【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
道中のキャンプを経て、ローグたちは早朝すぐに【シエルグリス】へと向かっていた。
もうすぐ母と妹に会えると心が高鳴る。
しかしそれも不安と期待とが入り交じっていて複雑だったりする。
どんな顔して会えばいいか?
未だに悩んでいる。
まぁ、会えばなんとでもなるだろう。
そう自己完結させた時、隣で馬を駆るグロリアが叫んだ。
「……! ねぇ! あれ見て!」
ようやっと見えてきた【シエルグリス】だが、そこは黒煙が上がっており、ただならぬ事態が起こっていることを安易に想像させた。
ローグ達が走る街道の先にはA級ドラゴンの群れが【シエルグリス】の部隊と戦っている。
しかしA級ドラゴンの死体が山ほどある。
残っているのは数十体のみ。
どう見ても人間側が優勢だった。
ではなぜ街から黒煙が?
「なんだ? A級ドラゴンの群れ? でも勝ってねぇか?」
レグナが言うとレミーベールが【シエルグリス】に指を差した。
「よく見て! 街から黒煙が上がってるわ!」
「空からも攻撃されてるみたいだよ! きっとS級ドラゴンだ!」っとリイド。
「おいおいマジか! またかよ!」
レグナが言って、ローグは心臓が激しく脈動し始めた。
城壁越しから戦塵が舞い上がる光景を見た。
街中にドラゴンが侵入してる!
母さんと妹が危ない!
「みんなスピードを上げろ! 街へ入る!」
確信したローグは手綱を引き馬を走らせた。
先行したローグに続いてレグナたちも加速する。
「待てよローグ! 街に入ってどーすんだよ!」
レグナの問いは愚問だった。
どう見ても優勢な外でのあの戦闘に加勢するよりも、どうなってるか分からない内部を見た方が良いに決まってる。
「戦塵が見えた! ドラゴンは中にもいる! そこに加勢するんだ!」
「マジか! わかった!」
思ったよりもすぐに順応したレグナはローグに追従する。
「お母さん……無事でいて!」
「急ぎましょう!」
グロリアとレミーベールの呟きを聞きながら迂回し、外での戦闘に巻き込まれないよう【シエルグリス】の門へと入ってい行った。
※
圧倒的優勢で、もはやA級ドラゴンの残りは数十体。
あとはネオに任せておけば大丈夫だろうと、ゼクードはフと門を見た。
「!?」
そこには馬で門に入っていくグロリアとレミーベールが見えた。
レグナやリイドたちもいる。
「グロリア? レミー? どうしてここに?」
理由は分からないが、確かに娘二人がレグナ・リイド・ローグを連れて【シエルグリス】へ入っていたのを見た。
城にいる妻たちが心配だったが、助かった。
グロリアとレミーベールに任せよう。
そう思った瞬間に、その【シエルグリス】の門が巨大な火球によって破壊された。
「なっ!?」
見れば緑のドラゴンが翼を羽ばたかせ、こちらへ来ていた。
奴の攻撃で門が破壊され、国の出入口は炎の上がる瓦礫の山と化した。
退路を断たれた……というより街への救難を妨害された、と見るべきか。
幸いにもレグナやリイド・ローグたちが入っていくのも見えたから、彼らが居れば中は大丈夫だろう。
俺は近くで魔法の弾幕を貼るネオやミオンに習って【ダークマター】を撃った。
しかし緑のドラゴンは速く、舞うように攻撃の全てを避けられた。
「くそ! こいつ!」
速い……なんて飛行能力だ。当てられない。
こっちの射程内まで降りてきたと思えばこれか。
地上にさえ落とせれば勝機はあるのに!
そこで俺は気づいた。
味方の女騎士たちが魔法を撃っていない。
ミオンと数名しか撃っていない。
それを見て俺はようやく思い出した。
女性は基本的に魔法は使えない。
地上だけの弾幕では圧倒的に手数が足りなかった。
しかしバリスタや大砲が届く距離でもない。
嫌な位置を陣取られている。
このままじゃ一方的だ。
【魔法大砲】で撃ち落としてくれれば勝てるのに。
だがこんな速いヤツにどうやって当てるんだ?
当てれるほどの狙撃主が【シエルグリス】にいるのだろうか?
フランベールならあいつを撃ち落とせるかもしれないが、弓とは勝手が違う【魔法大砲】でフランベールが力を発揮できるのだろうか?
なんにせよレイゼたちが今【魔法大砲】の用意をしているはず。
それまでこいつはこっちに引き付ける!