【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
夜になった今でも、ゼクードは未だに意識を取り戻していなかった。
ベッドで横になったまま動かないゼクードを、カティア・ローエ・フランベール・グロリア・レミーベールのフォルス家一同は見守っていた。
ゼクードが運ばれた個室は信じられないくらい重い沈黙に包まれていた。
医者の話しによれば、ゼクードの心臓はまだ動いているとのこと。
不思議と火傷は軽傷のようで、本来なら赤・黒・紫の血管のような火傷の痕が残るらしい。
だがゼクードの身体にそれはなかった。
しかし雷のダメージは未知数なものが多く、身体のどこまでに響いているかは分からないそうだ。
最悪……目を覚まさない可能性はあると医者は言った。
仮に目が覚めても、立てなかったり、手が動かなかったり、何かしらの後遺症は残るだろうとのこと。
それを聞いたフランベールは涙を流すしかなかった。
泣いてもどうにもならないことは分かっているが、こんなに悲しいことはない。
【フォルス家】が一気に崩れるような感覚を覚えて、とんでもなく怖くなった気もした。
目を覚まさないゼクードの手を握り、フランベールはそれを額に当てる。
お願いゼクードくん……死なないで……
こんな終り方イヤだよ……
お腹には赤ちゃんだっているのに……
もっとみんなで生きたいよ……
まだまだぜんぜん足りないよ……
もっと幸せになろうよ……ゼクードくん……
「……お母さん。もう遅いから、そろそろ休んだ方がいいわ」
レミーベールに背中を撫でられながら言われた。
「うん……」と答えるが動く気にもなれず、フランベールはただひたすらにゼクードの顔を見つめた。
そんな母にレミーベールは困ったようにグロリアを見るが、グロリアも動かないカティアとローエに同じく困っていて、肩をすくめ首を振って返してきた。
そんな娘二人が困っている事など露知らず、ローエは口を開いた。
「どうしてこんな事になりますの……ゼクード……」
「ローエ……気持ちは分かるが、覚悟はしていただろう? 騎士ならこんなことも有り得る……」
壁に寄りかかって腕を組むカティアが言った。
そんな彼女の言葉にローエは小さく息を吐く。
「それは……そうですけど……」
「……ぅ」
突如としてゼクードの手が動いた。
「っ! ゼクードくん!?」
フランベールが恐る恐るゼクードの顔を覗き込み、その瞳がゆっくりと開かれるのを見た。
目を……覚ました!
「あたし先生呼んでくる!」っとグロリアが慌てて個室を出ていく。
ゼクードがそのパープルの瞳を開き、フランベールだけでなくカティアとローエも身を乗り出してベッドを囲んだ。
「ゼクード!」
「大丈夫ですの!?」
そんな二人の問い掛けに答えず、ゼクードはフランベールたちを見回していた。
まだ意識が朦朧としているのかもしれない。
するとグロリアが先生を連れてきて、その先生はすぐにゼクードの腕に手を添えた。
「ゼクードくん。聞こえるかね? 聞こえていたら手を握ってくれ」
※
手を握ってくれと言われ、俺は仕方なくその人の手を握った。
こんなに美人がいるのに、なんで寄りによって男の手を握らなきゃならないんだ。
どうせならそこの美人さんたちの手を握りたい。
「自分の名前を言ってみてくれ」
俺の名前?
俺の名前は……なんだろ?
さっきゼクードって呼ばれてた気がするけど、心当たりがない。
あれ?
俺は……誰なんだ?
思い出せない。
何も。
「……えっと」
俺は言葉を詰まらせると、周りの女性たちの顔が一気に青ざめた。
「名前は? 思い出せないかね?」
「えっと……ゼクード?」
「…………本当かね?」
「え……」
違うのか?
さっきそう呼ばれてた気が。
「さっき、そう呼ばれてたんで……」
その一言に周りの女性たちが息を呑む気配を見せた。
男の方も顔を険しくしている。
なにかマズイことを言ってしまったらしい。
なんだこの息苦しい空気は。
疑問に思っていると、凄く可愛い金髪でツインテールの女性が口を開いてきた。
「ちょ、ちょっとお父さん! みんな本気で心配してたのに冗談やめてよ!」
ぉ、お父さん!?