【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第257話【ローグVSブレイド】

 その男騎士は剣を敵に突き付けてこう言った。

 

「調子に乗るなよ狼モドキ! このおれローグが相手だ!」

 

 ……ローグ?

 

 いま彼は……ローグと言った?

 息子と同じ名前だ。

 偶然の一致?

 

 ……いや、それより、彼の装備はオリハルコン?

 ということは【エルガンディ】のSS(ダブルエス)級?

 

【エルガンディ】では希少なオリハルコンシリーズを与えるのはSS級クラス以上だけだと聞いている。

 そのオリハルコンシリーズを装備している彼は、若くもSS級クラスの実力者ということになる。

 

 だとしたら、なんて頼もしい援軍だろうか。

 

【エルガンディ】の騎士はみんなやたら強い。

 あのカーティスを筆頭に若く強い騎士が揃っている。

 

 彼もその一角ならば、あの【四脚のドラゴン】を倒せるかもしれない。

 

※

 

 なんとか一人だけ救難に成功したが……ローグは素直に喜べなかった。

 周りで倒れている【シエルグリス】の騎士たちがたくさんいるからだ。

 

 もっと早く着いていれば、犠牲を減らせたかもしれないのに。

 

 いや、それは自惚れか。

 

 ローグは血だらけの現場に吐き気を覚えてしまったが、それをなんとか押し殺した。

 敵の目の前で吐くなどあってはならない。

 

 死体だらけの現場に慣れていない。

 その経験の浅さがここで降ってくるとは。

 やれやれである。

 

 とにかく後ろの女性には下がってもらわねば。

 

「お嬢さん。下がっててください。ここはおれが止めます!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 助けた女性の気配が遠ざかっていく。

 それを確認したローグは踏み込む──

 

 ──前に【四脚のドラゴン】が飛び込んで来ていた!

 

「いっ!」

 

 凄まじい速度の突撃に慌てて身を捻って回避したが、敵の竜鱗はどれも刺々しいブレード状になっており、ただの突撃に斬撃を加えていた。

 

 真横を通り過ぎる【四脚のドラゴン】だが斬撃が衝撃波に混じってローグに襲いかかる。

 

「うわ斬撃っ!?」

 

 身を捻るだけでは避けられず、ロングブレードで流れてくる斬撃をなんとか捌いた。

 

 しかし無理な態勢であったため、ローグはそのまま後ろへ倒れる形になった。

 

 その隙を敵が見過ごすはずもなく、即座にターンしてローグに飛び掛かる。

 

 隙を晒せば追撃が来る。

 

 そんなことを予測できないローグではなく、飛び掛かってくるドラゴンをバク転して回避し、態勢を回復させた。

 大振りの飛び掛かりを回避された敵には硬直が発生し、その隙を狙ってローグは叫ぶ!

 

「【竜斬り(ドラゴンスレイヤー)】!」

 

 気を纏った斬撃は、敵のガラ空きになった頭部へ叩き込まれる。

 だが刃は竜鱗を貫通できず、弾かれた。

 

「なにぃ!?」

 

 驚く間に敵の反撃が来た。

 噛み付きである。

 

「あぶね!」

 

 ギリギリで避けてロングブレードを薙ぎ払い、敵の顔面を払いのけた。

 しかしやはり効いておらず、敵はちょっとビンタされた程度のダメージしかなかった。

 いやそもそもダメージにすらなっていない。

 

 こいつ、硬い!

 

 思ってる間に再度噛み付き攻撃が来て、ローグは慌てて大きくバックステップし距離を取った。

 

 だがそれは誤りだったようで、敵のブレード状の尻尾がローグに向かって伸びてきた。

 

「伸びるのかよそれ!」

 

 硬いクセに伸びるって、どんな身体してんだよあいつ!

 

 S級クラスのドラゴンはいつだって反則的だ。

 堅いし強いし技だって多種多様!

 こいつも例外じゃない。

 

 ローグは鞭のようにしなる尻尾ブレードを弾き、なんとかそれを捌き続ける。

 が、次の瞬間に火球が飛んできた。

 

「どおっ!?」

 

 またも慌てて避けて態勢を崩される。

 その隙に尻尾のブレードが肩を突き刺した。

 

「ぐあああああっ!」

 

 肩当てが吹き飛び、それでもやや深くブレードが肩の肉を引き裂く。次いで血を吹き出した。

 肩当てが無かったら腕ごと持ってかれていた。

 

 くそ! ヤベェこいつ! 速い!

 

 再度飛んできた尻尾ブレードを弾き返したローグは踵を返して近くの民家に逃げ込んだ。

 窓から飛び込んでガラスを地面に散らせる。

 

「きゃあああああああ!」

 

「え!?」

 

 窓をカチ割って侵入した民家には一般の女性がいた。

 逃げ遅れたらしく、ベッドの下に隠れている。

 ローグとばっちり目が合った。

 

 涙と鼻水で凄まじい顔になっているが、それだけ彼女が今まで恐怖に煽られていた証でもあった。

 仕方ない。家の目の前で戦闘が起こってればこうもなる。

 

 ……それにしても、少しでも狭い場所へ行けばあの厄介な尻尾ブレードは範囲を狭められると、そう思い民家へ逃げたのだが……まさか一般人が逃げ遅れていたとは。

 とんでもない不運だ。

 

 さらに不運は重なり、尻尾ブレードは壁を破壊し、ローグと女性の姿をドラゴンに露出させた。

 

 見つけたと言わんばかりに【四脚のドラゴン】はローグに火球を撃ち放つ。

 

「いやぁああああ!」

「くそっ!」

 

 ローグの後ろには一般人がいる。

 火球を避けたら彼女に当たる。

 

 ならばとローグはその火球をロングブレードで一刀両断!

