の胸壁から見張りが声を上げた。

 門の先を見れば確かに赤い竜鱗の群れがいた。

 

 さらに空から炎のブレスが飛来し【シエルグリス】の住宅群を破壊し、そこから悲鳴が広がった。

 

 来やがった!

 空と地上の挟撃とは!

 

「くそ! 正面の敵はここの部隊に任せる! 空の敵はオレたちでやるぞリベカ!」

 

「了解。【魔法大砲】を用意させます」

 

 一方的に言い放ってレイゼとリベカは城へと走って言った。

【魔法大砲】があるのか。

【エルガンディ】からの技術提供だろう。

 

 とりあえず空の敵は姉さんたちに任せよう。

 俺にはどうすることもできない。

 やれるのは地上戦。

 

 ここはネオたちの戦列に加わろう!

 

「ゼクードさん! 行きましょう!」

 

 ネオが言って先行した。

 さすがの速度だ。

 

「ああ! みんな! 俺とネオが先行する! 打ち漏らしを頼む! 街に近づけるなよ!」

 

 突然の俺からの指示に戸惑いながらも「りょ、了解!」とすぐに答えた女騎士たちは走った。ミオンも。

 

 しかしその時、俺は気付かなかった。

 空から街へ降下する2体のドラゴンの影に。

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