【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第262話【因縁のドラゴン】

 戦塵が立っていた三ヶ所が静かになった。

 どうやら【シエルグリス】内部のドラゴンは対処できたようだ。

 

 一時の安堵を覚えたレイゼは街の高台に設置された【魔法大砲・改】に視線を戻した。

 数人の部下が魔力を込め終えて、あとは発射するだけなのだが。

 

「おいどうした! なんで撃たねぇんだ!」

 

 いつまで立っても【歌のドラゴン】を狙撃しない部下に痺れを切らした。

 

「ダメです! ドラゴンの飛行速度が速すぎて狙いを付けられません!」

 

「……確かにあれじゃ仕方ねぇか。よく見てチャンスを伺え。目を離すなよ。必ず狙撃の隙はあるはずだ」

 

「はっ!」

 

 遠くでは【歌のドラゴン】がゼクードたちを一方的に攻撃している。

 空からのブレスとなればゼクードたちに反撃の術はない。

 高度が有りすぎて、ゼクードやネオの魔法が当たってもダメージになっていない。

 

 さっきの【顔のドラゴン】のように撃ち落としてやれば、陸戦でゼクードたちが倒してくれる。

 

 そのためにはこちらが狙撃を成功させなければいけない。

 しかし先ほどの【顔のドラゴン】よりも動きが速く、さらに【シエルグリス】の外という距離もある。

 

 これを当てるのは至難の技だ。

 

 外せばリロードに時間を取られ、その間またゼクードたちが一方的に攻撃される。

 

 この【魔法大砲・改】はオリハルコンを使った超長距離狙撃砲なのだが、希少なオリハルコン製ゆえに量産ができず【シエルグリス】にも【エルガンディ】にも一台しかない。

 

 たくさんあれば順に連発できるのだが、一台だとそうはいかない。

 一発必中を心掛ける必要がある。

 

 しかしこの距離で、あの速度で動き回る【歌のドラゴン】にどうやって当てればいいのか?

 正直、ここからではドラゴンが豆粒のような大きさに見える。

 

「レイゼ女王様!」

 

「あ? あ! フランベールさん!?」

 

 高台を駆け上がって来たのは弟の妻だった。

 妊婦なのにこんなところで何をやっているのか。

 

「その大砲はもう撃てるんですか?」

 

「ぉ、おう。いつでも撃てるぜ。だがドラゴンが遠くで速くて狙いが付けられねぇんだ」

 

「わたしにやらせてください。狙撃なら自信があります」

 

「え!?」

 

 レイゼだけでなく、周りの騎士たちも戸惑いを見せた。

 確かにフランベールは弓使いで、狙撃などの遠距離戦は得意だろう。

 

 しかしこれは大砲だ。

 さすがに要領が違うのではないだろうか?

 

「一発あれば十分です。わたしにやらせてください!」

 

 一発あれば十分って……大した自信だな。

 そう言えば昔……

 真冬の視界の悪い場所で、さらに風の吹く中、フランベールは次々とドラゴンに曲射を当てていたな。

 

 あれほどの神業を成せる彼女なら!

 

「わかった! なら頼むぜ!」

 

「はい!」

 

 

 フランベールは狙撃主と交代し、スコープを覗いた。

 遠くでは【歌のドラゴン】がゼクードたちに激しいブレス攻撃を続けている。

 

 しかも俊敏。

 的も小さい。

 

 これは、面白いね。

 絶対に当ててやる。

 

 フランベールは胸が高鳴っていた。

 難度の高い狙撃はいつもこうだ。

 なぜか楽しくなってくる。

 

 乱戦時の味方を巻き込まないよう狙撃するのも楽しいし、自分を活かしている気になれる。

 

 自分にはローエさんのような攻撃力はない。

 カティアさんのような防御力もない。

 ゼクードくんのようなスピードも。

 

 その悩みを少し前にカティアさんとローエさんに打ち明けた。

 ちょうどゼクードくんがオルブレイブに行っている時のこと。

 