 タイミングを間違えれば大怪我をする火球斬りを成功させた。

 この土壇場で成功させ、真っ二つに割れた火球は女性の左右に飛んで壁を爆破。

 

「ひぃいいいい!」っと女性は頭を抱えて怯え、さらにベッドの下に縮こまる。

 

「死にたくない! 死にたくないよぉおお!」

 

「大丈夫だ!」

 

 ローグが泣き叫ぶ女性に叫び返した。

 女性はローグの背を涙目で見上げる。

 

「そこに居れば大丈夫だ! おれが守ってやる!」

 

「!」

 

 女性が目を見開き息を呑んだ。

 当のローグはロングブレードを構え、向かいのドラゴンに備えた。

 ドラゴンもローグを見据えて、掛かるタイミングを見計らっている。

 

 正直……肩を負傷したこの状態で戦いを継続するのはあまりにも危険だ。

 この【四脚のドラゴン】は強い。メチャクチャ強い。

 

 動きにはそれなりに対応できても、こっちの攻撃が通らないのであれば勝ち目はないと思う。

 

 こいつの竜鱗を突破するには、それこそカーティスやゼクードレベルの【気】が必要になってくるのだろう。

 おれにそんなものはまだない。

 

 だからと言って、勝ち目がないからと逃げるわけにはいかない。

 

 後ろに一般人がいて、迫るドラゴンがいて、そこに騎士(おれ)がいるなら……やるしかないだろう!

 

 ここで一般人を見捨てたら俺は、どんな顔して母さんと妹に会えばいいってんだ!

 

 胸張って会えねぇだろ!

 

 ローグは意を決してロングブレードを握り直し、大きく踏み込んだ。

 

「うおおおおお!【ブレード・イグニション】!」

 

 唱えた矢先にロングブレードの刃が炎で覆われた。

 炎をエンチャントする魔法であり、高熱を宿したブレードは斬れ味を増大させる。

 そしてそれは【気】によってさらに!

 

「【紅蓮《ぐれん》竜《ドラゴン》斬り】!」

 

 炎の斬撃を振りかざし、それを敵は尻尾ブレードで打ち払う。

 だがローグは怯まずさらに踏み込んで炎の斬撃を叩き込んだ。

 炎の斬撃と尻尾ブレードの連撃が重なり、凄まじい火花を散らす。

 

『撃ち合いの時こそパリィを狙え』

 

 ふと浮かんだのはカーティスの教え。

 何度も彼に稽古をつけてもらった経験ゆえに思い出した。

 

 必ずどれかの一撃は甘い一撃が混ざっている。

 それを見極め、その瞬間を逃すな。

 集中しろ。その瞬間は必ず来る!

 

 来た!

 

「今っ!」

 

 パキィンと甲高い金属音を響かせ、尻尾ブレードをパリィする。

 

「もらったあああああ!」

 

 弾かれた尻尾ブレードが天へ昇るその一瞬の隙に、ローグは敵の脳天へ【紅蓮竜斬り】を撃ち込んだ。

 

 ──っ!

 

 炎の刃は敵の脳天を斬れずに止まった。

 

 これでもダメなのか!?

 

 驚愕したローグはドラゴンに剣を弾かれ、ロングブレードが空高く回転して飛んでいく。

 

 今度は自分がパリィされるような形になった。

 

 武器を失ったローグに、ゼロ距離にいるドラゴンが大口を開けて迫る!

 

 やべ……死ぬ!

 

『お前もオレと同じ炎魔法の使い手なら、良い攻撃方法がある』

 

 またも思考に流れるカーティスの言葉。

 記憶が溢れてくるのは極限状態故か?

 生存本能が成せる技か?

 

『どうしても敵の竜鱗を突破できないなら『エクスプロード』を使え。これは最終手段だ。下手をすれば腕を無くす。だが死ぬより良いだろう?』

 

 そうだ。

 まだこの手があった!

 

 死ぬよりいい!

 母さんと妹に会えずに死ぬくらいなら!

 

「うおおおおおおおおああああああああ!」

 

 ローグは拳を握り締め、敵の大口目掛けて鉄拳を振りかざした。

 ガブリと噛まれ、腕にドラゴンの牙が食い込む!

 

「腕くらいくれてやらああああ!【エクスプロード】!」

 

 喉にまで達したローグの拳は赤く光り、大爆発を叩き起こした。

 

 ドラゴンの喉が膨れ上がり、首から爆発して頭部と身体を吹き飛ばし切断した。

 残ったドラゴンの身体は意思を失い、そのまま地面に倒れた。 

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