【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

257 / 448
第257話【ローグVSブレイド】

 その男騎士は剣を敵に突き付けてこう言った。

 

「調子に乗るなよ狼モドキ! このおれローグが相手だ!」

 

 ……ローグ?

 

 いま彼は……ローグと言った?

 息子と同じ名前だ。

 偶然の一致?

 

 ……いや、それより、彼の装備はオリハルコン?

 ということは【エルガンディ】のSS(ダブルエス)級?

 

【エルガンディ】では希少なオリハルコンシリーズを与えるのはSS級クラス以上だけだと聞いている。

 そのオリハルコンシリーズを装備している彼は、若くもSS級クラスの実力者ということになる。

 

 だとしたら、なんて頼もしい援軍だろうか。

 

【エルガンディ】の騎士はみんなやたら強い。

 あのカーティスを筆頭に若く強い騎士が揃っている。

 

 彼もその一角ならば、あの【四脚のドラゴン】を倒せるかもしれない。

 

 

 なんとか一人だけ救難に成功したが……ローグは素直に喜べなかった。

 周りで倒れている【シエルグリス】の騎士たちがたくさんいるからだ。

 

 もっと早く着いていれば、犠牲を減らせたかもしれないのに。

 

 いや、それは自惚れか。

 

 ローグは血だらけの現場に吐き気を覚えてしまったが、それをなんとか押し殺した。

 敵の目の前で吐くなどあってはならない。

 

 死体だらけの現場に慣れていない。

 その経験の浅さがここで降ってくるとは。

 やれやれである。

 

 とにかく後ろの女性には下がってもらわねば。

 

「お嬢さん。下がっててください。ここはおれが止めます!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 助けた女性の気配が遠ざかっていく。

 それを確認したローグは踏み込む──

 

 ──前に【四脚のドラゴン】が飛び込んで来ていた!

 

「いっ!」

 

 凄まじい速度の突撃に慌てて身を捻って回避したが、敵の竜鱗はどれも刺々しいブレード状になっており、ただの突撃に斬撃を加えていた。

 

 真横を通り過ぎる【四脚のドラゴン】だが斬撃が衝撃波に混じってローグに襲いかかる。

 

「うわ斬撃っ!?」

 

 身を捻るだけでは避けられず、ロングブレードで流れてくる斬撃をなんとか捌いた。

 

 しかし無理な態勢であったため、ローグはそのまま後ろへ倒れる形になった。

 

 その隙を敵が見過ごすはずもなく、即座にターンしてローグに飛び掛かる。

 

 隙を晒せば追撃が来る。

 

 そんなことを予測できないローグではなく、飛び掛かってくるドラゴンをバク転して回避し、態勢を回復させた。

 大振りの飛び掛かりを回避された敵には硬直が発生し、その隙を狙ってローグは叫ぶ!

 

「【竜斬り(ドラゴンスレイヤー)】!」

 

 気を纏った斬撃は、敵のガラ空きになった頭部へ叩き込まれる。

 だが刃は竜鱗を貫通できず、弾かれた。

 

「なにぃ!?」

 

 驚く間に敵の反撃が来た。

 噛み付きである。

 

「あぶね!」

 

 ギリギリで避けてロングブレードを薙ぎ払い、敵の顔面を払いのけた。

 しかしやはり効いておらず、敵はちょっとビンタされた程度のダメージしかなかった。

 いやそもそもダメージにすらなっていない。

 

 こいつ、硬い!

 

 思ってる間に再度噛み付き攻撃が来て、ローグは慌てて大きくバックステップし距離を取った。

 

 だがそれは誤りだったようで、敵のブレード状の尻尾がローグに向かって伸びてきた。

 

「伸びるのかよそれ!」

 

 硬いクセに伸びるって、どんな身体してんだよあいつ!

 

 S級クラスのドラゴンはいつだって反則的だ。

 堅いし強いし技だって多種多様!

 こいつも例外じゃない。

 

 ローグは鞭のようにしなる尻尾ブレードを弾き、なんとかそれを捌き続ける。

 が、次の瞬間に火球が飛んできた。

 

「どおっ!?」

 

 またも慌てて避けて態勢を崩される。

 その隙に尻尾のブレードが肩を突き刺した。

 

「ぐあああああっ!」

 

 肩当てが吹き飛び、それでもやや深くブレードが肩の肉を引き裂く。次いで血を吹き出した。

 肩当てが無かったら腕ごと持ってかれていた。

 

 くそ! ヤベェこいつ! 速い!

 

 再度飛んできた尻尾ブレードを弾き返したローグは踵を返して近くの民家に逃げ込んだ。

 窓から飛び込んでガラスを地面に散らせる。

 

「きゃあああああああ!」

 

「え!?」

 

 窓をカチ割って侵入した民家には一般の女性がいた。

 逃げ遅れたらしく、ベッドの下に隠れている。

 ローグとばっちり目が合った。

 

 涙と鼻水で凄まじい顔になっているが、それだけ彼女が今まで恐怖に煽られていた証でもあった。

 仕方ない。家の目の前で戦闘が起こってればこうもなる。

 

 ……それにしても、少しでも狭い場所へ行けばあの厄介な尻尾ブレードは範囲を狭められると、そう思い民家へ逃げたのだが……まさか一般人が逃げ遅れていたとは。

 とんでもない不運だ。

 

 さらに不運は重なり、尻尾ブレードは壁を破壊し、ローグと女性の姿をドラゴンに露出させた。

 

 見つけたと言わんばかりに【四脚のドラゴン】はローグに火球を撃ち放つ。

 

「いやぁああああ!」

「くそっ!」

 

 ローグの後ろには一般人がいる。

 火球を避けたら彼女に当たる。

 

 ならばとローグはその火球をロングブレードで一刀両断!

