【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第259話【とんでもない援軍!】

【シエルグリス】の【北東】ではエルジーが【四本腕のドラゴン】と壮絶な戦闘を繰り広げていた。

 

【メイドナイト】と呼ばれるほどエルジーの剣技は高い技量を誇っていたが、その技量は敵の圧倒的な猛攻によって全て防御に使わされていた。

 

 四本腕から繰り出される鋭利な爪の猛襲はどれも重い。

 その一撃一撃が必殺の威力を宿しており、鎧を着ていないエルジーが被弾すれば、彼女の柔肌は一瞬で断ち切られる。

 

 すでにメイド服はあちこち切り裂かれ、ボロボロの奴隷服のようになっている。

 肉にまで爪が届いた箇所は至るところにあり、清楚なメイドはすでに血まみれのメイドと化していた。

 

 それでも諦めずに敵の攻撃を弾いて弾いて弾いて。

 わずかな隙を見つけて!

 

「【竜突き】!」

 

 気を纏わせたロングソードの刺突を敵の腹部にお見舞いする。

 だが刃は通らない。

 S級ドラゴンの竜鱗を突破するには、エルジーはあまりにも非力すぎた。

 

 高い技量で攻撃を捌くことに特化しているのが母リベカ直伝の剣技。

 それゆえに攻撃力は低い。

 技量と速さで非力を誤魔化していたが、ここに来てそれが大きく響いた。

 

 だがエルジーも一人ではない。

 味方の男騎士たちが合流して、今まさにロジェール王女と共に屋根から飛び降りていた!

 

「はあああああああああ!」

「うおおおおおおおおお!」

「でゃああああああああ!」

 

 ロジェールと男騎士二人の落下攻撃!

 重力を利用した一撃を敵の背中に叩き込んだ。

 

 ロジェールのロングブレード。

 男騎士二人のバトルアックス。

 その3つの刃は敵の竜鱗にぶち当たって、そして三人の刃が砕けた。

 

「そんな!?」

「バカな!」

「ミスリルが!?」

 

 ロジェールが驚愕し、男騎士二人も目を限界まで見開く。

 そこからの【四本腕のドラゴン】の反撃は速かった。

 

 振り向き様に裏拳。

 三人まとめて直撃し吹き飛ばされる。

 

「きゃあああ!」

「うわあああ!」

「ぐおっ!」

 

「姫様!」っとエルジーはロジェールの元へ駆けつけようとしたが、敵がそれを許さない。

 またこちらへ振り向いてきた敵は人間のように足払いをし、エルジーを転倒させる。

 

「あっ!?」

 

 倒れたエルジーにトドメを刺そうと爪を振りかざしてくる!

 避けられない! もうダメだ! そう目を閉じたエルジーだったが、直後に爆発音が響いた。

 

 何事かと見やれば【四本腕のドラゴン】にフレイムやウィンドなどの魔法が立て続けに撃たれていた。

 

「撃て! 撃ちまくれ!」

「あいつを止めるんだ!」

「おおおおおおおおお!」

 

 別の援軍だった。

 数名の男騎士たちが駆け付けてくれて、弾幕を張ってくれた。

 その弾幕をくらう敵は鬱陶しそうに首を振る。

 

 その隙にエルジーは敵のレンジから離脱し、倒れているロジェールの元へ走った。

 

「姫様!」

 

 ロジェールを抱き起こしたエルジー。

 姫様は頭を強く打ったらしく血が顔をつたって流れていた。

 しかし命に別状はないようで、ゆっくりと目を開けてくれた。

 

「エルジー……ごめん。ぜんぜんダメだった……」

 

「いいえ! よくやってくれました! 援軍が来ましたよ。我々は助かったんです」

 

「援……軍?」

 

 意識が朦朧としているロジェールはエルジーと共にその援軍を見た。

 すると【四本腕のドラゴン】が足元に転がる石の破片などを掴み、それを援軍に投げつけている瞬間が見えた。

 

 四本の腕から繰り出される破片の投擲は大砲の如く。

 当たった援軍たちの身体を容易く吹き飛ばしていた。

 

 ある者は頭を吹き飛ばされ。

 ある者は片足を吹き飛ばされ。

 ある者は腕を吹き飛ばされた。

 

 援軍が来たという希望は、あっという間に絶望に塗り替えられた。

 

「かぺ──」

「ぎゃああああああああああ!」

「がああああ! 腕が! 腕があああああ!」

 

 男騎士たちの悲鳴がこだまし、エルジーとロジェールの脳内にトラウマを植え付けていく。

 

「避けろ! とんでもない威力だ!」

「速すぎる! 回避できない!」

 

 また一人、頭が吹き飛んだ。

 敵の投げる破片は、その圧倒的な弾速ゆえに凄まじい切れ味を誇っている。

 ミスリルの防具を容易く貫通している。 

 

「ぁ……ぁ……ああ……」

 

 ロジェールは次々とやられていく味方の光景に戦慄した。

 全身が震えて、涙が出てきた。怖い。みんな殺される。

 どうすればコイツを止められるの?

