【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第268話【お父さん!?】

 夜になった今でも、ゼクードは未だに意識を取り戻していなかった。

 

 ベッドで横になったまま動かないゼクードを、カティア・ローエ・フランベール・グロリア・レミーベールのフォルス家一同は見守っていた。

 

 ゼクードが運ばれた個室は信じられないくらい重い沈黙に包まれていた。

 

 医者の話しによれば、ゼクードの心臓はまだ動いているとのこと。

 不思議と火傷は軽傷のようで、本来なら赤・黒・紫の血管のような火傷の痕が残るらしい。

 

 だがゼクードの身体にそれはなかった。

 しかし雷のダメージは未知数なものが多く、身体のどこまでに響いているかは分からないそうだ。

 

 最悪……目を覚まさない可能性はあると医者は言った。

 仮に目が覚めても、立てなかったり、手が動かなかったり、何かしらの後遺症は残るだろうとのこと。

 

 それを聞いたフランベールは涙を流すしかなかった。

 泣いてもどうにもならないことは分かっているが、こんなに悲しいことはない。

 

【フォルス家】が一気に崩れるような感覚を覚えて、とんでもなく怖くなった気もした。

 

 目を覚まさないゼクードの手を握り、フランベールはそれを額に当てる。

 

 お願いゼクードくん……死なないで……

 こんな終り方イヤだよ……

 お腹には赤ちゃんだっているのに……

 

 もっとみんなで生きたいよ……

 まだまだぜんぜん足りないよ……

 もっと幸せになろうよ……ゼクードくん……

 

「……お母さん。もう遅いから、そろそろ休んだ方がいいわ」

 

 レミーベールに背中を撫でられながら言われた。

「うん……」と答えるが動く気にもなれず、フランベールはただひたすらにゼクードの顔を見つめた。

 

 そんな母にレミーベールは困ったようにグロリアを見るが、グロリアも動かないカティアとローエに同じく困っていて、肩をすくめ首を振って返してきた。

 

 そんな娘二人が困っている事など露知らず、ローエは口を開いた。

 

「どうしてこんな事になりますの……ゼクード……」

 

「ローエ……気持ちは分かるが、覚悟はしていただろう? 騎士ならこんなことも有り得る……」

 

 壁に寄りかかって腕を組むカティアが言った。

 そんな彼女の言葉にローエは小さく息を吐く。

 

「それは……そうですけど……」

 

「……ぅ」

 

 突如としてゼクードの手が動いた。

 

「っ! ゼクードくん!?」

 

 フランベールが恐る恐るゼクードの顔を覗き込み、その瞳がゆっくりと開かれるのを見た。

 

 目を……覚ました!

 

「あたし先生呼んでくる!」っとグロリアが慌てて個室を出ていく。

 

 ゼクードがそのパープルの瞳を開き、フランベールだけでなくカティアとローエも身を乗り出してベッドを囲んだ。

 

「ゼクード!」

「大丈夫ですの!?」

 

 そんな二人の問い掛けに答えず、ゼクードはフランベールたちを見回していた。

 まだ意識が朦朧としているのかもしれない。

 

 するとグロリアが先生を連れてきて、その先生はすぐにゼクードの腕に手を添えた。

 

「ゼクードくん。聞こえるかね? 聞こえていたら手を握ってくれ」

 

 

 手を握ってくれと言われ、俺は仕方なくその人の手を握った。

 こんなに美人がいるのに、なんで寄りによって男の手を握らなきゃならないんだ。

 

 どうせならそこの美人さんたちの手を握りたい。

 

「自分の名前を言ってみてくれ」

 

 俺の名前?

 俺の名前は……なんだろ?

 さっきゼクードって呼ばれてた気がするけど、心当たりがない。

 

 あれ?

 俺は……誰なんだ?

 思い出せない。

 何も。

 

「……えっと」

 

 俺は言葉を詰まらせると、周りの女性たちの顔が一気に青ざめた。

 

「名前は? 思い出せないかね?」

 

「えっと……ゼクード?」

 

「…………本当かね?」

 

「え……」

 

 違うのか?

 さっきそう呼ばれてた気が。

 

「さっき、そう呼ばれてたんで……」

 

 その一言に周りの女性たちが息を呑む気配を見せた。

 男の方も顔を険しくしている。

 なにかマズイことを言ってしまったらしい。

 なんだこの息苦しい空気は。

 

 疑問に思っていると、凄く可愛い金髪でツインテールの女性が口を開いてきた。

 

「ちょ、ちょっとお父さん! みんな本気で心配してたのに冗談やめてよ!」

 

 ぉ、お父さん!?

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