 タイミングを間違えれば大怪我をする火球斬りを成功させた。

 この土壇場で成功させ、真っ二つに割れた火球は女性の左右に飛んで壁を爆破。

 

「ひぃいいいい!」っと女性は頭を抱えて怯え、さらにベッドの下に縮こまる。

 

「死にたくない! 死にたくないよぉおお!」

 

「大丈夫だ!」

 

 ローグが泣き叫ぶ女性に叫び返した。

 女性はローグの背を涙目で見上げる。

 

「そこに居れば大丈夫だ! おれが守ってやる!」

 

「!」

 

 女性が目を見開き息を呑んだ。

 当のローグはロングブレードを構え、向かいのドラゴンに備えた。

 ドラゴンもローグを見据えて、掛かるタイミングを見計らっている。

 

 正直……肩を負傷したこの状態で戦いを継続するのはあまりにも危険だ。

 この【四脚のドラゴン】は強い。メチャクチャ強い。

 

 動きにはそれなりに対応できても、こっちの攻撃が通らないのであれば勝ち目はないと思う。

 

 こいつの竜鱗を突破するには、それこそカーティスやゼクードレベルの【気】が必要になってくるのだろう。

 おれにそんなものはまだない。

 

 だからと言って、勝ち目がないからと逃げるわけにはいかない。

 

 後ろに一般人がいて、迫るドラゴンがいて、そこに騎士(おれ)がいるなら……やるしかないだろう!

 

 ここで一般人を見捨てたら俺は、どんな顔して母さんと妹に会えばいいってんだ!

 

 胸張って会えねぇだろ!

 

 ローグは意を決してロングブレードを握り直し、大きく踏み込んだ。

 

「うおおおおお!【ブレード・イグニション】!」

 

 唱えた矢先にロングブレードの刃が炎で覆われた。

 炎をエンチャントする魔法であり、高熱を宿したブレードは斬れ味を増大させる。

 そしてそれは【気】によってさらに!

 

「【紅蓮《ぐれん》竜《ドラゴン》斬り】!」

 

 炎の斬撃を振りかざし、それを敵は尻尾ブレードで打ち払う。

 だがローグは怯まずさらに踏み込んで炎の斬撃を叩き込んだ。

 炎の斬撃と尻尾ブレードの連撃が重なり、凄まじい火花を散らす。

 

『撃ち合いの時こそパリィを狙え』

 

 ふと浮かんだのはカーティスの教え。

 何度も彼に稽古をつけてもらった経験ゆえに思い出した。

 

 必ずどれかの一撃は甘い一撃が混ざっている。

 それを見極め、その瞬間を逃すな。

 集中しろ。その瞬間は必ず来る!

 

 来た!

 

「今っ!」

 

 パキィンと甲高い金属音を響かせ、尻尾ブレードをパリィする。

 

「もらったあああああ!」

 

 弾かれた尻尾ブレードが天へ昇るその一瞬の隙に、ローグは敵の脳天へ【紅蓮竜斬り】を撃ち込んだ。

 

 ──っ!

 

 炎の刃は敵の脳天を斬れずに止まった。

 

 これでもダメなのか!?

 

 驚愕したローグはドラゴンに剣を弾かれ、ロングブレードが空高く回転して飛んでいく。

 

 今度は自分がパリィされるような形になった。

 

 武器を失ったローグに、ゼロ距離にいるドラゴンが大口を開けて迫る!

 

 やべ……死ぬ!

 

『お前もオレと同じ炎魔法の使い手なら、良い攻撃方法がある』

 

 またも思考に流れるカーティスの言葉。

 記憶が溢れてくるのは極限状態故か?

 生存本能が成せる技か?

 

『どうしても敵の竜鱗を突破できないなら『エクスプロード』を使え。これは最終手段だ。下手をすれば腕を無くす。だが死ぬより良いだろう?』

 

 そうだ。

 まだこの手があった!

 

 死ぬよりいい!

 母さんと妹に会えずに死ぬくらいなら!

 

「うおおおおおおおおああああああああ!」

 

 ローグは拳を握り締め、敵の大口目掛けて鉄拳を振りかざした。

 ガブリと噛まれ、腕にドラゴンの牙が食い込む!

 

「腕くらいくれてやらああああ!【エクスプロード】!」

 

 喉にまで達したローグの拳は赤く光り、大爆発を叩き起こした。

 

 ドラゴンの喉が膨れ上がり、首から爆発して頭部と身体を吹き飛ばし切断した。

 残ったドラゴンの身体は意思を失い、そのまま地面に倒れた。 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。