【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第260話【カティア参戦】

「レグナ! リイド! 加勢するぞ!」

 

 突如として響いた女性の声。

 颯爽と現れたのは──

 

「レグナ! あの人!」

 

「カ、カティアお姉様ああああああああああああ!」

 

 レグナが目をハートにして歓喜した。

 

「叔母様だ馬鹿者おおおおーっ!」 

 

 怒鳴りながら走るカティアにロジェールは驚愕した。

 

「え、あの人はゼクード様の!」

 

 確かお腹に赤ちゃんがいる妊婦さんだったはず。

 加勢するって言ってたけど、まさかあんな状態で戦う気なの!?

 

 まだお腹は膨らんでないけど、それでも妊娠している女性がドラゴンと戦うなんて危険すぎる!

 

「おいリイド! カティアお姉さまが加勢してくれるって! これは勝ったな!」

 

「いやダメでしょ! なに言ってんのレグナ!」

 

「は? なんでよ?」

 

「忘れたの!? カティアさん妊娠してるってグロリアが言ってたじゃん!」

 

「あ……」

 

 ようやく思い出したらしいレグナという男騎士が、敵の攻撃をかわしながら暗くなった。

 

「そうだった……お姉さまは人妻だったんだ……」

「そこは今どうでもいいよ!」

 

 本当にどうでもいい。

 しかし、あの【四本腕のドラゴン】の攻撃を捌きながら会話するあの余裕。

 あのレグナとリイドもやはり相当な実力者だ。

 

「とにかくカティアさん! 無理しないで! ここは僕たちに任せてください! あなた妊婦でしょう!」

 

 リイドが敵の攻撃をパリィしながら叫んだ。

 しかしカティアは止まらず、背中のバスターランサーを展開した。

 

「妊婦などと言ってる場合か! どれだけ死人が出ていると思っている! 一秒でも速くソイツを狩るんだ!」

 

 カティアが更に加速した。

 

 速い!

 

 大盾と銃槍という重装備であのスピードを叩き出すなんて。

 このカティアという女騎士は、レベルで言ったらどれほどの実力者なのだろう?

 

 ゼクードの奥さんとしか、ロジェールは知らない。

 

 いやそれより、あんな速度で走ったらお腹の赤ちゃんが!

 

 ロジェールの心配が届くはずもなく、カティアはドラゴンとの距離を詰めていく。

【四本腕のドラゴン】は接近するカティアに気づき炎のブレスを放った。

 

 カティアは大盾に【気】を纏わせ、そのブレスをまっすぐ受け止めた。

 家一軒ならば瞬時に燃やし尽くせるであろう炎の量に、カティアはいっさい怯まずに突き進んだ。

 

「はぁあああああああああああああああああ!」

 

 気合いと共に突撃し【四本腕のドラゴン】に大盾によるシールドバッシュをぶちかました。

 

 凄まじい体格差と体重差があるにも関わらず、カティアはドラゴンを吹き飛ばす。

 ドラゴンは近くの建物にぶっ飛ばされ、その建物が倒壊する。

 

「ぶっ飛ばした!」

「すげぇ!」

 

 リイドとレグナが驚愕し、歓喜した。

 周りで見ていた味方たちも、エルジーとロジェールも驚いて唖然とする。

 

 しかしその一撃でドラゴンの目付きが変わった。

 先ほどとは比べ物にならない殺気を滾らせ、カティアに四本腕を伸ばす。

 

 その速度はレグナとリイドを狙っていた時の2倍!

 

 は、速すぎる!

 

 目で追えない爪の猛襲に、その場にいる全員がロジェールと同じ感想を持った。

 あのレグナとリイドでさえも。

 

 こ、こいつまだ力を隠し持っているの!?

 や、ヤバい……カティアさんがやられてしまう!

 お腹の赤ちゃんまで!

 

 そしてその猛攻がカティアに殺到した瞬間!

 爆発音が響き、敵の腕が一本空へ飛んだ。

 

 ──え?

 

 何が起こったのか?

 ロジェールには理解できなかった。

 

 すると今度は爆発音と共に二本目の腕が空へ。

 

 ぇ、え? え!?

 

 展開が速すぎる。

 何が起こってるのか理解できない。

 敵とカティアの動きが速すぎて何も見えない! 

 

「凄い……」

 

 隣のエルジーが感動するように呟いた。

 

「エルジー! 何が起こってるの!?」

 

「あの方は最小限の動きで敵の攻撃をかわしてます。それと同時にピンポイントに腕を狙って爆破してます」

 

 最小限の動きで!?

 あのとんでもない速度の攻撃を!?

 しかもピンポイントで反撃までしてる!?

 

 あの人……ただの女騎士じゃない!?