 

 咄嗟に浮かんだのはやはりあのネオの顔。

【シエルグリス】のエースである彼ならば、こいつを倒せる。

 彼を呼びに行かないと……みんなが!

 

 しかし足が震えて立てない。

 こんな時に……

 自分が思ってるよりダメージが大きいのかも……

 

「エルジー……どうしよう……ネオを呼ばないと……」

 

「お待ち下さい姫様。二人……敵の攻撃を突破してます」

 

「え?」

 

 エルジーに言われ、街の奥を見た。

 確かに【四本腕のドラゴン】の投擲を回避して、突撃してくる人影が二人いた。

 

 しかも彼らの鎧は【エルガンディ】の物!

 

「行くぜリイド!」

「レグナ。焦っちゃダメだよー」

 

 レグナと呼ばれた男騎士が次の瞬間加速した。

 残像が生まれ、瞬く間に敵に接近する。

 彼の武器は双剣。

 

 二本の剣を逆手に持ち、低い姿勢からの回転斬り。

 それは敵の右足に斬撃を数発叩き込み、大きな火花を散らせた。

 

「かてぇ!?」

 

 回転しながら脇を通り過ぎたレグナが、刃の通らなかった敵の硬さに驚いた。

【四本腕のドラゴン】は後ろに回ったレグナを追って振り向く。

 それを待っていたリイドが奇襲を仕掛けて踏み込む。

 

 敵の背中を蹴って跳躍し、バックラーによるシールドバッシュを頭部に叩き込んだ。

 斬撃がダメならば打撃だ。

 

 リイドのバックラーによる打撃は敵をよろめかせ、レグナが攻撃をする大きな隙を生んだ。

 

「レグナ! 今だよ!」

「任せろ兄弟!【真紅の舞】!」

 

 レグナの奥義が敵に炸裂する。

 無数の斬撃が速くしなやかに敵の竜鱗を斬りつける。

 あまりに速い高速の剣舞。

 

 それを目の当たりにしたエルジーとロジェールは思わず見惚れた。

 

「凄い……」

 

 見た目は軽そうな男の人なのに、凄い実力者だ。

 エルガンディの騎士は揃って優秀だと聞いているが、これほどとは。

 

 しかし彼の表情を見る限り、手応えはあまりなかったようで……

 

「くそっ! 奥義でもダメか!」

「S級あるある。硬いねぇ~」

「呑気なこと言ってる場合かよ! 来るぞ!」

 

【真紅の舞】を耐え抜いた【四本腕のドラゴン】が、その四本腕を伸ばして攻撃してきた!

 

「いやそれ伸びんのかよ!」

「聞いてないよ~!」

 

 レグナとリイドに伸びた四本の腕が爪を立たせて猛襲してくる。

 それを見たロジェールとエルジーは息を呑んだ。

 

「あんな攻撃……初めて見た……」

「我々にはまったく本気じゃなかったって事ですね」

 

 淡々と告げるエルジーの言葉を聞きながら、ロジェールはレグナとリイドを見た。

 

 伸びた四本の腕は長く、パッと見で4メートルはある。

 対して彼らの武器は双剣と片手剣。

 リーチの差は歴然で、相手に踏み込ませまいとその四本の腕をフルに使ってくる。

 

 しかも速い。

 長くなってスピードが鈍化するどころか速く鋭くなっている。

 

「うわっ! あぶねっ!」

「わわっ! 速いって~!」

 

 さすがの二人も回避で手一杯になっていた。

 というより、あの速さと範囲の攻撃に対応できてるのが凄い。

 自分やエルジーならば、とうにやられている。

 

「レグナなんとかしてよ~!」

「オメェもなんか考えろよ!」

「【真紅の舞】が効かないのに僕にどうしろってのさ~」

「それはオレも同じなんだよ! どうすりゃいいんだよこんな堅物!」

「じゃあゼクードさんが来るまで粘ろっか」

「おまえ天才だな! 泣けてくるぜバカヤロー!」

 

 メチャクチャ喋りながら避けてる。

 なんだこの二人は。

 余裕はあるけど攻撃手段がないだけのようだ。凄い。

 凄いけど凄くない? よく分からない。

 

「レグナ! リイド! 加勢するぞ!」

 

 突如として響いた女性の声。

 颯爽と現れたのは──

 

「レグナ! あの人!」

 

「カ、カティアお姉様ああああああああああああ!」

 

 レグナが目をハートにして歓喜した。

 

「叔母様だ馬鹿者おおおおーっ!」 

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