【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

258 / 448
第258話【言葉はいらない】

「はぁ……はぁ……弱かった」

 

 呟きながらローグは腕を見た。

 二の腕に食い込んでいた牙があった。

 それは次の瞬間にはボロリと折れた。

 

 ローグの装備はオリハルコンシリーズ。

 腕は肩から掌まで鉄製の装備を随所にしている。

 今回噛まれた二の腕にはオリハルコンの腕輪が装備されていた。

 

 その防具に敵の牙が当たり、食いちぎられるのを防いでくれたらしい。

 おかげで流血もなく、腕は全て無事だった。

 肩の傷もやや深いが致命傷ではない。

 

 今回は防具に助けられたな。

 オリハルコン製のありがたみを凄まじく感じた一戦だった。

 

「あなた!」

 

「?」

 

 誰かに呼ばれたローグはいつの間にかヘタッていた自身を立ち上がらせる。

 すると駆けつけてきたのは先程の一般人……ではなく、それより前に助けた茶色い長髪の女騎士だった。

 

 その女騎士は首を無くしたドラゴンの遺体を見て驚愕する。

 

「凄い……あなた一人で?」

 

 ローグは頷いてロングブレードをカチンと納刀した。

 

「ああ。危なかったけどなんとかなったよ。あ、お姉さん悪いけどこの人をお願いしていいかな?」

 

 ローグはベッドの下に隠れる一般人女性を指差した。

 その女性は女騎士を見て安堵するようにベッドから出てきた。

 

「リベカ様!」

 

 ……ん?

 リベカ様?

 リベカ!?

 

 母さんと同じ名前だ!

 え、うそ!

 偶然の一致か!?

 

 いや、待て、落ち着け!

 どう見てもこのリベカって人は高くて20代だ。

 とても15歳の子供二人がいるような年齢には見えない。

 

 …………いや、でもこの茶色い長髪と茶色い瞳って……親父が言ってた特徴と一致する?

 

 いやいやでも信じられない。

 だってこの人……メチャクチャ綺麗だし。

 親父と釣り合わない美人だし。

 しかもどう見ても何度見ても歳は20代くらいな見た目だし。

 

 そんなことを脳内で葛藤していると、リベカと呼ばれた女騎士が一般人女性に言った。

 

「無事で良かったです。さぁここは危険です。城へ避難しましょう」

 

「はい!」

 

「あなたも一緒に!」

 

 言われたローグはハッと我に返った。

 

「あ、いや! おれは他のところに加勢に行きます!」

 

「え!? ですがあなたケガ……」

 

「んじゃその人をよろしくお願いします!」

 

「待ちなさいあなた! 肩のケガ!」

 

「行きながらやりますって」

 

「ダメです! ちゃんとしないといけません! ほら見せて。すぐ終わるから」

 

「は、はい……」

 

 凄い勢いで迫られて、半ば強引に肩のケガに包帯を巻かれた。

 まだ遠くで爆発音が響く中、ローグは手当てをしてくれるリベカを見た。

 

 甘い香りが鼻についた。

 どこか懐かしさを覚える優しい香りだった。

 

 やはりこの人がおれの母さんなのだろうか?

 

 見た目が若すぎて確信を持てない。

 

 でもリベカという【名前】と、茶色い髪と茶色い瞳という【特徴】が一致しているのは偶然とは思えない。

 ローグは意を決してリベカに訪ねてみた。

 

「あの……エドガードっていう男を知っていますか?」

 

「!」

 

 リベカの包帯を巻く手がピタリと止まった。

 

「おれ、その人の息子なんです」

 

「っ! ……じゃああなたは、やっぱりあのローグなの?」

 

 リベカの返しが全てを物語っていた。

 彼女が自分の母親だと、いま確信した。

 その瞬間に胸の奥から熱いものが込み上がってくるのを感じた。

 

 やっぱりこの人は……おれの!

 

「ぁ、ああ……ローグだよ。ローグ・セラン」

 

「ローグ・セラン……」

 

 呟きながらリベカはローグの全身を見回す。

 そっとローグの胸に手を這わせると、リベカは瞳に涙を浮かべた。

 

「こんなに大きくなって……」

 

「母さん……」

 

「ローグ……っ!」

「母さんっ!」

 

 二人は思わず抱き締め合った。

 大粒の涙を流し合った。

 ローグにとっては記憶にない、初めての母のぬくもり。

 

 再開できて嬉しいのに言葉が出てこない。

 なのに涙だけは出てくる。

 

 会ったときどんな顔をすればいいか。

 そんなことで悩んでいた過去の自分がバカらしくなった。

 カーティスの言った通りだった。

 

 会えるなら会っておいた方がいい。

 

 本当にその通りだった。

 ありがとうカーティス。

 

 背中を押してくれた友人に感謝しつつ、ローグは自分より小さい母の身体を抱き締め、そのぬくもりをしっかりと感じた。 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。