 

 敵に攻撃が効いてるし……もしかして、凄く強い人なの!?

 

 カティアに腕を二本を吹き飛ばされたドラゴンは慌てて彼女から距離を取った。

 

「逃がさん!」

 

 カティアが追撃に出た。

 対するドラゴンは大きくバックステップしながら拾った建物の破片を投げ飛ばす。

 

 大砲を越える弾速の破片を、しかしカティアは踊るように華麗に避けた。

 遅いと言わんばかりの反応で避け、さらに肉薄する。

 

 怒濤の勢いで迫りくるカティアにドラゴンは恐れを覚えた。

 そして残った二本腕をハチャメチャに振り回して暴れる。

 来るな! 来るな! とドラゴンの焦りが伝わってきた。

 

 が、カティアはすでにドラゴンの真後ろに移動していた。

 バスターランサーの砲撃を使った反動による瞬間移動だ。

 これが出来るバスターランサー使いは見たことがない。

 カティアが初めてだ。

 

「【ドラゴン……」

 

 敵の背後を取ったカティアがバスターランサーに【気】を纏わせる。

 

「……スティンガー】!」

 

 研ぎ澄まされた【気】を解放!

 一点に凝縮された無駄のないパワーはドラゴンの上半身を吹き飛ばした。

 

 それでも収まらない【ドラゴンスティンガー】の余波が何件かの屋根をこぞって吹き飛ばした。

 

 あまりの威力にロジェール・エルジー・レグナ・リイドらが驚愕。

 下半身だけとなったドラゴンは派手に血を撒き散らして倒れた。

 

※ 

 

「ふぅ…………付き合わせてすまんな」

 

 敵を倒し、武器を納めたカティアがお腹を撫でた。

 そんな彼女を、みんなは唖然として見ていた。

 レグナもその一人である。

 

「す、すげぇ……」

 

 それしか言葉が出てこなかった。

 叔母カティアの事は母レィナから聞いていたが、ここまで強いとは思ってなかった。

 

 あんなに苦戦した【四本腕のドラゴン】を、こうもあっさり撃破するなんて。

 

 何よりあの攻撃力だ。

【気】の洗練さが違う。

 敵のあの竜鱗を突破してた。

 

 ここで既に差がある。【気】のレベルが段違いだ。

 オレもそこそこ自信はあったのだが、今回のこれで痛感した。

 

 カティアの持っているバスターランサーは……S級以下の騎士に支給されるミスリル製の武器だ。おそらくレンタル物だろう。

 

 だがあんな装備であの攻撃力を発揮しているのは凄まじいとしか言い様がない。

 オレはオリハルコン製の双剣でダメージを与えられなかったのに。

 これはあまりにも心に来る差だ。

 

「あれで……あれでSSS(トリプルエス)になれなかったのかよ……」

 

「違うよレグナ。あれがきっと大人たちが言ってる過去のSS(ダブルエス)の実力なんだ。僕たちが、弱すぎるんだよ……」

 

「笑えねぇ……」

 

 リイドの言うとおりだ。

 SS級を名乗るのが恥ずかしくなってくる。

 

 年配のベテラン騎士達からは「今のSS級騎士は弱くなった」と散々言われてきた。

 

 数ばっかり増えて、若いだけで質が低いとさえ言われた。

 

 オレはそんなことはないと思っていた。

 だってその年配のベテラン騎士たちこそ、すでにオレたちより弱かったからだ。

 

 自分より弱いくせに何を偉そうに!

 

 そう反発し続けていたが……このカティアさんに言われていたら、反論の余地はなかっただろう。

 

 今のSS級騎士は弱いと言われても、彼女に言われたなら仕方ないと誰もが受け入れられていたはず。

 

 母レィナの話では、カティアさんは過去の数少ないSS級騎士だったという。

 たった四人しかいなかった……本物の精鋭だったと。

 

 でも聞こえてくるのは例のゼクードさんの話しばかりで、カティアさんたちの話しはまったくなかった。

 

 こんなに強いのに伝説にすらならなかったなんて。

 影に隠れたSS級騎士の悲運というやつか。

 

「レグナ! リイド! 動けるなら負傷者の手当てを急げ!」

 

「「は、はい!」」

 

 呆然としていたらリイドと共に叔母カティアに叱られた。

 

 けど、なんだろう……

 

 まったく腹が立たない。

 

 カティアが相当な美人というのもあるが……それでも、だ。

 

 いつもなら命令するだけして大して動かないベテラン騎士たちに腹を立てていたが、カティアのような本物に命令されれば素直になってしまう。

 

 それに……そうだ。

 この人、あのカーティスの産みの親だった。

 

 そりゃ強いわけだ。

 

 ……いや、関係ないか?

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