『フラン。お前の凄いところは正確無比な射撃だ』

『ゼクードだって味方のいるところに撃つのは怖いって言ってましたわ』

『自信を持てフラン。お前の狙撃は誰にも真似できない。あんなギリギリの援護は我々には怖くて無理だ』

『そうですわ。だからフラン以外の援護は怖いですもの』

 

 遠距離戦でもゼクードくんに追い付かれて焦っていたが『味方に当てず狙撃するのだけはフランベールにしかできない』とみんなに褒められた。

 

 正直に言うと、そんなの弓使いなら……後衛なら当たり前の技術だと思っていた。

 だけど違ったらしい。

 

 これはゼクードくんにも、カーティスにも真似できない素晴らしい技術なのだと。

 

 わたしにもあったんだ。

 そんな技術が。

 持っていたんだ。

 とっくに。

 

 やっと自信が持てた。

 

 わたしの強みは『狙撃』。

 現にこんなにも『狙撃』を楽しいと感じてしまっている。

 

「発射はそこのレバーだ。もうそれだけ捻れば発射する。タイミングは任せるぜ」

 

「了解です」

 

 言って、フランベールは小さく息を吐いた。

 先程この【魔法大砲・改】が発射されるのは見ていた。

 虹色の槍のような閃光だった。

 

 弾速も覚えている。

 あれだけの速度があれば発射から命中までのラグは少ない。

 ちょっとした偏差撃ちで十分だ。

 

 それにこの【魔法大砲・改】の親切装備【スコープ】がある。

 しかもアイアンエイムサイトという照準アシストのオマケ付きだ。

 弓にはないこの狙いをアシストしてくれる装備。

 

 これで外せという方がフランベールには難しい。

 

 フランベールは敵に照準を合わせ、移動方向を見切り、その照準をズラした。

 

 見えた!

 狙い撃つ!

 

「いけっ!」

 

 フランベールは一息に射撃レバーを引いた!

 

 

 轟音が鳴り響いた。

 眩い閃光が空を裂き、虹色の槍が【歌のドラゴン】に直撃する。

 

 それは敵の竜鱗を貫通し、肉を抉って血を吹き出させた。

 

「おおっ! やったぞ!」

 

 悲鳴のような咆哮を上げて落ちていく【歌のドラゴン】を見て俺は歓喜の声を上げた。

 

 あんな激しく動いていたドラゴンを撃ち落とすなんて凄いな。

 しかもあの距離から。

【シエルグリス】にもフランベール並に腕の立つ狙撃主がいるらしい。

 

「ネオ! 一気に畳み掛けるぞ!」

「了解!」

 

 俺は落ちた【歌のドラゴン】目掛けて走った。

 隣にネオが並走する。

 

【歌のドラゴン】は致命の色が濃く、全身を震わせて立つのがやっとという状態だった。

 動けば先ほど撃ち抜かれた胸部の傷から血が溢れる。

 

 奴はもう瀕死だ。

 抵抗する力もない。

 終わりだ。

 

 ロングブレードを抜刀し、いよいよ斬りかかろうとしたその時だった!

 

【歌のドラゴン】の背後から、何かが飛び越えてやってきた。

 そいつの凄まじい殺気に当てられ、俺とネオは思わず足を止める。

 

 同時に()()()()()()()()()()

 

 どこかで感じたことのあるその殺気。

 俺は悪寒を覚えながらそいつを見た。

 

「……っ!」

 

 ドクン! っと心臓が跳ね上がった。

 

「お前……なんで……」

 

 あの時の悪夢がそこに立っていた。

 

「お前はあの時俺が……」

 

 黒い竜鱗に覆われた……あのディザスタードラゴンの最後の子。

『人型ドラゴン』だ。

 

「俺が……倒したはずだろ!」

 

 左眼の傷が疼いて痛み、全身がトラウマを思い出して戦慄した。 

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