【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第253話【息子の背中】

 空からのブレスは何発も城壁内部に叩き込まれ、轟音が背後で鳴り響く。

 城壁内にいるロジェールとエルジーの顔が一瞬だけ浮かんだが、空にいる敵に対してはどうにもできない。

 

 あんな遥か上空で攻撃とは卑怯な。

 

 自分が手も足も出ない事自体が腹立たしいが、あれは【魔法大砲】に任せよう。

 

 ネオは走りながら前を見る。

 前方のドラゴンは約100を越える大群だった。

 それにたった二人で先陣を切るネオとゼクード。

 

 ネオはゼクードよりも討伐数を上回ることを暗に目指していた。

 故に彼よりも早く先行して前に出たが、ゼクードはすぐに追い付いてきた。

 

 ネオは驚いた。

 何の障害物もない草原で、全力で突き放したつもりだったのに。

 ゼクードの速度は自分と同じ……いや、もしかしたら、負けている?

 

 考えたくもない事実が脳裏を過った。

 自分がスピードで負けるなんて、有り得ない。

 考えたくない!

 

 だが今はすでにゼクードが隣を走っている。

 追い付かれて、並走している。

 当たり前のように追い付かれた。

 

 ショックは大きかったが、受け入れなければとネオは自身を叱咤した。

 相手の力量を受け入れなければ、自分はあの女──ミオンと同じだと思ったからだ。

 

 皮肉にも母の情けない性格がネオにとって反面教師として機能した。

 おかげでかなり冷静になれた。

 

 そして思う。

 自分は今、あの伝説とも言われた黒騎士ゼクードと肩を並べて前線に向かっている。

 

 その事実が誇らしく、自身の実力に優越感さえ覚えた。

 凡人では成し得ないであろう『英雄の隣に立つ』ということ。

 

 そしてその英雄が味方であり、今までに感じたこともない安心感をネオは感じた。

 

 守らなくても大丈夫。

 気を配らなくても大丈夫。

 放っておいても大丈夫。

 

 ……これが別の味方だったらそうはいかない。

 

 常に気を張り詰めさせ、余計な緊張を使わせられる。

 それが嫌で弱いヤツらとは組みたくなかったし、組まなかった。

 

 だがこの人は違う!

 

「ネオ! 空の敵は女王たちに任せる。俺たちは二人で前方の敵を叩く。押された場合は城壁の大砲らが届く距離まで引く。いいな!」

 

 隣のゼクードに、押された場合の展開まで指示を出された。

 このメンバーで押されるなんて有り得ないと思うのだが、そこまで考えて動くのがベテランという奴なんだろう。

 

「了解」

 

 返事をしてから剣と短剣の二刀【ジニアス】を抜刀。

 肉薄したA級ドラゴンの一匹をすれ違い様に斬る!

 

 首を切断されたその一匹は敢えなく倒れ、続けざまに迫り来る二匹を容易く両断した。

 

 確かにこのA級ドラゴンどもは動きが違う。

 通常のA級とは明らかにスピードが違った。

 だが所詮その程度。

 

 速くなっただけの単調な動き。

 それはもはや見飽きた動き。

 何度も見た攻撃だ。それが速くなっただけで当たるほど自分は遅くはない。

 

 奴等の爪や牙を掻い潜り【真】の付く【気】を纏わせた回転剣舞で10のドラゴンを切り裂いた。

 

 あっという間に13匹。

 しかし前方にはネオより先に進んだゼクードが20匹目のドラゴンを討伐していた。

 

 速い!

 もうあんなに!

 

「くそっ!」

 

 瞬時に込み上がった悔しさが口を突いて出てしまったが、言ってる場合ではない。

 またゼクードが殺到するA級ドラゴンを蹴散らした。

 

 差が広がっていく。

 

 彼の戦闘を間近で見たのは初めてだが、流石としか言い様がない。

 天才を自負する自分でも見惚れてしまう強さだ。

 

 くそ! 僕だって!

 

 

 ミオンは……前線で暴れるネオとゼクードを呆然と見ていた。

 あのA級ドラゴンは強い個体のはずだ。

 なのにまるで相手になっていない。

 

【エルガンディ】の最高戦力と【シエルグリス】のトップエース。

 その二人が組むと、こうも強いとは。

 

 息子の背中が遠い。

 どうしてこうも追い付けないのか。

 

 騎士としての鍛練を怠ったのは妊娠した数ヶ月だけだ(レイゼたちに無理矢理止められた)。

 

 残りの何年もの月日は全て強くなるために費やしてきた。

 それでもネオに抜かれ、置いてかれ、今はこうして息子の背中を眺める哀れな雑兵と化している。

 

 私の人生は……いったいなんだったんだろう?

 

 虚しさが胸の奥で込み上がってくる。

 

『よく頑張ったなミオン。お前が居ればレイゼの世代は安心だ』

 

 最後に聞いた先代女王ロゼの言葉を思い出す。

 おかげで泣き出しそうになったが、万が一息子に見られては嫌だと堪えた。

 

 才能というものが本当にあるなら、なぜ自分には無かったのだろう?

 

 なぜ才能のない自分から、あんな強い子供が生まれたのだろう?

 父の遺伝子のおかげか?

 確かに彼は強かったが、じゃあ自分は?

 

 ──……確かに自分は、強い子を望んだ。

 

 でも、あんなに……自分より圧倒的に強くなるなんて。

 

 悔しい。

 

 へその緒で繋がっていた時はあんなに小さかった赤ちゃんが、今では自分より大きくなって、自分より強くなるなんて悔しい。

 

 抱き癖があって、下ろすとすぐ大泣きして、乳離れも遅くて、夜泣きばっかりで……オッパイを飲ませて満足したら用済みとばかりに素っ気なくなる。

 そんな赤子だった。

 

 自分がいなきゃすぐ死んでしまいそうだったのに。

 

 なんでそんなのに、私は負けてるの?

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