【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第263話【強敵】

 ……なぜ生きてるんだ?

 

 俺はあの時、お前を確かに殺したはずだ。

 

 胸を抉り、雷で焼いてやった。

 

 俺と同じ目に合わせてやった。

 

 なのに……なんでそこにいる?

 

 なぜ生きているんだ?

 

『ぁ……あなたはナイト!? どうしてここに……うっく!』

 

『そこでジッとしていろ。あんたは俺が守る』

 

『え……』

 

 ナイトは再び見えた【黒い奴】を睨む。

 

 奴とはこれで三度目の遭遇だ。

 

 奴を見間違えはしない。

 

 嗅覚こそあの時に失ったが、視力は失っていない。

 

 だから顔は覚えている。

 

 銀の毛並み。

 黒い堅殻。 

 身体に見合わぬ長い牙。

 

 生きていたのなら……もう一度殺してやる!

 

※

 

 俺からすれば数ヶ月ぶりの再開だった。

 奴からすれば何十年ぶりだろう。

 

 決して会いたくなかった悪夢の如き『人型の黒竜』。

 

 あの時よりも竜鱗が発達している。

 鋭利な爪や牙も大きい。

 

 生まれたてのあの時で、あれほどの脅威だった。

 成長してしまったこいつを、どうやって止めればいい?

 

 冷や汗が止まらない。

 身体の震えも止まらない。

 情けないとは思いつつも、恐怖を感じずにはいられなかった。

 

 身を持って奴の強さを知っているせいだ。

 俺の左眼を奪った元凶。

 今度は左眼だけでは済まない。

 

 下手をすれば、ここにいる全員が死ぬ。

 

 お腹に赤ちゃんがいるローエ・カティア・フランベールも。

 娘のグロリアとレミーベールも。

 

 姉さんや他のみんなも。

 

 くそ!

 俺とネオだけでやれるのか!?

 カーティスも居てくれれば……

 

 刹那。

 唐突に人型ドラゴンが霞んで消えた。

 

「──っ!」

 

 視界から消えた次の瞬間。

 銀に輝く爪が俺の顔を狙っていた。

 それを一ミリの感覚で避け、風圧で頬の肉が裂けて血が出た。

 

 間一髪で反応できた自身に驚きながらも、俺はほぼ身体の反射を頼りに敵の脇へロングブレードを薙ぎ払っていた。

 人型ドラゴンは地を蹴ってそれを避け、大きく後退する。

 

 やはりあの時より速い。

 だけど、本当にギリギリだが反応はできた。

 これなら戦える。

 

 だがさっき奴の爪が銀に光っていた。

 あれはなんだ?

 俺たちの【竜斬り】の光に似ている。

 

 まさか奴は爪に【気】を!?

 そんな冗談はやめてほしい。

 ドラゴンのくせに……人間の真似事ばっかりしやがって。

 

 反則的なドラゴンに対して思わず吐き捨てたくなったが、そんな暇を与えてくれる相手ではなかった。

 

 草原を超高速で走り回る人型ドラゴンは俺に対して腕を振るってきた。

 なんだ? っと思った次の瞬間には蒼い火球が二発飛来!

 

 蒼い炎!?

 

 瞬きの弾速で迫る火球をなんとか刃で防ぐが、着弾と同時に爆発して俺は慌てて後ろへ跳んだ。

 そのまま地面に着地──した瞬間に次の火球が飛来!

 

 俺は咄嗟に【ダークマター】を撃ってそれを相殺するが、敵は構わず蒼い火球を乱射した。

 

 防ぎ切れないと即時判断して俺は走った。

 全力疾走だった。

 少しでもスピードを落とせば当てられる。

 

 それほどのとんでもない精度で蒼い火球を乱射している。

 奴はただ乱射してない。

 一秒でも遅れれば当てられる。

 

 全力疾走で、息が一気に上がっていく。

 すぐに決めないとこっちが持たない。

 

「ゼクードさん!」

 

 ネオが俺を追い掛けていた。

 俺と人型ドラゴンのスピードに付いてくるとは、さすがだ。

 

「ネオ! このままじゃ俺たちは全員死ぬ!」

 

「!?」

 

 事態と事実だけを告げて、すぐ次の指示を出した。

 

「奴は俺に夢中だ! このまま俺が引き付ける! お前は隙を見て、あいつに一発お見舞いしてやれ!」

 

「……っ! 了解!」

 

 ネオの返事は苦し気だった。

 それもそのはず。

 ネオは俺と人型ドラゴンの超高速戦闘に追い付くだけでも精一杯という感じだった。

 

 だが追い付けるだけでも凄い。

 あとは俺が敵を少しでも鈍らせれば、ネオが攻撃を叩き込んでくれる。

 初戦の時には無かったアドバンテージだ。

 

 よし!

 ネオと一緒なら勝てる!

 やるぞ!

 

 まだ息は上がりきってない。

 全力全開の突撃をおこない、敵の弾幕を掻い潜り、死力を尽くして人型ドラゴンに斬りかかった!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

※

 

【歌のドラゴン】がフランベールによって落とされ、その後の確認のためにレイゼは高台から城壁まで急いだ。

 

 城壁を駆け上がったレイゼは、他の女騎士たちが唖然として外を見ていることに気づく。

 

 この時は正直、ゼクードが【歌のドラゴン】を仕留めて、その強さに圧倒されていたんだと思っていた。

 

 だが現実は違った。

 みんなが城壁から見ていたのは、壮絶な死闘。

 火花しか見えない人並み外れた超高速戦闘の光景だった。

 

 最初は何と何が戦っているのかすら分からなかった。

 

 何が起こっている?

 

 途中、ゼクードの姿が見えて、その敵であろう黒い影に斬りかかった。

 

 そのゼクードの斬撃を片手で受け止めた黒い影は──

 

「あっ!」

 

 まるで人のような形状で、黒い竜鱗に覆われたドラゴン。

 

 レイゼはそいつを見て心臓が激しい熱を発する感覚を得た。

 

『リヴ様を含めた味方の騎士たちは全滅したそうです。僅かに息があった騎士からの最後の証言では敵は『黒い人のようなドラゴン』だったとのことです』

 

【黒い人のようなドラゴン】

 

 あの時に聞いた特徴と、いまゼクードが戦っているドラゴンの特徴が一致している。

 

「まさか……あいつが!?」

 

 全身が灼熱し、毛が逆立った。

 腹の中で怒りの熱が爆発し、歯を食い縛った。

 

 ゼクードにそっくりだったリヴを……!

 

 リヴを殺した犯人はアイツか!

 

 自分の夫となるはずだった男を!

 

 ロジェールから父を奪ったのはあいつか! 

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